【ツアー報告】春の奄美大島で魅力的な固有種に会いたい 2025年4月12日~14日
ここに行かなければ見ることができない固有種と固有亜種たちが豊富な奄美大島を訪れる春恒例のツアー。今回からはアカヒゲ、ルリカケス、オーストンオオアカゲラに加え、早朝探鳥と2度のナイトツアーでミナミトラツグミやアマミヤマシギも狙うとともに、アマミノクロウサギも見ることができればと期待しています。この時期はベストシーズンながら、とにかく雨が多いイメージが強いのですが、今回は2日目の午後ににわか雨の予報が出ていたものの、珍しく3日間を通して概ね天気は良いとのことでした。
12日、この日は奄美大島に残っていたことから、早朝に外を見ると意外にも天気の良い朝でした。ただ天気予報ではその後は曇りがちになり、午後からは一時的に小雨が降るとの予報でした。昼前に空港行きのバスに乗るころには空はどんよりとした曇り空に変わっていて、やや風が強くなってきていました。14:00にお客様と合流した後は観察機材を準備していただいてから、空港近くで探鳥しました。海岸線から岩礁地帯を見ると、この日は強風の中、全体的にムナグロの姿が目立ち、メダイチドリの多さも感じました。ほかにもセイタカシギ、コチドリ、シロチドリ、タカブシギの姿があり、ほぼ夏羽に換羽したトウネン、ウズラシギ、そしてこの日はオオソリハシシギの姿もあり、間近の岩にはカワセミが止まっていました。またカモ類の多く、コガモ、カルガモ、そしてハシビロガモも見られ、白色型のクロサギの姿もありました。その後、周辺を歩くとアマミシジュウカラが見られ、公園内にはシロハラが群れていました。また川を覗くとセイタカシギ、オオバン、カイツブリ、ヒドリガモ、そしてタシギも見られました。その後は森に移動しました。この頃からは残念ながら小雨がぱらついてきてしまいましたが、現地では森に入っての探鳥のため、なんとかなるだろうと思いました。到着後は小雨が降る中、早々に森に入ってみました。幸いにも雨の勢いが弱かったことから雨が気になることはなく、まずはさえずっているアカヒゲを探してみました。ただここでルリカケスが騒ぎだしたことから見に行くと、1羽のルリカケスが頭上にやってきてその後、飛び去っていきました。するとここでまたアカヒゲがさえずり出したことから探してみると、目線ほどの高さの横枝に止まってさえずっているアカヒゲを間近に見ることができ、しかもしばらくさえずってくれたことからじっくり観察、撮影することができました。その後はあわただしく夕食をいただきナイトツアーに出発して、みるみる薄暗くなってくる林道をゆっくり走ってみました。周囲からはリュウキュウコノハズクの声が聞こえ、やや風がありましたが幸いにも雨は降っていませんでした。この日も相変わらずアマミノクロウサギが何回も見られ楽しめました。ただどうしたことかアマミヤマシギはその気配すらなく、まったく出会うことができませんでした。
13日、昨夜からの雨に強風も重なり、この日は早朝から風雨が強くかなり荒れた天候でした。天気予報では09:00くらいからは曇りでその後は晴れてくるとのことだったので、朝食後に出発して森に向いました。ただ雨は止む気配がなく風もかなり強かったことから、春の奄美大島とは思えない寒さでした。途中、地面に降りているカラスバトを2回見る幸運はあったものの、現地は風雨が強かったことから、ひとまず建物に逃げ込んで様子を見ることにしました。係りの方に聞いたところ気温は10℃だそうで、ダウンジャケットがあってもよいほどの寒さでした。その後、10:00になり、ようやく雨が上がったことから探鳥を始めましたが、雨上がりであること、そしてこの天候のせいで全く人の気配がなかったことから、あることに期待してそれらしい場所に行ってみると、その勘が当ったのか、奄美大島では最も見ることが難しいミナミトラツグミがノコノコ歩きながら地上採食していました。しばらく観察、撮影していると姿が見えなくなったことから、一旦場所を変えてアカヒゲを探してみましたが、この寒さのせいかアカヒゲは全くさえずっていませんでした。