【ツアー報告】秋空を渡るタカを眺める 伊良湖岬 2016年9月28日~29日
(写真:チゴハヤブサ 撮影:見崎智子様)
まだまだ続く秋のタカ渡りツアーは白樺峠と並んでこちらもかなり有名な伊良湖岬を訪れます。こちらは白樺峠とは違って渥美半島の先端部の高台にあるホテルの屋上から観察するという一風変わったスタイルです。そのため探鳥ポイントまではエレベーターで行くことができ、あるくことが苦手な方にはおすすめです。伊良湖岬の特徴はさまざまな種類のタカが見られることでしょう。特に小型のタカ類の出現率が高く、これは白樺峠とは異なります。また高台にあるホテルの屋上から観察するということで、眼下を飛翔するタカが見られたり、タカが足元から湧き上がってくるシーンが見られたりと距離が比較的近くで観察できることも特長です。こちらも同様に天候が重要なわけですが、今回も残念ながら事前の天気予報が芳しくありませんでした。
28日、東京駅を出発する頃は薄日が射し、やや天気予報とは違った印象でした。目的地の豊橋駅には10:00に到着し、ここからはバスに乗り換えて観察ポイントであるホテルに向かいました。ホテルまでの約1時間は各地のタカの渡りポイントの違いについて解説し、その後は時間いっぱいこの時期に見られるタカ類の識別ポイントについて解説しました。ホテルが近づいてきた頃もうっすらと青空が広がり日差しもありました。観察機材の準備を終えた後は早速屋上に上がって観察を開始しました。するといきなり小型のタカが2羽上空を通過していきました。まだまだ体制が整う前だったこともあり、しっかりと見ることはできませんでしたがチゴハヤブサでした。この鳥は伊良湖岬の代表種ともいえる種で早速の登場にいきなり盛り上がりました。その後、13:00にはノスリが旋回し、13:30にはハチクマとオオタカが同時に出現して争うように絡まりながら飛翔しました。また13:40には2羽のサシバが上昇気流に乗って舞い上がるシーンを見ることができました。ただ14:00からは小雨が降り出し、いつのまにか深い霧と雷雨がやってきて15:00までの1時間は待機状態となりました。ただここは屋根があるスペースがあるため問題はありませんでした。雨が上がるとチョウゲンボウが眼下から舞い上がり、イワツバメ、ツバメ、そしてアマツバメが飛び、眼下の林を見ると1羽のエゾビタキの姿がありました。結局中断はあったものの十分に観察することができ17:00に終了しました。今回は天気予報がコロコロと変わり、深夜に見た予報では翌日は曇りとなっていたためやや安心しました。
29日、早朝に改めて天気予報を見るとなんと雨一色。困ったなと思いながら06:00に屋上に上がると小雨が降ってはいたものの青空も見えているという予想が難しい空模様でした。ただ雨はすぐに上がって晴れ間が増えてきました。早朝はタカの出現はありませんでしたが、メジロの群れやハクセキレイ、キセキレイ、アマツバメ、カワラヒワ、ヤマガラなどの小鳥類が次々に渡って行きました。またカワラヒワの群れが止まっている木を見るとその中にキビタキが混じっていました。09:00には2羽のサシバが舞い、09:40には当地では珍しいハチクマ成鳥とサシバが同時に出現、10:00にはようやくサシバの群れが稜線から上がり、10羽ほどのサシバが次々に流れていきました。またハチクマ幼鳥がようやくいい角度で頭上を通過し、チョウゲンボウも眼下から浮かび上がり旋回しました。10:40にはようやくサシバが間近に頭上を通過し、10:50には2羽のハチクマ幼鳥が眼下からふわっと湧き上がり我々の頭上で旋回してくれるという、この日のハイライト的なシーンがやってきました。そして11:00には昨日に続き、チゴハヤブサが眼下から舞い上がりました。あっという間にスピードを上げて頭上を通過していき再び大きく盛り上がりました。その後は11:10にミサゴ、11:45にはハチクマ3羽が舞い、11:50には再びミサゴ、12:10には20羽ほどのハリオアマツバメが通過していきました。12:30からは少々時間をとって近くにある漁港に出かけました。ここでは秋の僅かな時期にオオアジサシが観察されているため見に行ったのですが、見事に5羽のオオアジサシの姿を見ることができ、独特の後頭にある冠羽を見ることができました。
天気予報にかなり不安のあった2日間でしたが晴天を信じてご参加いただいた皆様ありがとうございました。おかげさまで当地の代表種であるチゴハヤブサをはじめ、サシバ、ハチクマ、ミサゴ、オオタカ、ノスリなど、数こそ多くはなかったものの一通りのタカ類を見ることができました。秋のタカ渡りは1年の中でほんのわずかな時期しか観察できません。また来季もぜひタカの渡りを観察にお出かけください。この度は大変お疲れ様でした。
石田光史