【ツアー報告】固有種と渡りの鳥たち 春の奄美大島 2015年4月9日(木)~11日(土)
魅力的な固有種、固有亜種が生息する奄美大島。そしてこの時期は渡り途中の鳥たちも観察できる貴重な時期でもあります。今回は特に人気の高い固有種であるルリカケスとアカヒゲを集中的に観察するため、現地案内の高美喜男さんに探鳥地を厳選していただき、さらにはとっておきのおすすめポイントも加えて巡ることになりました。
9日、羽田空港の掲示板には現地奄美大島は雨という表示が出ていて心配されましたが、奄美空港に到着すると雨はすでに止んでいました。バスドライバーさんに聞いてみると直前までかなりの雨だったそうで、まずは幸運が待っていたようでした。この日はすでに15:00を過ぎていることから空港近くのポイントを巡ります。最初の場所では美しいイソヒヨドリが間近を飛び、草原にはコチドリ、シロチドリ、そしてようやく最後に2羽のムネアカタヒバリに出会うことができました。その後は海岸まで行きましたが今年はシギ類の姿はほとんどなく、ホウロクシギとトウネンの姿があるだけでした。ただシマアジのオスとメスの姿を見ることができ、帰り間際にはリュウキュウツバメが飛び、どこからやってきたのか50羽ほどのアトリの群れを見ることができました。
10日、天気予報は雨でしたが幸いにも雨は止み、予定通り05:00にホテルを出発しました。この日は奄美大島で一番人気のアカヒゲを観察するために出かけたわけですが、このアカヒゲが大変手強く、毎回声は聞こえても姿はなかなか見ることができないのです。薄暗いうちに到着しましたが周囲はすでにアカヒゲの声に包まれ、我々に期待を持たせてくれるような状況でした。良く見られている場所に行くと2羽が鳴きあっていたため、樹上でさえずっている個体を望遠鏡で捉えようと思いましたがやはりうまくいかず、結局は地上に降りて採食行動をしている個体を狙うことにすると、案外あっさりとその姿を何度も見ることができ、最後は2羽のオスが威嚇し合う様子まで見ることができました。朝食のため一旦ホテルに戻り再度出発した後は高さんおすすめのルリカケスのポイントへ。ここでは数個体のルリカケスの姿をじっくりと見ることができその後は昼食、そして午後は周囲を山に囲まれた公園を散策しました。まずはシジュウカラがさえずり、カラスバトが飛び、遠くの木にはズアカアオバトが群れていました。ふと見ると枯れ木にツミの姿もあり、見ていると上空をサンショウクイが飛んでいます。奄美大島で見られるサンショウクイは亜種リュウキュウサンショウクイでその声も「ビーリーリー」と濁り、かなり黒っぽく、本州で見るものとは違った印象です。見ているとその中の1羽が良い枝に止ってくれたため、ちょっとした撮影会状態になりました。他にも黄色部が濃い亜種アマミヤマガラ、ルリカケス、アオサギなどが見られました。
11日、この日は早朝からしとしとと雨が落ちていましたが05:00に出発。まだまだ薄暗い時間のためリュウキュウコノハズクの声を聞き、目的の亜種オオトラツグミの声もしっかりと聞くことができました。その声はトラツグミというよりはアカハラやマミジロのようなまろやかな歌声でした。なんとかその姿をと思い林道を歩きましたがシロハラの姿を見るにとどまりました。ただ、亜種リュウキュウキビタキが小雨の中、リズミカルにさえずっていました。朝食のため一旦ホテルに戻り、再度出発した頃には雨は上がっていました。最後は再び森へと入り、まずはルリカケスの出現を待ちました。待っている間にはアカヒゲの姿を見ることができ、ここではあまり人間を怖がらないルリカケスがふわりと飛んできて、我々のすぐ近くに止まってくれました。またここまで見る機会のなかったオーストンオオアカゲラのオスが現れ、朽木で採食行動をする様子をじっくりと見せてくれました。そして残りの1時間はぜひアカヒゲをもう一度とのリクエストから、良く見られているポイントに移動しました。ただ、早朝ほどその声は聞こえません。諦めかけた残り10分ほどのところで苔むした岩の上にアカヒゲのオスがピョコンと乗り、しばらくじっとしていてくれたので最後にもう一度その姿を楽しむことができました。
今回は観察を中止しなくてはならないような雨は無かったものの、3日間ほぼ傘や雨具が手放せない状況でした。ただ、目的であったアカヒゲ、ルリカケスはその姿を何度も見せてくれ、オーストンオオアカゲラ、リュウキュウサンショウクイといった亜種たちもほぼ見ることができました。シギ類の姿が少なかったはやや残念でしたが、奄美大島でぜひ観察したい鳥たちを楽しむことができた3日間でした。皆様この度はお疲れ様でした。また現地案内を担当してくださった奄美野鳥の会、高美喜男さん、ありがとうございました。
石田 光史