【ツアー報告】越冬シギチドリ巡り 東京湾と霞ヶ浦 2016年11月3日
(写真:エリマキシギ 撮影:宅間保隆様)
秋のシギ・チドリ類の渡りはほぼ終了する季節ですが、この時期あたりからはそのまま日本で越冬するシギ・チドリ類や冬鳥として渡来するチドリ類も見られるため、まだまだ楽しみは尽きません。秋季は潮干狩りの影響がないことから午前中は海水域、午後からは淡水域を巡り、それぞれに生息するシギ・チドリ類を探します。前日の天気予報では朝まで雨が残り、その後は晴れるが風が冷たく肌寒くなるだろうとのことでしたが、当日は早朝から雨はなく、ほぼ終日晴れて穏やかな1日でした。
3日、予定通り08:00に東京駅前を出発してまずは海水域に生息するシギ・チドリ類を観察するため船橋海浜公園に向かいました。到着後はカモ類を観察するために東側にある堤防に向かいました。まだまだ潮位が高いことからカモ類観察にはちょうど良い予想だったのですが、カモ類が浮いている場所が遠くて苦労しました。全体にほぼスズガモでしたが、その中にすっかりおなじみになっているビロードキンクロのオスの姿がありました。また間近にハジロカイツブリが浮上し、カンムリカイツブリの姿もありました。干潟がまだ出ていなかったせいかシギ・チドリ類はほぼ堤防上に集まっていて、当地のシンボルにもなりつつあるミヤコドリは数百羽がギッシリと群れていました。ほかにも堤防上にはハマシギ、ミユビシギ、シロチドリが休憩していました。また杭の上にはダイゼンの姿がありました。しばらく観察していると潮位が下がり、干潟が出てきたためシギ類が集まり始めました。行ってみるとみるみるうちにハマシギが集まり、その中に大型のオオソリハシシギの姿もありました。この日は特に珍しい種は見つからなかったですが、ハマシギ、ミユビシギ、ダイゼン、シロチドリ、オオソリハシシギといった基本種をまずはじっくりと観察することができました。観察後は靴や三脚の足についた泥を落としてからバスに乗車し、淡水域での観察ポイントに向かいました。向かっている途中でお昼近くになったことからSAで各自昼食をとっていただき、その後、ポイントに向かいました。まずは畑地の中にある道をゆっくり流してタゲリを探しましたが、今期はもうすでにかなりの数が渡来しているようで、地上に降りている100羽近い群れを観察しました。順光だったことから光沢ある緑色の体が美しく、特徴的な長い冠羽も見ることができました。その後は直前の下見で最もシギ・チドリ類がいた場所に向かいました。ここではアオアシシギ、オグロシギ、タカブシギ、コチドリ、トウネン、オジロトウネン、ヒバリシギと今回の目玉となる種が勢ぞろい状態で楽しませてくれました。またその中にトウネンよりもさらに小ぶりな小型シギ類が2羽いました。幸いトウネンと並んで採食していたため、その姿勢の違いや足の長さ、全体的に華奢な印象からヨーロッパトウネンと思われました。一通り観察した後はポイントを変えましたが、こちらはたまたま農家の方が作業中だったことから遠めにクサシギだけ観察して戻ることにしました。シギ・チドリ類の観察では農家の方への配慮を重視し、挨拶をすることは当たり前で作業の邪魔になる行為はしないことになっていますのでお客様も納得いただけました。移動後はやや水の残る水田で4羽のツルシギ、1羽のオオハシシギを見ることができ、最後は最初に観察したポイントに戻って観察しました。顔ぶれはほぼ変わっていませんでしたが、新たに3羽のエリマキシギがやってきてくれ、美しい羽の縁取りを観察することができました。また難解な小型シギ類も足の色や姿勢の違い、羽軸の太さや濃さの違いなど観察することができました。ただ、それでなくとも難解なシギ類が一気に現れたためやや混乱したかもしれません。気がつくと間もなく日没という時間まで観察してしまいましたが、最後はせっかくなのでアシ原に移動して薄暗くなるまでチュウヒの塒入りを観察しました。この日は風が弱く穏やかだったため、ほとんどの個体が木に止まって休んでいて、ようやく最後に数羽が乱舞してくれました。振り返れば雨もなく寒さもない穏やかな1日でシギ・チドリ類21種を観察することができました。
秋のシギ・チドリ類は成鳥はほぼ冬羽のためどれも地味で識別が難しいのですが、今回はさらにそもそも難解な種が加わり思いのほか時間をかけての観察となりました。シギ類はポイントを押さえた上で繰り返し観察することがカギですからまたの機会にシギ類観察にぜひお出かけください。次回は4月下旬に美しい夏羽のシギ・チドリ類を探します。またぜひご参加ください。この度はお疲れ様でした。
石田光史