【ツアー報告】東シナ海第二の秘島・甑島 2016年5月6日~9日
(写真:カンムリオウチュウ 撮影:米持千里様)
5月6日、薩摩川内市の川内港から「高速船 甑島」に乗船する予定だったが荒天のため欠航となる。そのため専用バスを串木野新港へ走らせ「フェリー ニューこしき」に乗ることにした。乗船まで時間があるので鳥見を開始。港にはサギ類、カワウ、ウミネコなどがいて、近所の公園にはセンダイムシクイ、キマユムシクイ、ニュウナイスズメなどの渡り鳥も入っている。なんと、こんなところにムラサキサギがいて驚かされる。16:40 「フェリー ニューこしき」は串木野新港を出港。このフェリーは甑島商船株式会社のフェリーであり、総トン数940トン、定員350人、九州商船といちき串木野市及び薩摩川内市が出資する第三セクターなのだ。雨が激しかったため甲板での鳥見は諦め窓越しに観察する。オオミズナギドリやカツオドリが飛び、カンムリウミスズメもいる。そして、揺れるフェリーで最後まで頑張った一部のお客様が海面から飛び立つシロアジサシ5羽を確認したのである。19:10 下甑島の長浜港に着岸。下甑島は鹿児島県いちき串木野市の沖合約45km、東シナ海の甑島列島南部にあり、鹿児島県薩摩川内市に属し、面積66.1k㎡(山手線の内側と同じ)、人口約2,780人。この日は宿泊先のホテルが甑島近海で獲れた新鮮な魚介類をふんだんに使用した料理でもてなしてくれたのである。
5月7日、05:30。ホテルの周辺で鳥を見る。島の最高標高の尾岳(604m)に続く道路を歩くと、カラスバトの姿や声が目立つ。アカショウビンやサンコウチョウ、ヤブサメが囀る。朝食後は水田が広がっている場所に行ってみたが、アカガシラサギ、ツバメチドリ、ツメナガセキレイ、数羽のコホオアカがいる。マミジロタヒバリや亜種シベリアアオジもいる。そんな中、オウチュウを発見。なんと、耕作地と中学校に合計7羽もいる。そして、一部のお客様がキガシラセキレイの冬羽を観察したのである。午後は、海岸に行く。ここにはミサゴの巣があり、距離は遠いけど展望台から巣内が見えるのだ。巣内では雌が抱卵していた。暫くすると雄が大きな赤い魚を持って来て、雌に渡すと、雌はそれを持って巣から飛び立ち、代わって雄が抱卵をする。こんな、決定的瞬間をみなさんでじっくりと観察・撮影する。さらに、夕方、再び、水田に行くと、コホオアカやアオジに混じってシマアオジのような鳥がいる。どう見てもシマアオジなのだが、頭部の栗色の部分が黒く、背、肩羽、腰の茶褐色も乏しい。一瞬、ズグロチャキンチョウが脳裏をよぎる個体なのである(後にシマアオジ雄の第一回夏羽にこのような個体がいることが判明)。さらに、ノジコやムネアカタヒバリ、亜種シベリアツメナガセキレイなどを見てホテルへ帰ったのである。
5月8日、05:30。ホテルの周辺で鳥を見る。照葉樹に覆われている森にはカラスバトの数が多いようであちこちで鳴いている。朝食後、水田に行く。アカガシラサギ、オウチュウ、ツバメチドリ、ツメナガセキレイ、コホオアカ、シマアオジなどと昨日のメンバーと変わらないが、皆さんでじっくりと観察・撮影する。すると、換羽途中のジャワアカガシラサギによく似た個体がいてアカガシラサギとの識別に悩む。こういう悩む個体が出るのも渡りの時期の島の楽しみなのだ。午後は草地を歩く。周りは照葉樹林でカラスバトやヤブサメがたくさんいる。ところが雨が酷くなり風も出てきた。14:30に暴風雨となり、本日の観察は中止となる。夜、お世話になったガイドさんの「さよならパーティー」を開催。ガイドさんが持参してくださった牛たたきを皆さんで美味しくいただき、いろんな話で盛り上がったのである。
5月9日、朝、雨で観察中止。08:20小降りとなったので水田に行く。昨夜の暴風雨で何かいい鳥が入っていないかと期待したが、抜けてしまったようで鳥影が薄い。それでも、アカガシラサギ、オウチュウ、ツバメチドリ、ツメナガセキレイ、コホオアカなどはいる。すると、バスの中からバンケンを見付けた方がいて、慌ててバスから降りて探す。しかし、藪に入ってしまったようで出て来ない。諦めて林道へ行く。上空をサシバやアマツバメが飛び、ミサゴがディスプレイフライトをする。再び、バンケンを探しに行くと、枯れ木にとまるカンムリオウチュウを発見し、皆さんで堪能する。昼食後、再び、カンムリオウチュウのポイントへ行くと少なくとも4羽はいるようで、入れ替わりに枯れ木にとまる。さらに、オウチュウやアカガシラサギも同じ枝にとまるという何とも贅沢な枯れ枝となるのだ。
14:35 「フェリー ニューこしき」は長浜港を出港。カンムリウミスズメ、カツオドリ、オオミズナギドリなどを見ながら16:15に串木野新港に着岸。専用バスで鹿児島空港へと向かったのである。雨ばかりでしたが、オウチュウ祭りの甑島でした。皆様、この度はお疲れ様でした。
宮島 仁