【ツアー報告】冬の信州でイスカに会いたい! 2025年2月5日~6日

(写真:ミヤマホオジロ 撮影:坂東俊輝様)
人気のある赤い鳥の中でも特徴的な嘴を持っているイスカは日本国内では冬鳥とされていますが夏季にも見ることがあり、少々謎がある鳥です。また毎冬毎冬飛来するわけではないためなかなか出会いのチャンスがないのも事実で、出会うことはなかなか難しいのが現実です。イスカは特にマツの種子を好んで食べるため針葉樹の林を探すことが重要で、松かさをこじ開けやすいよう嘴が互い違いになっていることが最大の特徴です。この嘴を使ってマツなどの針葉樹の種子をついばんで食べるためこういった採食シーンが見られればとも思いツアーを企画しています。またツアーではここ数年、皆様からのリクエストが増えているシングル部屋を利用したプランにしています。ただこの冬はどこに行っても冬鳥の姿が少なく、友人、知人に聞いてもほぼ同じ回答がくるといった状況です。冬鳥に関しては数年に一度、こういった現象があることは知られていますが、何かと心配になります。また今回は直前に過去最高寒波襲来とのことで、北海道、北陸を中心に記録的な積雪が話題になっていました。ただ我々が訪れる長野県中部は大雪の影響はなく、2日間を通して曇りから晴れといった予報が出ていました。
5日、ここ数日は最強寒波の襲来とのことで、各地で大雪になり、特に前日には北海道で一晩で1mを超える積雪があったとニュースになっていました。そしてこの日も日本海側では記録的な大雪になるとのことでしたが、幸にもこの日の東京都内は早朝から雲一つない快晴で、現地の天気予報も曇りとのことでした。このツアーは遠方からのご参加も可能になるようにとの考えから、集合時間を通常よりもやや遅めの東京駅前09:00にしていることもあってか、少々早めにご集合が完了したことから、予定よりも10分ほど早く東京駅前を出発して、ひとまず中央自動車道を走りました。バス車内ではいつものようにこのツアーで見られそうな鳥の解説やイスカの話、さらには現地の状況などをお伝えしながら進め、途中、サービスエリアで休憩してから現地を目指して進めました。ただこの頃からはやや雲が出てきて、遠くに見える八ヶ岳には雪雲がかかっているのか、白くかすんで見えました。ただバスは順調に進み、昼前にはサービスエリアに到着しました。このツアーでは当日の現地の気温、路面状況が今一つわからないことから現地到着直前のサービスエリアで時間を取り、ここで現地の状況を各自で判断していただき身支度などを整えていただけるようにしています。また時間がちょうどお昼にさしかかることから昼食も済ませていただいています。バスを降りると小雪が舞ってはいましたが、空には青空が広がっていて思ったほど風も弱く穏やかな印象でした。準備ができた後は再度バスにて出発し探鳥ポイントに向かいました。到着後はバスを降りて舗装道を歩き出しました。積雪が心配でしたが、この日は路面が見えている状況で道路わきに少々雪が残っている程度でした。年によってはバスを下りたあたりでもイスカの姿が見られましたが、この日は気配はなく、ところどころで足を止めながら進みました。すると雑木林の中からコゲラの声が聞こえ、見ているとシラカバにコゲラが止まり、後を追うようにヤマガラ、コガラ、ヒガラ、シジュウカラが次々に姿を現して楽しませてくれました。さらに歩くと道路上を歩き回りながら餌を探している2羽のミヤマホオジロの姿がありました。観察していると次第に雪が強まって視界がなくなったことから、一旦中断して雪が止むのを待ちました。わずかな時間で空が明るくなって雪が弱まったことから再度見てみると、2羽のミヤマホオジロの付近にはベニマシコの姿もあり、さらには青いルリビタキが現れて姿を見せてくれました。その後、ベニマシコはイタドリについて種子を食べていて望遠鏡を使って真っ赤な姿を見ることができました。その後はやや積雪がある道を歩きましたが次第に雪が強まったことから折り返し、一旦、休憩の時間としました。ただ少々時間があったことから再度小道を歩いていくと、ハギが自生している場所からルリビタキのメスが飛びたって、付近にあるヌルデに止まって種子をついばんでいました。また道沿いにはジョウビタキのメスの姿もあり、付近にはここにもベニマシコのオス、メスの姿があり、道端の草の実をついばんでいる様子をじっくりと観察して、周囲が薄暗くなってきた16:30に探鳥を終えました。この日は結果的には天気予報よりも天候が悪く、ほぼ小雪の降る中での探鳥となりました。
