【ツアー報告】早春の落石クルーズでウミスズメ類に会いたい! 2025年3月7日~9日
バードウォッチングにはさまざまな分野がありますが、その中でもカモメ類、シギチドリ類、ミズナギドリ類は特に難解で縁が遠い印象があります。中でも海鳥類は船に乗らなくてはいけないというハードルまであることからさらに縁が遠い印象があるでしょう。今回はそんな海鳥類の中でも普段ほぼ見る機会がないウミスズメ類、中でも国内観察が極めて難しいと思われる小型ウミスズメ類を落石クルーズから観察しようというかなり偏ったツアーです。海況によって成果が大きく変わることから3日間という短期間ながら落石クルーズに2回乗船するという大胆な行程を組んでいます。今回乗船する落石クルーズは実は営業運行前から関わらせていただいていて私的にも何かと縁があり応援してきました。実際、ウミスズメ類の観察、撮影という点から考えると唯一無二なクルーズであることは間違いないでしょう。冬にはウミバトという謎めいたウミスズメ類が高確率で見られるほか、3月に入るとなぜかコウミスズメ、エトロフウミスズメといった小型ウミスズメ類が見られるようになってきます。この冬もすでに何回か乗船していますがウミバトも通常よりかなり多く出会えています。今回は前日の風雪がおさまってくる方向のため、ひとまず落石クルーズの乗船に関しては、当初の予定通り8日、9日に振り分けて2度乗船することにしました。
7日、前日に中標津に残りましたが、夜になっても小雪が降り続いていてやや風もあり、天候や海況に関しては不安が残るものでした。ただこの日の朝にはほぼ雪は止み、曇り空ながらも次第に空が明るくなってきていて10:30に中標津空港に到着したころには一部に青空が見えていました。予定していた機材にやや遅れが生じ、予定よりも20分ほど遅れて中標津空港に到着後は機材の準備をしていただいてからバスにて出発しました。この日は野付半島を経由して根室に向かう予定でしたが、この冬は冬の小鳥類が全く見られておらず、それを裏付けるかのように野付半島ではここまで全く成果がなかったことから、比較的カモ類がよく見られている漁港に向いました。あらかじめ聞いてはいましたが、海が見えると驚くほどの流氷が押し寄せていて、その量の多さには驚きました。ここまで流氷の接岸がなく、この冬のツアーではなにかと流氷には泣かされていただけに、今更のようにやってきたかといった感じがしました。そのせいか、漁港の入り口では大量に押し寄せている流氷に止まっているオオワシの成鳥に出会うことができ、しばらく観察しているとオジロワシが飛んできて空中で争う様子を見ることができました。また遠くを見渡すとオオハクチョウが群れ、海上にはコオリガモ、ホオジロガモの姿もありました。漁港の中にも流氷が入っていて、まずはヒメウ、そしてウミアイサの群れを間近に見ることができました。さらに見ていくと残念ながらコオリガモの姿はなく、シノリガモ、ホオジロガモ、ウミアイサの姿があるのみでした。その後は休憩してからさらに南下して漁港に向いました。ここでは漁網についた魚に集まっているオオセグロカモメ、シロカモメがかなりの数で見られ、よく見ると背の灰色が薄いセグロカモメ、さらにはワシカモメが混じっていました。また漁港内ではホオジロガモ、スズガモ、カワアイサ、カンムリカイツブリが見られ、堤防上に止まっているオジロワシ、そして大木に並んで止まっているオオワシも見られ、見る見る傾いて行く夕陽を見ながらこの日の探鳥を終えました。
8日、この日は朝からほぼ快晴になり、ようやくうねりも収まってクルーズ日和であることに確信が持てました。朝食後は落石クルーズ乗船のため落石漁協にある待合室に向かいました。この時間は予報では波は1.1m風は北よりの風3mと運行には問題がなかったのですが、船長によると外洋に出るとまだまだうねりが多少残っているとのことでした。08:45に出航すると幸いにもコオリガモのつがいが見られ、ほかにもクロガモ、ウミアイサの姿があり、テトラポットにはウミウ、ヒメウ、マガモ、シノリガモが止まっていました。外洋に出るとそれなりにうねりはあったものの、観察に影響が出るようなものではなく、風もなかったことから快適なクルーズでした。