【ツアー報告】西表島の大自然を満喫!サガリバナとウミショウブを楽しみつくす5日間

7月はじめに花の観察会で5日間のツアーに行ってきました。講師は西表島の自然と人をこよなく愛する横塚眞己人さんです。
西表島は、沖縄より台湾のほうが距離が近く、台湾と共通する植物や生き物が多く、自然が好きな方にはこの上なく魅力的な島です。

◆サガリバナ、花は夜開く~♪

今回のツアーのメインの花のひとつがサガリバナです。
サガリバナは一般の方にはあまりなじみのない花でしょう。
それもそのはず、タイやマレーシアなどの東南アジアやマダガスカルや南アフリカなど亜熱帯から熱帯地方に自生するサガリバナ科の花木で、日本では奄美大島以南にしか自生していません。
西表島はサガリバナが多く残る自生地なのです。

日中はサガリバナの木がある場所に行っても「どれがサガリバナの木?」というくらい亜熱帯林の濃い緑の景色に溶け込んでいて、あまり魅力的とはいえない風貌です。
ところが、日が暮れて、夜が深まるにつれ、絹の糸が無数に伸びたような花を房にして咲かせるというのです。

サガリバナの木は、日中探しても周囲の景色に溶け込んでしまい、あまり目立たない。

サガリバナの木は、日中探しても周囲の景色に溶け込んでしまい、あまり目立たない。ちなみに中央の木です。

そんなサガリバナの花を見ようと、ツアー2日目には宿を夕方出発し、観察地へ向かいました。
この日の夕食はお弁当ですませますが、この花見たさにツアーに参加いただいた方もたくさんいるので、食事中もなんとなく、ドキドキわくわくした空気に包まれます。

日本のほぼ西端に位置する西表島の日没は遅く、午後8時。あらかじめ横塚先生からサガリバナの説明を聞き、今晩花が咲きそうな蕾の場所も教えてもらいながら日没を待ちます。

午後8時、いよいよあたりが暗くなってきました。
周囲には家の灯りもなく、もはや肉眼では周囲は見えません。
持参した懐中電灯を灯します。
すると、やわらかな糸のような花が、ふわりと開き始めていくではありませんか。
花は白、淡いピンク、濃いピンク、があり、それぞれ表情が異なります。
その不思議な姿にため息。

日が落ちると徐々に蕾が開き始める

日が落ちると徐々にサガリバナの蕾が開き始める

絹の糸でできたような繊細な花には甘い香がある

絹の糸でできたような繊細な花には、甘い香りがする。

サガリバナの花房がたくさんさがると夜祭のようなにぎやかさになる

サガリバナの花房がたくさんさがると夜祭のようににぎやか。

午後8時30分になるとますます開いた花が増え、驚くほど立派な花房が木からたくさんぶら下がっています。
「すご~い」
「うわー」
暗闇のあちこちで上がる歓声。

ひとつの花房をじっくり観察したり、1本の木に藤棚のように花房がたくさんぶら下がる様子を撮影したり、花に顔を寄せ甘い香りを楽しんだり、思い思いに過ごしました。

気づけば夜9時。帰る時間です。
サガリバナを夢中で見ていた皆さまも帰り支度をはじめ、ふと空を見上げると満天の星空。
「空にはこんなにたくさんの星があったなんて!」
そんな声も聞こえてきました。
深夜にはもっとにぎやかになるであろう生き物たちの夜の世界をあとにして、宿に戻りました。

◆朝焼けの空の下、ボートに乗って川面に流れる花を楽しむ

ツアー4日目、日の出前の暗いうちに宿を出て、港に向かいました。
2艘のボートで、いざ、サガリバナの咲く川の上流をめざします。
夜咲いて、朝には落ちるというサガリバナの花。
その花が川面を流れる様子を船上から楽しもうというのがこの日のプランなのです。

