【ツアー報告】絶景立山!ライチョウの親子に会いたい! 2016年7月18日~20日
(写真:ライチョウの親子 撮影:須崎明男様)
ライチョウが見られるツアーは他にもありますが、秋に行く乗鞍岳は密度が濃くないせいか観察は容易ではなく、可愛らしいヒナを見ることはさらに容易ではありません。そんな中、今回訪れる立山室堂はライチョウの密度が濃く、他の探鳥地に比べると観察の確率が高く、この時期は天候上の問題さえなければ可愛らしいヒナの姿を見ることができます。ただ高山帯のため天候には気を遣うことが多く、過去、3日間の行程ながら濃霧や雨、雷雨などによりたった1日しか観察が叶わなかったこともありました。ただ今回は前日までの雨が止み、たまたま東海地方の梅雨明けのタイミングに合わせて現地に向かうことになりました。しかし反面、天候が悪い日のほうが見やすいライチョウ観察にこの好天がどう影響するのかやや心配ではありました。
18日、北陸新幹線で富山駅までは僅か2時間ほど。到着した富山駅は快晴で日差しが眩しく、暑さすら感じるようでした。路面電車が走る駅前を出発して富山城の横を通り、途中休憩を挟んだ後、いよいよ立山に向いましたが立山方向には黒い雲がかかっていました。走り出すと快晴の空は曇り空に変わり、途中小雨が落ちてきました。美女平からは濃霧で視界が悪くなり称名滝を見ることもできない状況で不安になりましたが、弥陀ヶ原を過ぎ、目的地の室堂が近づいてくると一気に霧が晴れて視界がよくなってきました。室堂到着後は観察機材の準備をして歩き出しましたが、いきなりイワツバメの群れに出くわし観察することにしました。イワツバメは建物の縁に営巣中でせわしなく飛び回り、中には我々をかすめるように飛翔する個体もいました。この日は快晴に当たったこともあり見事な風景の中を歩くことができ、早速ヒナを連れたイワヒバリの姿を間近に観察することができました。ヒナは親鳥から未だ餌をもらっているらしく「ジージー」と鳴きながら親鳥を追いかけていました。その後はみくりが池を左回りしてみくりが池温泉で休憩をとった後、雷鳥沢を歩きました。突き抜けるような快晴が災いしたか、たくさん歩いていただいたにも関わらず残念ながらライチョウの姿はありませんでした。ただ休憩中に間近でカヤクグリがさえずってくれたのが幸いでした。しかし帰り際には草地に隠れるように潜んでいるライチョウのメスを発見して観察することができました。
19日、早朝06:00にホテル前にご集合いただき弥陀ヶ原周辺で探鳥しました。この日は濃霧は全くなく富山湾がはっきりと見えるような快晴でした。たださすがに肌寒く気温12℃。フリースジャケットの上から雨具を羽織ってちょうどよいくらいの気温でした。周辺では複数のウグイスが鳴き、高原の個体らしく針葉樹のてっぺんで歌っていることから観察が容易でした。ほかにもウソのつがいの姿があり、最後は針葉樹の上で歌うクロジの姿をじっくりと観察することができました。その後は一旦朝食とし再出発後は再び室堂に向いました。この日はみくりが池を右回りに歩きながらチングルマやイワカガミを観察し、みくりが池温泉まで来たところでようやくライチョウのメスを間近に観察することができました。さらに周囲を見てみると待望のヒナ連れのライチョウに出会うことができました。親鳥を追いかけるように懸命に歩く4羽のヒナの姿は可愛らしく、斜面を登ったり降りたりして最後は石段付近をうろうろしていました。また観察していると2羽のホシガラスが現われて最後は我々の足元まで飛んできてじっくりとその姿を見せてくれました。昼食後のスケジュールは決めていませんでしたが、みなさんの意見が弥陀ヶ原での観察で統一されたためバスにて弥陀ヶ原まで戻り、現地ガイドさんの案内で弥陀ヶ原周辺を歩くことにしました。まずは木道を1時間ほど歩き、ワレモコウ、タテヤマリンドウ、ノビネチドリ、ニッコウキスゲなどの花々を楽しみ、その後はカルデラ展望台方面を1時間ほど歩き、ヒガラ、メボソムシクイ、アマツバメ、足元に咲く、キヌガサソウ、ゴゼンタチバナ、マイヅルソウなども観察しました。
20日、この日も早朝06:00にホテル前にご集合いただき弥陀ヶ原周辺で探鳥しました。通常、早朝の弥陀ヶ原は濃霧で視界が悪いことが多く、過去まともに早朝探鳥ができた記憶がなかったのですが、今回は2日間ともに早朝から快晴で、特にこの日は見事な雲海を眼下に眺めることができました。相変わらずウグイスは絶好調でこの日も複数の個体が見晴らしの良い針葉樹のてっぺんで気持ちよく歌っていました。またやや歩いたあたりからはルリビタキのさえずりが聞こえたため探してみると、やや距離はありましたが針葉樹の上で歌う姿を見ることができました。高山帯は鳥の種類は少ないものの、さえずりが多く早朝は清々しい気候も味わえ、普段のツアーでは味わうことができない貴重な時間を楽しむことができました。その後は朝食をとり、この日は再び室堂に向いました。毎日快晴という信じられない状況の連続でしたが、よく考えてみるとこの最終日が最も空が澄み切っていて、一番天候が良いような気がしました。歩き始めると早速イワツバメの乱舞が見られ、建物の上ではルリビタキのさえずりをややまろやかにしたようなイワヒバリのさえずりが聞こえていました。探してみると建物の上でさえずっている個体のほか、地上を歩き回る成鳥個体が見られ、さらによく見るとその成鳥の周囲には2個体のヒナがいました。ヒナは親鳥を追い回すように動き回り可愛らしい姿を見せてくれ、成鳥は間近にある岩の上で見事なさえずりを披露してくれました。そのためこの時間はちょっとした撮影会状態でした。その後はみくりが池を左回りで歩いてみくりが池温泉周辺でライチョウの出現を待つことにしました。待っている間にはカヤクグリ、メボソムクシクイのさえずりが聞かれ、息を飲むような絶景を堪能しながらのんびりと過ごしました。1時間ほど待っていると足元のハイマツからライチョウのメスがひょっこり現われ、それを追うようにオスも姿を現し2羽で仲良く砂浴びをはじめました。砂浴びは意外なほど長時間に及び、時より1羽がハイマツに隠れたりするもののすぐに現われ、結局1時間ほど砂浴びの様子を観察させてくれました。またホシガラスはこの日もサービスが良く、我々の足元まで飛んできてその姿をじっくりと見せてくれました。高山帯のため観察種は極めて少ないながらも目的であったライチョウの親子の姿も見ることができ、美しい花々も40種近く観察することができました。毎回、天候悪化や深い濃霧に悩まされ3日間のうち1日は待機状態になることが多いツアーですが、今回は幸運にも3日間とも突き抜けるような青空の元で探鳥ができました。皆様お疲れ様でした。
石田光史