【ツアー報告】フォトツアー2月の冬の道東めぐり 2025年2月13日~16日

(写真:シマエナガ 撮影:大場宏一様)
冬の定番となっているこの冬の道東めぐりも早いものですでに20年近く担当させていただき、過去、毎年のようにコースを変えながら催行してきました。当時はタンチョウ、シマフクロウ、オオワシ、オジロワシが主役でしたが、シマフクロウに関しては厳冬期の出現率が極めて低いうえ、観察場所が混雑しているため、出現率が極めて高く、観察場所が空いている初冬に移行しました。それに代わって加わったのがシマエナガ、そして私的に応援している落石クルーズです。シマエナガはその独特の風貌から一気に人気が高まり、今や冬の北海道では外せない鳥になりました。また落石クルーズではほぼこのクルーズでしか見ることができない謎めいた海鳥、ウミバトをはじめとしたウミスズメ類やラッコの撮影に期待できます。これによりシマエナガをはじめとした小鳥類、流氷のオオワシ、オジロワシ、タンチョウの塒および雪原で乱舞するタンチョウ、エゾフクロウ、そしてコオリガモをはじめとした海ガモ類、最後はウミスズメ類とほぼ全てが撮影可能な4日間コースが完成しました。
13日、しばらく続いた最強寒波も去り、東京都内はいくぶん気温が高い朝を迎えていました。ただこの昨夜から続いた強風はこの日も残り、集合場所の羽田空港周辺は早朝から強風が吹いていました。ただトラブルなく無事予定通りにご集合いただいたことから資料の配布、この日の連絡事項をお伝えしてから予定通り搭乗といきたいところでしたが、やはり強風の影響があり、搭乗後に滑走路に順番待ちとなってしまいました。結果的には1時間ほど遅れて出発することになってしまい、到着した女満別空港はかなりの雪が降り、想定以上の積雪がありました。この日は空港から直接、宿に向かう予定だったことから、荷物を積んで早速出発しました。ただ出発後も雪は降り続き、一時的に視界不良になるほどで、途中、さらに雪が強まってかなり視界が悪くなってきていました。1時間ほど遅れて宿に到着後は一旦お部屋に入っていただいてから各自撮影機材の準備をしていただき、その後はシマエナガをはじめとした小鳥類を撮影しました。時間はすでに15:30を過ぎてしまい、強まる雪の影響もあってかなり薄暗くなっていましたが、ハシブトガラやシロハラゴジュウカラ、シジュウカラを撮影し、小鳥の動きがなくなった16:15まで撮影することができました。そしてこの日もエゾモモンガの撮影を行わせていただき小雪が舞う中、餌場に向って飛びたっていくエゾモモンガを撮影してこの日の撮影を終えました。
14日、この日は昨日の雪は止み、風も収まっていて空には月が輝いていました。早朝の気温は-12℃でまずまずの冷え込み。この日はタンチョウの塒の撮影のため早朝に出発しました。観光パンフレットなどでもおなじみのタンチョウの塒はまず天気が良くかなり冷え込むこと、そして風がないことという絶妙なバランスで川霧と霧氷と朝陽いう最高の条件になります。当然、なかなか良い条件に当らないのですが、この日はいずれの条件も満たしていて期待して現地に向いました。1時間ほどで現地に到着するとこの日はかなりの混雑で、中州に佇むタンチョウたちを見ながら準備にとりかかりました。日の出時刻の06:22が近づいてくると、川霧は勢いを増し、川沿いの木々にはみるみる霧氷がついてきました。そんな中を早くもカワアイサが飛んで我々の頭上を通過し、ヤマセミが鳴きながら飛び立っていきました。塒にいるタンチョウたちも鳴き交わしたり、ダンスをしたりとよく動いていて、日の出時刻が過ぎると朝陽が霧氷を照らし出して幻想的な光景が広がってきました。そしてここでは08:00まで撮影し、その後はエゾフクロウの撮影に向かいました。エゾフクロウはいるのかいないのか運次第といった感じで、見られなかったり、1羽だったり2羽だったりとさまざまですが、この日は幸いにも2羽で仲睦まじく寄り添うように休んでいる姿を見ることができました。ただエゾフクロウは日中は寝ているため長時間の撮影は避け、この日も10分ほどの滞在で移動しました。次のポイントは基本的には観光客の方のため用といった感じがあるため、普段は行っていないのですが、この冬はマナヅルがよく見られているため行ってみました。ただこの日はマナヅルの姿はなく、代わってカラマツに群れているベニマシコが見られ、タンチョウはまだまだ数は少なかったですが、塒から飛んでくるタンチョウを撮影することができました。その後はサンクチュアリーに移動して、ここからは約1時間ほどタンチョウの撮影を行いました。この日は快晴のため雪の照り返しが強く、かなりまぶしく感じる中でしたが、鳴き交わしや求愛ダンス、そして塒から飛んでくる個体、飛んでいく個体などさまざまを撮影することができました。そして前日にほぼ撮影できなかったシマエナガの撮影時間を確保するために例年よりも1時間ほど早く出発して宿に向いました。鶴居村はほぼ晴天でしたが、途中からは小雪が舞い出し、到着後はそれなりの量の雪が降っていました。ただ比較的明るめだったことから、写真にきれいに映る雪で、シマエナガ撮影には良い雪の降り方でした。この日のシマエナガは10羽ほどの比較的大きな群れと、2~3羽で行動している小群が入れ替わり立ち替わりやってきたほか、ハシブトガラ、シロハラゴジュウカラ、シジュウカラ、アカゲラ、そしてこの日はオオアカゲラ、シメもやってきてくれ、上空を通過していくヤマセミには驚かされました。またハンノキに群れるマヒワ、悠々と舞うオオワシなども見られ、最後はこの日も餌場に向って飛びたっていくエゾモモンガの撮影を行ってこの日の撮影を終えました。