ボートに乗ってしばらくすると暗い空が、しだいに赤みを帯びてきます。
にじむような朝焼けに全員心をうばわれ、しばし静かなときが流れます。

朝焼けのなかボートに乗って上流をめざす

朝焼けのなかボートに乗って川の上流をめざす

やがて川の進行方向から、白いふわりとしたものがこちらに向かって流れてきます。
「あっ、サガリバナの花」
だれかがつぶやきます。
川に浮かぶ花の数はどんどん増えてきます。
船長のYさんが、花がまだついたサガリバナの木に船を近づけてくれました。
ぴちゃっ。ぱちゃっ。
ぴちゃっ。ぱちゃっ。

サガリバナの花の1輪、1輪が大きな花房から離れ、見ているそばから川へ落ち、すーっと、行く先を知っているかのように流れてゆきます。
水面に落ちるとき、思いのほか大きな音が。
「また落ちた」
「あそこにも!」
日が昇り、気温が上がったせいか、気づけば花の甘い香りが川を包んでいました。

川面の浮かぶサガリバナの花

川面の浮かぶサガリバナの花

川の上流から朝散ったサガリバナの花がゆっくりと流れてくる

川の上流から朝散ったサガリバナの花がゆっくりと流れてきました

ボートを花に近くに寄せて香りを楽しむ

ボートを花の近くに寄せてサガリバナの花をじっくり観察。ピンク色の花もすてきです。

ヒュルルルルル・・・ヒュルルルル・・・
森にリュウキュウアカショウビンの声が響きます。

サガリバナの自生地を存分に味わい、飽きるほど撮影したら、朝食です。
宿のおかみさんが早起きしてにぎってくれたおにぎり弁当をほおばります。
「いつもはひとつしか食べないのに、今日は2つ食べれちゃったわよ」
「あら、わたしもよ!」
サガリバナを眺めながらの船上で食べるおにぎりの味は最高でした。

◆興奮! ウミショウブの花は小さなスノーマンか!?

西表島ツアーのもうひとつの目的がウミショウブの花の観察です。
ウミショウブについては、今回ご参加のみなさまもテレビで見たことはあっても、実物を見たことがない、という方がほとんどでした。

ウミショウブは海の中で生きていますが、海藻ではありません。
雄花をつける雄株と雌花をつける雌株があり、受粉が成功するとタネをつける種子植物です。
これだけでもユニークですが、ある自然条件が整ったときのみ、花を咲かせ白い雄花が水面を染め上げます。

ツアー4日目にその様子にようやく出会うことができました。
なにもなかった穏やかな海にぷつぷつした白いお米のようなものが現れます。

小さなスノーマンにもクリオネにも見える、2ミリほどのウミショウブの雄花

小さなスノーマンにも、はたまたクリオネにも見えるウミショウブの雄花。1つの大きさは2ミリほど!

伸びきったゴムのようにも見える雌の花。波打った部分で白い雄花をキャッチ。

伸びきったゴムのようにも見える雌の花。波打った部分で白い雄花をキャッチ。

海を白く染めるウミショウブの雄花

海原に放たれる白いウミショウブの雄花たち

ウミショウブの雄花のひとつ、ひとつは雪だるまのような形をしています。
風が吹くと海面をすべるように、ちょこちょこと動く姿がまるでクリオネのよう。
「かわいいね~」
「不思議だね~」
時間とともの海面を埋める白い妖精を、暑い日ざしも忘れて夢中で追いかけました。
水の中で生きる植物がどうやって受粉できるのか?
その疑問の答えは、ここでは披露せずぜひ、このツアーで体感していただきたいなぁと思いました。

ほかにも、海のサンゴを見たり、ヘゴやオオタニワタリなど山地性の植物を観察したほか、西表島の海のように明るく温かい人々ともふれあい、なんとも豊かな気持ちで過ごした5日間でした。

ご参加いただいた皆様、その後日焼けの具合はいかがですか? 目を閉じると青い海と緑の森、冷えたパインジュース(オリオンビールの方もいましたね)が思い出されます。たいへんお疲れ様でした。

ツアーリーダー:加藤淳子(かとう・じゅんこ)

 

 

 

 

 

 

 

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