【ツアー報告】銚子沖で海鳥観察 名古屋~仙台航路 2015年4月7日(火)~8日(水)
さまざまな定期航路で海鳥観察ツアーを企画していますが、海鳥観察ポイントとして知られる千葉県銚子沖を日中に通過する航路は今回乗船する太平洋フェリーのみです。今回乗船する「いしかり」は国内定期航路就航船の中では最大級で約15,762トン、全長199.9メートルに及び、しかも最先端のフィンスタビライザーが装備されているため揺れに強いのが特徴です。観察は屋根付きの後部デッキを使用するため雨風をほぼシャットアウトでき、観察が短時間なのにも関わらず、両サイドを観察することができるため海鳥たちを多く見ることができます。そのため長時間の観察に抵抗のある方でも集中して観察しやすいため初の海鳥観察という方には良い航路であると思います。
7日、ほぼ予定通り18:00に名古屋港フェリーターミナルに全員ご集合いただき、まずは船内の案内を行ってから18:30に乗船しました。乗船後は再度案内所前にご集合いただき、航路の説明、観察デッキの案内などをして解散しました。出航後はしばらく夜景を楽しむことができ、夕食はそれぞれに船旅を楽しみつつ、レストランでとっていらっしゃるようでした。
8日、日の出は05:20のため05:30にデッキに出ましたが早朝は低気圧を横切るような状況だったため3m近いうねりがあり、強風のため海水が巻き上がっていました。ただ、観察は後部デッキ中央からのため海水を浴びることはなく、早速うねりに必死に逆らいながら飛翔するオオミズナギドリの姿が見られていました。06:40に強風に飛ばされるようにアホウドリ亜成鳥が飛び、同時にトウゾクカモメが船体脇にふわりと現れました。07:40にはなぜかコサギが3羽流されるように飛んで行きました。その後は無数のオオミズナギドリを見ながら進みましたが、08:20に銚子沖を通過したあたりからミツユビカモメの姿が多くなり、徐々にオオミズナギドリに混じってハシボソミズナギドリの姿が目立つようになってきました。またそれと同時に意外にもウトウの姿が多く、着水している個体が続々と飛翔します。気が付くと次第に首の長いシロエリオオハムの姿も多くなり、中には背中が白黒の夏羽に換羽し始めている個体もいました。特にハシボソミズナギドリの群れは時には数百羽単位になるなど、見事な乱舞を見せてくれました。またクロアシアホウドリは09:00以降、ほぼコンスタントに姿を見ることができ、船体脇を飛んで行く個体もいたため間近に見ることができました。コアホウドリは少なめでしたが数個体を見ることができ、やはり船体脇を通過していく個体も見られました。トウゾクカモメの姿もよく見ることができ、09:20には淡色型と暗色型が同時に見られ、11:05には2個体が共同でミツユビカモメを襲う様子を観察することができました。11:10には3羽のハシブトウミガラスが船体横にはりつくように飛翔し、しばらくの間その姿を楽しむことができました。結局海鳥が多い時間は12:00頃まで続きましたが、この頃には海上はすっかり穏やかになり、一時的に海鳥たちの姿は少なくなっていました。午後からは薄日が差すような状況になり、再びウトウの姿が多く見られ、数羽の小群で飛翔するウミスズメの姿も目立ち、クロガモ、ウミアイサといったカモ類も見られました。そしてこちらも北上中のハイイロヒレアシシギ、アカエリヒレアシシギの群れが時には高く舞い上がり、時には海面スレスレを飛翔していましたが、ハイイロヒレアシシギはすっかり腹部が赤い夏羽になっていました。「いしかり」は予定通りに運行され、16:35に仙台港にて下船開始となりツアーを終了しました。
ツアー当日は関東でも小雪が舞うという異常な寒さのため仙台の気温も0℃となり、思いもよらない厳しい寒さの中での探鳥で感覚的には真冬でした。銚子沖から茨城沖は予想通りに海鳥の宝庫で、さまざまな種を観察することができました。特にハシボソミズナギドリの数の多さには驚かされました。オーストラリア周辺で繁殖を終え、これから北の海域に向かっている海鳥ですが、この時期としては個体数が多かったことから、今年は北上が早いのかもしれません。さまざまな海鳥たちが北上していくことから今後は北の海域がおもしろい時期です。またの機会に海鳥たちに会いにお出かけください。この度はお疲れ様でした。
石田 光史