ただこの日は出航からユルリ島付近まではなぜかウミスズメ類の姿がなく、唯一見られたのがコオリガモのつがいで、メスは真っ黒な生殖羽に換羽していて独特の風貌になっていました。ユルリ島付近まできてようやくケイマフリ、換羽中のアリューシャンウミバトが見られました。その後もモユルリ島付近まではケイマフリが数多く見られ、中には完全な生殖羽個体も混じっていました。またケイマフリと一緒に浮いている冬羽のアリューシャンウミバトにも出会うことができ、最後はいつの間にか集まってきて、岩礁に上がっている姿まで見せてくれたラッコの姿を見てクルーズを終えました。下船後は一旦、昼食の時間とすると、ナナカマドの実にはツグミがやってきていて、ハシブトガラやヒガラ、コゲラ、シジュウカラをご覧になった方もいらっしゃいました。その後はこの冬に見られているケアシノスリを探しに行きましたがこの日は出会うことができず、そのため一旦、漁港に行ってみました。ここでもクロガモの群れやキンクロハジロ、オオセグロカモメに混じるウミネコなどが見られたものの、期待していたオオホシハジロには出会えず、休憩も兼ねて納沙布岬に行ってみました。刺すように冷たい風が吹く中、海上にはかなりの数のクロガモ、シノリガモが群れ、間近にはアカエリカイツブリの姿もありました。観察後は再びケアシノスリを探すも出会うことはできず、そのため反対側の牧草地を探してみることにしました。ここではオオモズが見られているとのことで探してみましたがなかなか見つからず。ただ1時間ほど探し回ってようやく高木のてっぺんに止まっているオオモズに出会うことができました。ただかなり距離があったことからしばらくバス車内から観察してみました。オオモズは視界から消えては再び現れるといった感じで何回も見ることはできましたが、結局距離が縮まることはありませんでした。ただ16:45頃からは1羽のコミミズクが飛び回って楽しませてくれ、この日の探鳥を締めくくってくれました。
9日、この日も早朝から快晴で周辺の木々も揺れていないことから、良いクルーズができそうな気がしていました。朝食後はこの日も落石クルーズ乗船のため落石漁協にある待合室に向かいました。この時間は予報では波は0.8m、風向きはやや変わって南東よりの風5mと波は収まってきてはいたもののやや風がある予報でした。08:40に出航すると、この日も漁港内にはコオリガモのつがいが見られ、ほかにもクロガモ、ウミアイサの姿があました。外洋に出ると波は高くはなかったものの、ややうねりがあり、風向きのせいか時折、飛沫がかかってくる状況でした。この日はやや遠回りでユルリ島を目指して航行しましたが、やはりウミスズメ類はかなり少なく期待通りとはいきませんでした。ただ途中では白さが際立つウミガラスの冬羽を間近にじっくり観察することができました。ユルリ島が近づくとシノリガモの群れが見られ、次第にケイマフリの数が増えてきました。ただこの日はウミバトの姿はなく、その後は岩礁に群れるゼニガタアザラシ、さらにはモユルリ島付近ではラッコの姿も見られ、この海域では今度は生殖羽に換羽した真っ黒いケイマフリが多数見られました。ただこの日も結果的には小型ウミスズメ類には出会えず、この時期としてはやや寂しいクルーズになってしまいました。
今回は天候が次第に良くなってくる中での3日間になってくれたことから、予定の変更なく進行することができました。メインとなる落石クルーズは9日はやや波、風があったもののも結果的には2回乗船することができ、結果的には小型ウミスズメ類に出会うことができなかったものの、冬羽から生殖羽、また換羽中のケイマフリが見られ、ウミバトも冬羽、そして換羽中のアリューシャンウミバトに出会うことができ、9日は冬羽のウミガラスにも出会えました。また、ラッコやゼニガタアザラシも楽しめ、漁港ではコオリガモ、ウミアイサ、ホオジロガモ、クロガモ、シノリガモ、カワアイサ、そしてシロカモメやワシカモメ、さらにはたまたま流氷が大量に接岸していたことから、思いがけず流氷とオオワシ、オジロワシも楽しむことができました。また8日午後にはオオモズ、コミミズクに出会うこともできました。今後もウミスズメ類が間近に見られる貴重な落石クルーズを積極的にツアーに組み込んで行きたいと思いますので、ぜひまたご乗船下さい。この度はご参加いただきましてありがとうございました。
石田光史