そのため再び戻ってみると、驚いたことにまたミナミトラツグミが地上採食していました。トラツグミそっくりながら足をばたつかせるダンスのような行動もなく、大型チドリのように歩きまわりながら餌をとっていました。この時もかなりじっくり見ることができラッキーでした。ただその後は再び雨が降ってきてしまったことから屋根のある場所に避難すると、ここではルリカケスがやってきてその姿を見せてくれました。その後は一旦、昼食の時間とし、昼食後は風はあったものの空はかなり明るくなっていました。こうなると一斉に小鳥たちが動き出し、声も増えてきていました。まずはルリカケスの出現を待っていると、オーストンオオアカゲラの声がしたことから行ってみるとオスが木に止まっていましたが残念ながらすぐに飛び去ってしまい、その後はアカヒゲがさえずりだしたことから探してみました。すると美しいオスが間近にある倒木でさえずっていて、その後も何度かその姿を堪能することができました。そのため狙いをルリカケスに変えると、ドングリをついばんでは足に挟んで食べている個体に出会うことができ、その後はオーストンオオアカゲラに期待しましたが、アマミシジュウカラ、アマミコゲラ、アマミヒヨドリを見るに留まり、探鳥を終了してホテルに向いました。その後は夕食をいただき、この日もナイトツアーに出かけました。前日はなぜかアマミヤマシギが全く見られなかったため、どうなることかと思いましたが、この日は5~7個体が見られ、アマミノクロウサギは相変わらず絶好調で、何度も何度も見ることができ、中にはせっせと餌を食べている個体も見ることができました。
14日、ようやく雨も風もない穏やかな状況の中、この日はまだまだ真っ暗な早朝に出発して林道に向い、ミナミトラツグミを探してみました。日の出は06:00のためまだまだ真っ暗な中をゆっくり走ると、幸にもアマミヤマシギに出会うことができ、周囲からリュウキュウコノハズク、そしてミナミトラツグミのさえずりが響いてきたことから、車を降りてそのさえずりを聞いていただきました。そうしているうちにも周囲は見る見る明るくなってきて、道路上にはかなりの数のシロハラが降り、この日は地上採食しているミナミトラツグミを1度だけ見ることもできました。その後はアカヒゲが朗々とさえずる中、ホテルに戻って朝食をいただき、その後はすっきりした青空の下、再出発して森に向い、ここまで見ることができていないオーストンオオアカゲラを探してみました。駐車場で車を降りると早速、ルリカケスの騒がしい声が聞こえ、ここでは4羽のルリカケスが飛び回っていて、時には奇妙な声を発していました。ほかにも枯れ木に止まっているリュウキュウサンショウクイが見られ、上空をサシバが飛んで行きました。森に入るとなかなか見ることが難しいアカヒゲのメスが我々の周囲を歩き回り、新芽をついばんでいるズアカアオバトを見ることもできました。ただなかなかオーストンオオアカゲラの気配がなかったことから、過去に最もよく見られているエリアの遊歩道を歩いてみました。すると倒木をひたすらつついているオーストンオオアカゲラのメスの姿があり、ようやくじっくりと観察することができ、このツアーを締めくくりました。
今回は曇りから雨、そして強風にさらされてしまい、2日間の寒さは春の奄美大島とは思えないものでした。ただ最終日はすっきりした快晴になり、ようやく奄美大島らしさを体感できました。今回はアカヒゲはオス、メスともに見られ、ルリカケス、オーストンオオアカゲラも見られ、なんといってもミナミトラツグミの姿を堪能できたことが大きな成果でした。ナイトツアーでは相変わらずアマミノクロウサギが何度も見られましたが、アマミヤマシギには苦労させられました。ほかにもカラスバト、ズアカアオバト、リュウキュウサンショウクイなども見られ、初日にはセイタカシギやムナグロ、メダイチドリ、タカブシギといったシギチドリ類も楽しめました。この度はご参加いただきましてありがとうございました。
石田光史