【ツアー報告】早春の落石クルーズでウミスズメ類に会いたい! 2025年3月4日~6日
バードウォッチングにはさまざまな分野がありますが、その中でもカモメ類、シギチドリ類、ミズナギドリ類は特に難解で縁が遠い印象があります。中でも海鳥類は船に乗らなくてはいけないというハードルまであることからさらに縁が遠い印象があるでしょう。今回はそんな海鳥類の中でも普段ほぼ見る機会がないウミスズメ類、中でも国内観察が極めて難しいと思われる小型ウミスズメ類を落石クルーズから観察しようというかなり偏ったツアーです。海況によって成果が大きく変わることから3日間という短期間ながら落石クルーズに2回乗船するという大胆な行程を組んでいます。今回乗船する落石クルーズは実は営業運行前から関わらせていただいていて私的にも何かと縁があり応援してきました。実際、ウミスズメ類の観察、撮影という点から考えると唯一無二なクルーズであることは間違いないでしょう。冬にはウミバトという謎めいたウミスズメ類が高確率で見られるほか、3月に入るとなぜかコウミスズメ、エトロフウミスズメといった小型ウミスズメ類が見られるようになってきます。この冬もすでに何回か乗船していますがウミバトも通常よりかなり多く出会えています。ただ今回は次第に天気、海況ともに悪くなってくる予報のため、あらかじめ6日の乗船は諦め、5日のうちに2度乗船するよう変更して出発しました。
4日、数日前は東京都内では最高気温が22℃になるなど、初夏のような陽気になったものの、昨日は一転して小雪が舞う厳しい寒さになりました。この日の東京都内は昨夜の雨は止んではいたものの、早朝からどんよりとした空模様で、午後からは再び雪の予報が出ていました。ただご集合には影響はなく、予定通り羽田空港にご集合いたいたことから資料の配布、そして連絡事項をお伝えしてから羽田空港を出発して中標津空港に向かいました。現地が近づいてくると眼下には真っ白な大地が広がり、まだまだ真冬であることが印象付けられました。機体が大きく揺れることもありましたが、現地到着後は撮影機材の準備をしていただいてからバスにて出発しました。この日は野付半島を経由して根室に向かう予定でしたが、この冬は冬の小鳥類が全く見られておらず、それを裏付けるかのように野付半島ではここまで全く成果がなかったことから、比較的カモ類がよく見られている漁港に向いました。最初の漁港内ではヒメウが2羽見られただけだったため、片っ端から漁港内を見てみました。すると次の区画にはウミアイサが群れ、その中にはホオジロガモのメス、そしてコオリガモのつがいの姿がありました。そのためバスを止めて待っているとまずはウミアイサが次第に接近し、どこからともなくアカエリカイツブリも現れました。そしてようやくコオリガモのつがいが接近してきてくれたことから間近に観察することができました。その後は堤防上に並んでいるカモメ類を見ることにし、ほとんどがオオセグロカモメながら、そこに混じるシロカモメ、ワシカモメを見ることができ、漁港内にはシノリガモの姿もありました。その後は休憩してからさらに南下しました。ここでは漁網についた魚に集まっているオオセグロカモメが見られ、よく見ると背の灰色が薄いセグロカモメが混じっていました。ここでは堤防上にいるシロカモメ、ワシカモメも見られ、テトラポットにはオジロワシ亜成鳥が止まっていました。そして最後は漁港内にいるカワアイサを見てこの日の探鳥を終えました。
5日、この日は朝からどんよりした空模様ながら風もなく穏やかな状況でした。朝食後は午前中の落石クルーズ乗船のため落石漁協にある待合室にとりあえず向かいました。この時間は予報では波は0.6m風は北よりの風4mと運行には問題がなかったのですが、準備中にはやや風が吹きて来たかなといった感じがしました。あらかじめの読みではこの日に限っては海況は良好と思っていましたが、予報がやや変わってしまったようで急激に風が強まり、波も立ってくるとのことで、1回目の乗船と2回目の乗船の間隔を詰めたほうが良いとの話がありました。まずは08:35に出航し、漁港内では相変わらず数が多いウミアイサ、そしてクロガモ、マガモ、ヨシガモなどを見てから外洋に出ました。この時間はうねりもなく風もなくかなり快適なクルーズで、ユルリ島が近づくにつれてケイマフリの数が増してきました。