【ツアー報告】根室・知床・鶴居村 冬の道東めぐり 2025年2月18日~20日

(写真:オオワシ 撮影:向井幸雄様)

冬の定番となっているこの冬の道東めぐりも早いものですでに20年近く担当させていただき、過去、毎年のようにコースを変えながら催行してきました。当時はタンチョウ、シマフクロウ、オオワシ、オジロワシが主役でしたが、シマフクロウに関しては厳冬期の出現率が極めて悪いため、出現率が極めて高い初冬に移行しました。またここ数年は撮影をご希望のお客様が急増したことから冬の道東ツアーはすべて「フォトツアー」として企画してきましたが、日程をやや短めの3日間とし、両日共にシングル部屋を使ったお手頃な冬の道東ツアーを新たに企画してみました。

18日、一旦は去って行った寒波が再びやってきたこともあって、東京都内は前日かなりの強風が吹き荒れていました。この日の東京都内は早朝から天気は良かったものの相変わらず強風が吹き荒れていて飛行機に影響が出ないか心配になるほどでした。朝が早い集合時間ながら予定通りに羽田空港にご集合いただいたことから、資料の配布、この日の連絡事項をお伝えしてから搭乗してひとまず釧路空港に向いました。やや遅れたものの無事到着し、その後は空港内で観察機材の準備をしてからバスに移動してまずは鶴居村に向いました。車窓から見える風景はやや積雪が減ったかなといった感じがして、風も弱く、かなり穏やかな印象を受けました。この日はこの冬にマナヅルがやってきているため最初に行って見ました。観察を始めると快晴無風だったこともあり、とにかく暖かく感じられ、早くもマナヅルの姿を見ることができました。タンチョウも50羽ほどが羽を休め、飛んでくる個体、飛んでいく個体、鳴き交わしやダンスも見ることができました。その後は別の場所に行ってみました。間もなくお昼だというのに10羽ほどのタンチョウの姿があり、川にはカワアイサ、周辺ではオジロワシ、シロハラゴジュウカラの姿もあり、その後はエゾフクロウを見に行きました。相変わらず積雪が多い小道を歩いて行くと、この日も樹洞の縁で休んでいるエゾフクロウを見ることができました。ただ彼らは日中は休んでいるため短時間で切り上げて鶴居村のサンクチュアリーに移動しました。この日はタンチョウの個体数はやや少ない印象でしたが、それでも飛翔する姿や鳴き交わし、求愛ダンスなどが見られ、付近の林ではツグミ、ハシブトガラ、ヒガラ、シマエナガなどが見られました。その後はやや陽が傾いてくる中、この日最後の探鳥地、屈斜路湖に向いました。到着後はまず屈斜路湖の湖面が一望できる場所に行ってみたのですが、驚いたことに凍結している箇所がなく、そこにオオハクチョウが群れていました。この時間でも寒さはそれほどなく穏やかな中、見事な風景とオオハクチョウのコラボを楽しむことができました。観察後は周囲の林を見てみると、地上に群れている20羽ほどのツグミの姿があり、必死に餌を捕っていました。よく見ると付近にはアトリの姿もあり、アカゲラ、シメ、シロハラゴジュウカラなども見られました。また遠くからヤマゲラの声が聞こえたことから待ってみましたが出会うことはできず、最後はやや距離はありましたが、林の中を飛び回るシマエナガ、そしてエゾシカを見て日没に合わせてこの日の探鳥を終えました。