15日、この日は流氷に群れるオオワシ、オジロワシ撮影のため早朝に出発して羅臼町に向かいました。以前は05:30出航の早朝便に乗っていましたが、なかなか日の出に出会えないこと、そして日の出が見られないと光線の関係で1時間ほど撮影ができないことから08:30便に変えたのでした。ただこの冬は残念ながら羅臼町への流氷の接岸がないだけではなく、オホーツク海側でもようやく前日に流氷初日が発表されたほどでした。流氷は風任せとはいうものの、さすがにこれほど流氷が離れていると期待薄ではありますが、オオワシ、オジロワシはたくさん渡来しているとのことでした。出発後はひたすら真っ白になった広大な大地の中を走り、途中では日の出間近の快晴の空が真っ赤に染まっていく様子が見られました。ただその後は一気に天気が変わり、中標津町あたりでは視界不良になるほどの雪が降ってきました。この雪は標津町を過ぎるまで続いて心配になるほどでしたが、羅臼町が近づいてくると雪の勢いは衰え、空は次第に明るくなってきました。そして到着した道の駅「知床らうす」では空には一部青空が見えてきていました。出航後はオオワシ、オジロワシの撮影を行いました。この時間は小雪が舞ってきてはいましたが、雪を被った山々を背景に飛ぶ巨大な姿は圧巻で、青空を背景に飛ぶ姿も見事でした。撮影していると付近にシャチがいるとのことで、うねりが大きい海上を進み、船体脇を泳いでいる巨大なオスのシャチをしばらく観察することができました。その後はうねりを避けて羅臼港付近まで戻って再びオオワシ、オジロワシの撮影を行いましたが、この頃からは風雪が強まってかなり厳しい状況になっていました。下船後は再び道の駅「知床らうす」に立ち寄ってから野付半島に向いました。野付半島は吹き曝しの環境のため、大量の積雪はない場所ですが、この日の午前中の雪のせいか、かなりの積雪があってちょうど除雪した直後のようでした。ネイチャーセンターまでを往復してみましたが小鳥の気配がなかったことから、その後は漁港に行ってみました。この日は驚くほどのウミアイサが群れ、それに混じるキンクロハジロ、ホオジロガモ、そしてシノリガモもみられ、複数のコオリガモも見られました。休憩後は最近よく見られているケアシノスリを探してみました。現地に行ってみるとノスリが盛んにホバリングしていて、さらに探してみるとやや距離があったもののホバリングを繰り返しているケアシノスリが見られました。しばらく見ていましたが接近してくる感じがなかったことから港に向いました。この冬は小鳥類だけでなくカモ類もかなり少ないのですが、この日も同様の印象でウミアイサ、クロガモ、コオリガモ、カンムリカイツブリは見られたものの個体数は少なく、これらのカモ類を日没まで撮影してこの日の探鳥を終えました。
16日、この日は落石クルーズに乗船予定のため風、波予報が気になっていましたが、幸いなことに天気予報は晴れ一色、昨日までの強風はウソのようにおさまって波も低い予報だったことから、かなり期待が持てる状況でした。朝食後は落石漁港に向かい、途中、バス車内から見えた落石港の沖合は、みごとなベタ凪でかなり良い撮影ができる確信が持てました。到着後は待合室にてライフジャケットの装着、トイレを済ませてから乗船して出航しました。まず漁港内でコオリガモを探しましたがその姿はなく、スズガモが群れ、たった1羽ながらヨシガモの姿があり、10羽ほどのオオハクチョウ、マガモも見られました。その後はかなり穏やかな外洋に出ました。波がほとんどないことから、かなりの海鳥が視界に入り、早速、多数のケイマフリが見られ、この時期らしく夏羽、冬羽、中間羽とさまざまな個体が見られました。そしてこの日は冬の主役であるウミバトもよく見られ、銀白色が目立つ亜種アリューシャウミバト、ケイマフリに似た亜種ウミバト、さらには換羽中と思われる個体も見られました。折り返しあたりでは、シノリガモの群れが見られ、仲良く止まっている2羽のオジロワシ、そして岩礁にはかなりの数のゼニガタアザラシが見られましたが、ここではラッコの姿はありませんでした。ただ折り返した直後には間近にラッコが浮上し、ホタテ貝を持って叩く音まで聞こえてくるような良い条件で観察することができました。そして前日にしっかり撮影できなかったコオリガモがいたため船を接近させてしっかり撮影することもできました。この日は快晴無風という最高の条件でウミスズメ類撮影ができ、心地よい時間を過ごすことができ、このツアーを締めくくりました。
4日間という国内ツアーとしては長い日程で、朝も早くお疲れだったのではないでしょうか。結果的には流氷の接岸がなく「流氷とワシ」の撮影ができず残念でしたが、早朝からはじめたタンチョウの撮影は快晴無風の好条件になり、気温が急激に下がったため霧氷に朝陽があたる幻想的な雰囲気の中での撮影が叶いました。新たな主役となった可愛らしいシマエナガも期待通り撮影三昧で、ハシブトガラ、シロハラゴジュウカラ、オオアカゲラ、アカゲラも撮影でき、可愛らしいエゾフクロウは2羽が寄り添っていました。また落石クルーズも快晴無風の好条件になってくれ、冬の主役であるウミバト、亜種アリューシャンウミバトを堪能することができ、ケイマフリ、ラッコ、ゼニガタアザラシも撮影できました。北海道はさまざま企画していますが、どれも魅力的な野鳥たちに出会えています。 また季節を変えて北海道にお出かけください。この度はご参加いただきましてありがとうございました。
石田光史