6日、この日は早朝から青空が広がっていて、ほぼ快晴といった感じでしたがやや強い風が吹いていました。朝食後に出発して現地に向うと、途中にある温度計は-6℃を差していました。ひとまず途中でトイレに立ち寄ってから昨日と同じルートを歩いてみることにしました。ただ前夜にある程度の積雪があったようで、前日に比べると路面がほとんど見えていない状況でした。積雪のある道を雪を踏みしめながら歩いて行くと、昨日と全く同じ場所に2羽のベニマシコの姿があったことから、まずはじっくりと観察することができました。特に真っ赤なオスが比較的高い場所に止まって餌を食べていてくれたことは幸いでした。その後、坂道を登って振り返ると、遠くの山々は見事な霧氷に覆われ、青空とのコントラストが見事でした。その後も前日に比べて明らかに増えている雪を踏みしめながら歩きましたが、この日はカラ類の姿を見ることもなく、途中、ツルウメモドキの実にやってきているツグミが見られたのみで、折り返してきた道を戻りました。ただ戻る途中でも小鳥の姿はなく、結果的には予定よりも30分ほど早く探鳥を終了し、トイレに立ち寄ってから各自昼食を準備していただき、その後は公園で昼食の時間としました。昼食後は公園内で探鳥を開始しましたが、この頃からはまた小雪がちらついてきていました。湖面のカモ類はとても少なかったですが、白さが際立って見えるミコアイサのオスの姿があり、キンクロハジロも数羽見られました。川ではオオバン、カルガモ、ホシハジロが見られ、この日はカイツブリの多さが目立ちました。よく見るとホオジロガモのメスが2羽見られ、やや奥にはメスを5羽も引き連れたホオジロガモのオスの姿がありました。公園まで移動するとこの付近だけで5羽ほどのジョウビタキがいるようで、オスがメスを追いかけたり、ヨシに2羽のジョウビタキが同時に止まったりと賑やかな様子を見せてくれました。ここからは並木にホザキヤドリギが寄生しているため、見ながら歩きました。すると芝生に上がって草を食みながら歩くヒドリガモの姿があり、さらに歩くとようやくカワアイサのオスに出会うことができました。そして上空を飛んでいる猛禽類が目に入ったことから見てみると、驚いたことにオジロワシでした。諏訪湖では過去にオオワシが越冬して話題になったことはありましたが、ここ数年は越冬記録はなく、今年はたまたまオジロワシがやってきているようでした。戻る途中からは再び雪が強まってきましたが、モズが地面に降りて餌を探し、ここでもジョウビタキのオス、さらにはコゲラの姿が見られ、最後にはどこからか飛んできたミコアイサのオスが着水したことから全員で観察してツアーを締めくくりました。
とにかくこの冬は冬鳥の渡来状況が極めて悪く、日本各地から悪いニュースばかりが入ってくる状況でした。結果的にはその状況がそのまま出てしまった形になり、目的としていたイスカ、オオマシコともに声すらもないといった状況で残念でした。初日は小雪の中での探鳥で状況は良くなかったですが、2日目は青空も広がり探鳥日和だっただけにさらに残念でした。ただベニマシコが各所で見られ、ミヤマホオジロ、ルリビタキ、ジョウビタキ、そしてヒガラ、ヤマガラなどのカラ類、ミコアイサ、カワアイサ、ホオジロガモなどのカモ類は見られ、最後はオジロワシが登場して驚きました。今回は残念でしたがぜひまたチャレンジしてください。この度はご参加いただきましてありがとうございました。
石田光史