【ツアー報告】11月下旬の大洗~苫小牧航路 2016年11月22日~24日
(写真:コアホウドリ 撮影:小川亮太様)
すっかり定番となっている定期航路を使った海鳥観察ツアーですが2016年はいよいよこのツアーが最後となりました。11月の北航路は晩秋とも冬とも言えない微妙な時期のため、海鳥観察ツアーとしてはさまざまな種類が観察できることが特徴で、春にはほとんど見られないトウゾクカモメが特に多く、長い尾羽がある個体や冬羽個体、さらには暗色型などさまざまな個体が見られ、ほかにもコアホウドリ、ミツユビカモメ、フルマカモメが多く、アホウドリの観察例が多いことも特長です。ただ、今回はたまたま強い寒気が押し寄せる中での出発となり、24日には関東地方でも積雪の予報が出るほどでした。
22日、大洗フェリーターミナルに22:30にご集合いただき、翌日の案内やトラベルイヤホンの使用方法などを説明して早速乗船となりました。
23日、深夜に船が揺れて途中目が覚めることがありましたが、予定通り08:00から観察を開始しました。天候は曇りでしたが、薄日が射すこともありました。冷たい風が吹く中をウミネコが飛び、デッキ上は海水が舞い上がっていました。08:30にはウトウの姿があり、いきなりアホウドリ亜成鳥、クロアシアホウドリ、フルマカモメが登場しました。その後、09:00には海はかなり落ち着き、09:15頃からはミツユビカモメの姿が目立ってきました。09:30にはトウゾクカモメ、09:40にはクロガモの群れ、09:50には漁船にまとわりつく4羽のクロアシアホウドリの姿がありました。そして10:00にはこの航路では珍しいユリカモメが30羽ほどの群れで飛翔しました。10:30には再びトウゾクカモメ、10:10には10羽ほどのクロガモの姿がありました。そして11:45には15羽ほどのヒメウが飛び、この頃から再び海が荒れ始めました。するとタイミングを計ったようにシロエリオハムが船を追い越すように飛翔し、コアホウドリ、クロアシアホウドリも現れました。12:15には強風の中、ミツユビカモメが乱舞し、その中にワシカモメの姿がありました。そして12:40には2羽のヒシクイが出現し、しばらくの間、船に沿って飛翔しました。さらに12:50にはオナガガモの群れも飛翔し、晩秋の鳥たちの渡り風景を海上から観察する機会に恵まれました。そして13:30にはウミスズメが飛翔し、冬の海鳥もすでにやってきていることもわかりました。そして14:00には再びヒシクイが現れ11羽での編隊飛行を見せてくれました。14:30からはいよいよ海上は雪になり視界が一時悪くなりましたが、海鳥たちは負けることなく海上を飛び、この辺りからトウゾクカモメの数が一気に増え、尾羽の長い個体や尾羽のない冬羽個体などさまざまな個体を見ることができました。またフルマカモメの数も増していました。この頃には寒さは厳冬期を思わせる厳しさでしたが16:30まで観察して終了しました。
24日、復路は早朝の海域が重要なため日の出に合わせて06:00から観察を開始しましたが、曇り空から小雪が降っていたためまだまだ薄暗い状況でした。ただ、海は穏やかになり海水をかぶることはありませんでした。薄暗い中ではありましたが、すでにフルマカモメ、ミツユビカモメが飛び交い、数羽のハシボソミズナギドリの姿も見られました。06:30にはウミウが飛び、07:10にはやや空が明るくなる中、船で休んでいたと思われる小鳥が飛んで行きました。08:05にはスズガモが飛び、着水していた10羽ほどのシロエリオオハムの群れが飛んでいきました。08:50にはハシボソミズナギドリ、ウトウの姿があり、09:00には再び2羽のスズガモのメスが船を追い越すように飛んでいきました。10:00以降は海がさらに穏やかになり、海面の色が灰色になってきたため浮いているウトウの姿がかなり目につくようになりました。時には複数の個体が浮いていて、船の接近に驚いて潜水していました。また数羽のフルマカモメが海面に浮いていて飛び立って行く様子も見られました。12:00にはこの時期には珍しくカマイルカの群れが通過し、12:30には間近に浮上するキタオットセイも見られました。12:40にはマガモが飛び、12:45には編隊を組んで飛翔するガン類と思われる鳥の飛翔が見られました。かなり距離はありましたが美しい編隊飛翔を海上から眺めるというのはかなり貴重な出来事で、鳥たちの渡りを再び実感するシーンでした。その後はウトウ、飛び交うミツユビカモメ、時より出現するトウゾクカモメを見ながら進み、13:40にようやくオオミズナギドリの姿が見られました。14:00にはマガモの姿があり、14:30には船上で休憩していたツグミが飛び立ち、一度船体から離れたものの再び戻って周囲を飛んでいました。その後は右舷側は逆光になることから左舷側に移動して観察を続けました。この辺りからは一気にオオミズナギドリの個体数が増え、所々で数百羽の群れが着水して採食していました。その中には数羽の群れで飛翔するクロガモやトウゾクカモメの姿もありました。すると1羽の小鳥が海上を飛んでいる姿が見え、よく見るとヒバリで驚かされました。その後はオオミズナギドリの姿を見ながら進み、16:00にいわき沖にある海上風車を見て観察を終了しました。
今回は11月とは思えない厳しい寒さになり、大変ご苦労さまでした。小雪が舞う時間帯も多く海風は刺さるような冷たさで、この航路で最も寒さが厳しい3月を思わせました。海鳥はこの時期最も多くみられるトウゾクカモメ、ミツユビカモメ、フルマカモメは期待通りでしたが、アホウドリ類との出会いが少なく残念でした。ただ、鳥たちの渡りを実感できるシーンが多く、特にしばらく船に並ぶように飛翔してくれたヒシクイの姿は印象的でした。さて、すっかり定番となった定期航路での海鳥観察ツアーですが、2016年は今回で終了となります。ご参加いただきました皆様、ありがとうございました。来季もさまざまな海域で海の生き物を観察しにお出かけください。この度はお疲れ様でした。
石田光史