【ツアー報告】東シナ海の秘島・平島 2016年4月29日~5月5日
(写真:オニカッコウ 撮影:藤田正昭様)
4月29日、鹿児島港南埠頭に全員集合し、21:20「フェリーとしま」に乗船する。「フェリーとしま」は、十島村が運航している総トン数1,391トン、全長85.5mの立派なフェリーである。23:00 「フェリーとしま」は静かに錦江湾へと滑り出した。明朝のトカラ列島では、どんな鳥たちとの出会いがあるの、考えただけでわくわくするのである。
30日、朝、05:30 に甲板に出ると、数百羽のオオミズナギドリが次々と流れて行き、カツオドリも数羽がフェリーに付いてきて、何度も船に接近して間近で見られる。中之島の港に入る時に、海上を小さなカモのような鳥が飛ぶ。全員で????となり写真判定の結果、なんとカイツブリだった。いったいどこからどこへ渡るのだろう。08:10平島に到着。民宿へ向かう道中、鳥がたくさんいていい感じである。と、早くもヤツガシラを発見。シロハラホオジロやコホオアカもあちこちにいる。民宿に荷物を置き、慌てて鳥見を開始。まずは、ヤツガシラを見たポイントへ急ぐ。ところが見つからない、するとコウライウグイスが鳴いているので探すと2羽がいた。さらに同じ木にベニバトの綺麗な雄もいる。盛り上がっているとヤツガシラが飛んできて、さらに皆さんで盛り上がる。今日は島に鳥たちが山ほど入っているようで鳥だらけなのだ。特にコホオアカが百羽以上入っていて、ビンズイも何十羽といる。コウライウグイスは後の集計で20羽以上、ヤツガシラも10羽以上は入っている。ツバメチドリ、ムジセッカ、カラアカハラ、マミチャジナイ、カラムクドリ、キマユホオジロ・・・・・、シベリアアオジやキマユムシクイもたくさんいる。オオルリやキビタキの雄もたくさんいる。遅い午後、何百羽のツバメが渡ってきた。中にコシアカツバメ、イワツバメ、ショウドウツバメやアマツバメ、ヒメアマツバメが混じる。そんなツバメたちの渡りを見ていると、喉の黒いハリオがいるではないか。クロビタイハリオアマツバメだ!さらにアナツバメ類3羽を見つけるがヒマラヤなのかマレーなのかムジなのか分からない。みなさんパニックとなり全員で真上を見ながら「あー、うー、おー」という言葉しか出ない興奮の盛り上がりとなったのである。
5月1日、朝、05:30出発。民宿の近くでシマゴマを発見。初めて見るというお客様がたくさんいたので朝から盛り上がる。しかし、昨夜、鳥が一気に抜けてしまったようで鳥影が薄い。それでも、コホオアカは百羽以上いるし、ビンズイも何十羽といる。コウライウグイス、ヤツガシラ、ツバメチドリ、マミチャジナイ、カラムクドリ、キマユホオジロなどもいる。新たにコイカル、オオヨシキリ、アカハラダカ、ヒバリシギ、シロハラクイナ、ミゾゴイなどを確認。エゾムシクイがたくさん入ってきたようであちこちにいる。その後はアカヒゲを堪能する。男女諸島から奄美諸島にいる亜種アカヒゲであるが、奄美諸島より以北のものは夏鳥として渡来し、サイズが大きく、中でもトカラ列島のアカヒゲが最も美しいと思う。そして、奄美諸島や沖縄本島のものは物凄く恥ずかしがり屋で、しかも早朝しか鳴かないのに、平島のアカヒゲは日中でも何度もみんなの前で歌ってくれる目立ちたがり屋なのである。夕方、何百羽というツバメが渡ってきたので、期待して1羽1羽見るが、全てツバメであった。民宿の近くで一部のお客様がニシオジロビタキを観察・撮影する。