28日、この日の午前中は流氷に群れるオオワシ、オジロワシを観察するため早朝に出発して羅臼町に向かいました。出発時は空はかなり明るくなっていて天気は問題なさそうでした。ただ羅臼町に近づくにつれて小雪が舞い出し、一時的に雪が強まる時間帯もありましたが、到着した現地は空は明るくなってきていました。その後は出航して沖に向いましたが、この日は付近にシャチの群れがいるとのことで、まずは見にいってみることにしました。先に出航していたクルーザーの付近やその左右の海域にもシャチの姿があり、特に大型のオスが背びれを海面に出し泳ぐ姿は迫力があり、中には我々の船の間近で浮上する個体もいて大歓声に包まれました。やや風が強い状況ではありましたが、波は穏やかで冬の割には快適なクルーズでした。シャチが潜水したことから、その後は港付近まで戻って、風をよけるようにしてオオワシ、オジロワシの観察を行いました。間近に飛び回るオオワシ、オジロワシは迫力十分で、堤防上にずらっと並んだ様子も圧巻でした。また後半は天気が回復してきたこともあって、青空を背景に飛翔する姿も見応えがありました。ほかにもウミアイサ、シノリガモ、堤防上にはオオセグロカモメ、ワシカモメ、シロカモメの姿もありました。その後は休憩してから野付半島ビジターセンターに向いました。天気はみるみる回復してきたものの強風が吹き荒れ、野付半島では道路に吹き溜まりができるほどでした。そのため野付半島ビジターセンターで各自昼食をとっていただいた後は、早めに根室に向うことにしました。途中にある漁港ではかなりの数のウミアイサが漁港内に群れ、それに混じるホオジロガモ、そして2羽のコオリガモがいたことからバスを近づけ、逃げられないようにバス車内から観察しました。独特の表情と長い尾が特徴でしばらくの間、間近に観察することができました。その後は1時間ほど一気に走って根室まで移動し、まずは休憩してから探鳥に向いました。ただ途中には先週、ケアシノスリが見られた場所があるため立ち寄ってみました。ここはさすがに遮るものがないため強風が吹いていてよくホバリングをするケアシノスリには最適な環境でしたが、この日は30分ほど探してみましたが出会うことができず、ひとまず納沙布岬に行ってみることにしました。納沙布岬では岩礁に群れているヒメウが見られたほか、海上にはウミアイサ、ホオジロガモが見られ、いつの間にかアカエリカイツブリが浮上していました。また風に乗ってオオセグロカモメ、ワシカモメが飛び回り、続々と岩礁に帰ってくるヒメウも見られました。観察後はやや時間があったことから再びケアシノスリを探しに行ってみましたが、結局出会うことができず、日没とともにこの日の観察を終えました。

20日、この日は朝から曇ってはいましたが早朝の根室市内は風もなく穏やかでした。ただ朝食後の出発時には黒い雲に覆われ、やや風が強まってきて小雪が舞ってきていました。この日はまず花咲港に行く予定でしたが、前日に見ることができなかったケアシノスリをもう一度見に行ってみることにしました。現地は遮るものがないため風が強く、雪も横殴りのような状況でしたが、ひとまずバスを降りて探してみました。ただこの日もオオワシが優雅に飛んでいるのみで残念ながら出会うことはできず、花咲港に向かうことにしました。花咲港も風が強く寒さが厳しい状況でしたが、漁港内にはウミアイサの姿が多く見られ、つがいで浮上しているコオリガモも見られました。風下側では風を避けるかのようにシノリガモが群れ、付近にはマガモの姿もありました。やや遠くに目を移すとクロガモの群れに混じっている2羽のコオリガモが見られ、堤防近くにいたことからバスを近づけて間近に観察することができました。ほかにもこの日はカンムリカイツブリも見られました。その後は休憩をとっていると、針葉樹にオオワシが止まっていました。ここからは一気に走ってこのツアー最後の探鳥地である霧多布岬に移動しました。現地では雪は止んでいて、風もそこまで強くはなかったですが、海岸線にある岬ということでしっかりとした防寒装備が必要でした。霧多布岬もケアシノスリの越冬記録が多い場所のため、バス車内から外を見ながら走りましたがその姿はなく、駐車場でバスを降りた後は岬周辺で探鳥してみました。ここではオオセグロカモメが風に乗って飛び交い、海上には最近名物になりつつあるラッコが複数頭浮いているのが見えました。ほかにもヒメウやウミアイサが見られ、間近にアビが浮上しているのも見ることができました。その後は反対側にあるアゼチの岬も見て、最後はホバリングしているチョウゲンボウを見てツアーを締めくくりました。

冬の道東めぐりはここ数年、撮影主体のフォトツアーだけを企画していきましたが、このツアーでは志向を変えて短期間ながらさまざまな探鳥地をめぐれるようにし、両日シングル部屋利用でのんびり過ごしていただけるようにしてみました。ただ今回はたまたま流氷の接岸がなく「流氷とワシ」を楽しむことができず残念でした。また冬鳥の渡来状況が芳しくなく、想定外の出会いがありませんでした。ただ定番のオオワシ、オジロワシ、タンチョウ、エゾフクロウ、コオリガモといった主役は出揃ってくれ、シノリガモ、クロガモ、ウミアイサ、カワアイサ、ホオジロガモ、シロカモメ、ワシカモメ、ハシブトガラ、シロハラゴジュウカラ、ツグミ、アトリ、シメ、キバシリ、アカゲラなども見られました。北海道は季節や場所を問わず野鳥や野生動物が楽しめるところです。また季節や場所を変えてお出かけください。この度はご参加いただきましてありがとうございました。

石田光史

オジロワシ 撮影:向井幸雄様

 

オオセグロカモメ 撮影:向井幸雄様

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