【ツアー報告】春の奄美大島で魅力的な固有種に会いたい 2025年4月9日~11日
ここに行かなければ見ることができない固有種と固有亜種たちが豊富な奄美大島を訪れる春恒例のツアー。今回からはアカヒゲ、ルリカケス、オーストンオオアカゲラに加え、早朝探鳥と2度のナイトツアーでミナミトラツグミやアマミヤマシギも狙うとともに、アマミノクロウサギも見ることができればと期待しています。この時期はベストシーズンながら、とにかく雨が多いイメージが強いのですが、今回は2日目の午後ににわか雨の予報が出ていたものの、珍しく3日間を通して概ね天気は良いとのことでした。
9日、先週までの東京は気温差が大きく、初夏のような日もあれは最低気温が一桁の日もあるといった感じでしたが、ここにきて桜も続々満開になり、ようやく春らしくなってきました。そしてこの日の東京都内は最高気温が23℃と初夏のような陽気になり早朝からほぼ快晴でした。予定通り羽田空港を飛び立ち、快晴の奄美大島空港に到着後は観察機材を準備していただいてから、この日はまず空港近で探鳥しました。海岸線から岩礁地帯を見ると、間近には2羽のセイタカシギが見られ、足元にはコチドリ、オジロトウネン、タカブシギの姿があり、岩礁全体に広がるようにムナグロがかなりの数がいました。ほかにもコガモ、カルガモ、ダイサギ、そしてクロサギは白色型、黒色型が見られ、シロチドリ、メダイチドリの姿もありました。その後、周辺を歩くとシロハラ、アカハラが群れ、林からは2羽のアトリが飛びたちました。また川を覗くとセイタカシギ、オオバン、カイツブリ、ヒドリガモが見られ、ヨシにはカワセミが止まっていました。そして車に戻る途中では頭上をリュウキュウサンショウクイが飛んでいました。その後は森に移動しました。森に沿って歩くとズアカアオバトが木の実を食べていて、周辺ではアマミヤマガラが遊んでいました。森に入ると早速、ルリカケスが飛び回り、最後は2羽でその姿を見せてくれました。ただこの日はナイトツアーがあることから早めに出発してホテルで夕食をいただき、ナイトツアーに出発しました。この日の日没は18:45であることから、ようやく薄暗くなってくるタイミングで出発して林道をゆっくり走ってみました。最初の一往復は意外にもアマミノクロウサギが何回も見られ、その後は今度はアマミヤマシギが数多く見られるようになり、飛んで逃げてしまう個体もいたものの、道路上でじっとしている個体や、せっせと餌を探している個体にも出会えラッキーでした。観察中にはリュウキュウコノハズクの声を聞くこともできました。
10日、昨日が遅くまで探鳥したことから、この日は06:30から朝食をいただき08:00に出発して森に向いました。この日は早朝からどんよりとした曇り空だったこともあり、昨日に比べると肌寒く感じ、午後からは一部で小雨の予報が出ていました。森に向う途中では電柱に止まっているサシバが見られたり、電線に止まっているルリカケスやカラスバトも見られました。駐車場から外周の道路を歩くと、桜の実を食べているズアカアオバトが見られ、のんびりと採食する姿をじっくり見ることができました。また枯れ木にはリュウキュウサンショウクイが止まっていて黒っぽい独特の姿と、やや濁った声も聞くことができました。その後は森に入ってアカヒゲを探してみました。この鳥はうろうろ歩きまわってもほぼチラ見で終わってしまうことから、さえずっている個体に目をつけてじっと待つ方法をとっています。この日も1時間半ほどかかりましたが、美しいアカヒゲが何回かやってきてくれ、じっと木に止まってさえずってくれたことから望遠鏡を使ってじっくりと観察し、撮影することもできました。その後は一旦、昼食の時間をとってから再び森に入ってオーストンオオアカゲラの気配を探ってみましたが、残念ながら全く気配がなく、その代わりのように2羽のルリカケスがやってきて周囲を飛び回ってくれました。