2日、朝、05:40出発。カラアカハラが入ってきたようであちこちにいるが、鳥はさらに減ったしまった。オウチュウの情報があったのでそのポイントで待つ。暫くするとヤマグワの実を食べる黒い鳥がチラチラ見える。ヤマグワを食べるのだからオウチュウではない。しかし、全身が見えない。皆さんのドキドキが伝わってくる。すると、島内放送が「ピンポンパンポン、今夜、鹿児島発のフェリーとしまは、悪天候のため欠航します。次の出港は4日を予定しています」という。なんと、最低でも2日の延長である。慌てて会社への連絡などでバタバタする。離島の旅にはよくあることとはいえ、天候不順による延長だから宿泊費はお客様負担となるので申し訳ない気持ちで一杯である。せめて、いい鳥が出て皆様の笑顔が見たい、そんな気持ちでポイントに戻ると、満面の笑みでお客様が手を振っている。その黒い鳥は国内では数回しか記録のない珍鳥のオニカッコウの雄であった。もちろん、皆さんでじっくりと観察・撮影する。この日は、島にはまったく鳥がいなくなったが、この1羽で十分過ぎるほどに楽しめたのである。
3日、朝、05:40出発。強風の中、民宿の近くでミゾゴイを発見するが、直ぐに飛んでしまう。昨日よりもさらに鳥がいなくなった。それでも強風の中、カラアカハラやマミチャジナイなどを観察。先程のミゾゴイを再度見付けて皆さんで観察・撮影する。オニカッコウは今日もいて、ヤマグワの実を食べている。10:40 風雨が激しくなり観察を中止。前線が通過して台風のような横殴りの暴風雨となる。14:20 雨が止んだので、一人で外の様子を見に行くと、宿の近くの耕作地にオウチュウを発見。慌てて宿まで走り「オウチュウだ!オウチュウだ!オウチュウだ!オウチュウだ!」と叫び、全員で観察することができたのである。風は強いが観察を開始する。鳥が入ってきたようでツバメが乱舞し、ヒヨドリやコムクドリの群れが飛んでいく。健康広場へいくとキセキレイとツメナガセキレイがいた。ツメナガセキレイは亜種ツメナガセキレイとキタツメナガセキレイ、さらに亜種タイワンハクセキレイも飛んできた。そして、シマノジコの綺麗な雄の夏羽も登場して、皆さんでじっくりと観察・撮影する。その後もシマアオジの雄や亜種シベリアツメナガセキレイを観察し、別の場所でもオウチュウ2羽が見られ、オウチュウ遭遇率の高い男の面目躍如なのである。その後も、鳥たちがどんどん入って来て、明日は楽しみである。
4日、早朝、まだ薄暗い中、民宿の前で囀るアカコッコの声で目が覚める。今年は今まで一回も聞かなかったので心配していたのだが健在であった。05:40出発。鳥たちが入っていないので夜のうちに抜けたようだ。とはいえ、コホオアカは、まだ、たくさんいて、シマノジコ、シマアオジ、カラアカハラ、コウライウグイスなどもあちこちにいる。ツツドリ、プッポウソウ、イカル、ニュウナイスズメ、ノジコなどの新しい種も入ってきた。午後は南之浜へ行きムネアカタヒバリ、ツメナガセキレイなどを見る。東之浜へ行く途中の牛舎で綺麗な夏羽のアカガシラサギを発見。夏羽は頭部から喉が赤褐色となりお酒を呑んだように見えるためか学名がバッカス(ローマ神話のお酒の神様)である。さらに、亜種シベリアツメナガセキレイ、マミジロツメナガセキレイ、ツメナガセキレイの3亜種がいて皆さんでじっくりと観察・撮影する。東之浜でジュウイチの声を聞くが姿を見ることはできなかった。
5日、朝、05:40出発。さらに鳥が抜けてしまい静かな日となる。それでも、アカガシラサギ夏羽、シマノジコ、シマアオジ、カラアカハラ、カラムクドリ、シロハラホオジロ、キマユホオジロ、ムジセッカなどの本土なら1羽で数百人は集められるメインエベンターたちがあちこちにいるので皆さんでじっくりと観察・撮影する。キマユムシクイがたくさん入ってきたようで囀りがあちこちで聞かれる。キマユムシクイの囀りを聞く機会なんてあまりないので皆さんでしっかりと覚える。サンコウチョウの雄も入ったようで何ヶ所かで見られる。ここでは、亜種サンコウチョウとリュウキュウサンコウチョウの両方が見られるが、昨夜、入ったのは亜種サンコウチョウのようだ。夕方、民宿の近くでオオジュウイチの声を聞いたお客様がいらした。
6日、昨夜から横殴りの風雨で、この日は鳥見どころでない。そして、雨に濡れながら10:20 「フェリーとしま」は鹿児島に向けて東之浜港を出港したのである。
2日も延長となり、お客様に余分な御負担をお掛けした7日間でしたが103種の鳥たちが確認されました。皆様、この度はお疲れ様でした。
宮島 仁