この時期らしく、完全な冬羽や中間羽、そして真っ黒になった生殖羽までさまざまな個体が見られ、のんびりと浮上している個体から飛び立って逃げて行く個体までケイマフリらしく個性豊かな行動を見せてくれました。そしてウミバトはまずほぼ生殖羽になっているアリューシャンウミバトに出会うも残念ながら見失い、直後には今度はまだまだ冬羽の銀白色ながら一部に生殖羽が出ている個体を間近にじっくりと観察することができました。ただ最後には再び生殖羽に換羽している個体に出会うことができ、飛ばれてはしまいましたがその姿を見ることができました。この日はウミスズメ類は2種のみでしたが岩礁に群れているゼニガタアザラシ、そして数は少なかったですがラッコの姿も見ることができました。11:00過ぎに下船後は一旦、昼食の時間として、その後は予定よりも時間を早めて12:15に再び乗船しました。ただこの時間になると北東風がやや強まり、外洋に出るとうねりがあり、時々、飛沫がかかってくる中でのクルーズになりました。うねりが大きい個所ではウミスズメ類の姿が少なく、ユルリ島の島影に入ったあたりからようやくウミスズメ類を探せるような海況になりました。ここでは午前中に逃してしまったアリューシャンウミバトの生殖羽個体を探すと、ケイマフリとともに浮いている個体を発見することができ、今回はたまたま穏やかな海域だったことから思いのほか、じっくりとその姿を見ることができ、最後は飛翔する姿も見ることができました。その後も大きなうねりの中を航行する厳しい状況ながらケイマフリなどを見ることができ、岩礁帯では上空を飛び回るオオワシ、オジロワシを見ることもできこの日のクルーズを終えました。終了がやや早まったことから、その後は花咲港、そして根室半島各所をめぐってみましたが大きな成果はありませんでした。
6日、昨夜はまったく積雪がなかったですが、早朝に外を見ると真っ白い雪景色に変わっていて小雪が舞っていました。視界も悪く、やや風も出てきたため、とりあえず帰りの飛行機について本部と相談し、予定している中標津発14:45のほか、千歳空港行の13:35も視野に入れながら運行することにしました。朝食後はまず雪が激しくなる中、この冬にケアシノスリが見られている場所に行ってみましたが残念ながら姿がないため、一旦、漁港に行ってみました。ここでも視界がはっきりしないほどの雪が降っていましたが、漁港内にいるクロガモ、ホオジロガモ、シノリガモ、ホシハジロ、キンクロハジロが見られましたが、期待していたオオホシハジロは見られず、再びケアシノスリを探してみました。ただこの時間も姿がなかったことから周囲を探してみましたが見つからず、最後にやや場所を変えて探してみましたがここでも姿はなく、予定よりも1時間ほど早く現地を出発して、千歳空港に向かう13:35便、羽田空港に向かう14:45便の両方に対応できるよう準備を進めることにしました。ただ幸いなことに中標津空港に向かうにつれて雪の勢いはなくなってきて、空もいくぶん明るくなってきているように感じました。そして12:00には我々が搭乗予定の便が条件付きながら羽田空港を飛び立ち、10分ほど遅れたものの無事、中標津空港に着陸したことから安堵しました。ただ搭乗予定の便はなかなか出発せず、結果的には30分ほど遅れて15:10に飛び立ったことから、少々遅れが出たものの予定していた便で帰着でき幸いでした。
まず今回は天候が次第に悪化する中でのツアーになり、ほぼ予定通りに進行せずご苦労をおかけしました。メインとなる落石クルーズも結果的には2回乗船はできたものの、午後からは想定外にうねりが出てしまい思ったような観察ができませんでした。ただ今回はこの落石クルーズの創設者である新谷耕司さんが同乗してくださったこともあり、冬羽のアリューシャンウミバトに加え、ほぼ生殖羽のアリューシャンウミバトにも出会うことができました。小型ウミスズメ類には出会えませんでしたが、ケイマフリもさまざまな個体が見られ、ラッコやゼニガタアザラシも楽しめました。また漁港ではコオリガモ、ウミアイサ、ホオジロガモ、クロガモ、シノリガモ、カワアイサ、そしてシロカモメやワシカモメ、オジロワシも見ることができました。新谷さんは根室を離れるとのことでしたが、今後もウミスズメ類が間近に見られる貴重な落石クルーズを積極的にツアーに組み込んで行きたいと思いますもでぜひまたご乗船下さい。この度はご参加いただきましてありがとうございました。
石田光史