その後は場所を変え、途中の湾では2羽で餌を探している黒色型のクロサギが見られ、現地到着後は電柱に止まっているサシバが見られ、電線にはリュウキュウツバメが止まっていて、イソヒヨドリがさえずっていました。マングローブ林まで行くとリュウキュウツバメが飛び回り、水辺にはダイサギ、コサギ、イソシギの姿がありました。その後は林道を走ってからホテルに戻って夕食をいただき、この日もナイトツアーに出かけました。この日もアマミヤマシギは好調で何度も見られ、中には全く逃げることなく道の真ん中でじっとしていて間近まで接近できた個体、さらにはグイグイ近づいてくる個体もいて楽しめました。またアマミノクロウサギも何度も見られ、ようやく警戒心がそれほど高くなく、せっせと餌を食べている個体にも出会うことができました。
11日、春の奄美大島といえば雨がつきもので、毎回のように悩まされるのですが、最終日の今日も天気予報は晴れでした。この日は早朝に出発して林道に向い、ミナミトラツグミを探しに行ってみました。日の出は06:00のためまだまだ真っ暗な中をゆっくり走ると、早速この日もアマミヤマシギが道路をノコノコと歩き、周囲からはリュウキュウコノハズクの声が聞こえていました。そして森の中からようやくミナミトラツグミのさえずりが響き、結果的には4個体ほどがさえずっていました。その後は明るくなってきたことから道路上に降りている個体を探してみましたが、シロハラが見られたのみで一旦ホテルに戻って朝食をいただきました。その後は08:00に再出発して森に向い、ここまで見ることができていないオーストンオオアカゲラを探してみました。遊歩道を歩いてみると遠くからオーストンオオアカゲラの声がかすかに聞こえ、しばらく見ていると木をつつく音も聞こえてきました。さらに待っていると飛びたったオーストンオオアカゲラが倒木にとりついて餌を探し始めたことから望遠鏡を使って観察することができました。頭部が真っ赤なオスで、その後はいくつかの倒木を渡り歩きながら餌を捕っていました。その後は飛び立って木の高いところに移動し、ここではメスも現れて結果的にはオス、メスともに見ることができました。また観察中にはルリカケスが飛んできて間近にその美しい姿を見ることができました。思った以上に早めにオーストンオオアカゲラが見られたことから、その後は再びアカヒゲを探してみました。この春は昨年に比べると賑やかにさえずっている個体が少ないように感じましたが、幸にもよくさえずっている個体がいたことから時間をとって待ってみました。この日は気配が少なかったものの、何度かその姿を見ることができ、木に止まって朗々とさえずる姿をこの日も堪能することができました。そして最後はルリカケスがよく見られている場所で待っていると、幸にも2羽のルリカケスがやってきて姿を見せてくれ、そろそろ終了かといった時間には、意外にも大きな幸運があり、草陰からなかなか見る機会がないアカヒゲのメスが現れて、我々の周囲を歩き始めました。これといって警戒する様子もなく間近を歩き回る姿をじっくり楽しんでこのツアーを締めくくりました。
今回とにかく3日間を通して傘の出番が全くないという幸運が印象的でした。天気が幸いしたのかアカヒゲ、ルリカケスはよく見られ、やや苦戦しましたがオーストンオオアカゲラも最終日にオス、メスともに見られました。また早朝にはミナミトラツグミのさえずりが聞こえ、ナイトツアーではかなりの数のアマミヤマシギを堪能することができ、全く逃げずに餌を捕っている個体も見られました。また最も意外だったのがアマミノクロウサギで、こちらも想定外に数多くの個体が見られました。ほかにもカラスバト、ズアカアオバト、リュウキュウサンショウクイ、リュウキュウツバメなども見られ、初日にはセイタカシギやムナグロ、メダイチドリ、タカブシギ、オジロトウネンといったシギチドリ類や白黒それぞれのタイプのクロサギも楽しめました。この度はご参加いただきましてありがとうございました。
石田光史