【ツアー報告】鵡川・大沼・遊楽部 冬の道南めぐり 2025年1月11日~13日

冬の北海道といえばバードウォッチャーならば一度は訪れたい憧れの探鳥地でしょう。特に道東エリアは人気が高いですが、道東エリアはどちらかというとオオワシ、オジロワシ、タンチョウ、シマフクロウといった大型の鳥種が中心です。一方、この道南は冬の小鳥類、猛禽類、カモ類、カモメ類と冬の北海道としては比較的さまざまな種が観察できることが最大の特長で、オオワシやオジロワシ、そしてほかのツアーでは出会えないコクガンの群れが毎回見られています。ただ道東に比べて道南は冬に訪れる探鳥地の中でもとにかく天候が安定せず、積雪量が多い探鳥地で、毎回運行がスムーズに行くかどうか心配になるほどです。またこの冬は冬鳥の渡来状況が極めて悪いため、小鳥類中心の探鳥であるこのツアーは心配が尽きません。今回は事前の天気予報では概ね天候は良く、現地の状況もそれほど多くの積雪がないとの情報を得ていました。

11日、この日の東京都内は風が冷たく感じたものの早朝からほぼ快晴でした。予定通り羽田空港にご集合いただいた後は、資料や航空券の配布、そしてこの日の予定をお伝えしてからひとまず千歳空港に向いました。到着後は空港内にて観察機材の準備をしてから苫小牧市内に向けて出発しました。この日はまず、この冬の道内の小鳥類の動向を見てみようと思い、苫小牧市内にある公園に向かいました。バスを降りて周囲を見てみると驚いたことにツグミの小群がナナカマドの実に集まっていました。本州ではこの冬、ツグミやシメ、カシラダカ、オオジュリンといった小鳥類が全く見られない状況になっていたため心配していましたが、いきなりツグミに出会えたことは印象的でした。園内を歩くとナナカマドにはヒヨドリもやってきていて、芝生の広場では木の陰に隠れるように餌を探すミソサザイの姿があり、上空をオオワシが飛んでいました。さらに歩くと林の中からはシジュウカラ、ハシブトガラの声が聞こえ、ここでもナナカマドに群れるツグミ、そしてシメの姿も見られ、付近にはたった1羽ながらアトリが止まっていました。そしてバスに乗る直前にはナナカマドの実に群れているカワラヒワの群れが見られました。その後、向った場所ではわずかに2羽のオオハクチョウが見られただけだったため、周辺の林に入ってみました。すると数羽で餌を探しているシマエナガに出会うことができ、一緒にいたハシブトガラもじっくり見ることができました。その後は公園に立ち寄ってみました。この頃にはやや雲が多くなり肌寒く感じるようになっていましたが、ここでは毎回のようにカササギが見られていて、この日もまずは電線に3羽、その後は地上採食している7羽のカササギが見られ、過去一番数が多かったことには驚きました。その後は道の駅で休憩をとってから、この日最後の探鳥地である河口に向かいました。漁港内を見るとカモ類の数はかなり少なかったですが、クロガモ、ホオジロガモ、ホシハジロ、スズガモ、カンムリカイツブリが見られ、堤防にはオジロワシが止まっていました。さらに歩くと潜水していたシノリガモが顔を出し、間近に見ることができました。探鳥後は再び道の駅で買い物などしてからホテルに向いました。風が吹くとかなり寒さが厳しくなる探鳥地でしたが、この日は風がなかったことが幸いでした。

12日、この日は早朝からすっきりした快晴で、ホテル周辺は例年に比べるとかなり積雪が少なく、ほぼ路面が見えているような状況でした。豪華な朝食をいただいてから出発しましたが、このツアーとしては珍しいほどに快晴、そして無風の穏やかなスタートでした。途中にあるパーキングエリアでは青空と新雪のコントラストが美しく映え、再度出発後は遊楽部川に向かいました。そもそも雪が多い場所ではありますが、この日はほぼ路面が見えているような状況で驚きましたが、進むにつれて木々には霧氷がついて美しく輝いていました。最初の場所ではセグロセキレイ、カワガラスが見られ、川沿いでは暖かかったせいかミソサザイがさえずりながら餌を探していました。また林の中からはハシブトガラのさえずりも聞こえていました。その後はさらに上流で探鳥しましたが、小鳥類の動きがなかったことからトイレ休憩を挟んで河口方面に向かいました。ここでは積雪のある中を河口に向って歩いて行くと、ここでもナナカマドにやってきているツグミの群れが見られ、間近の海面にはハジロカイツブリが浮いていました。観察していると黒い雲がやってきたため小雪が舞い始めましたが、オジロワシの亜成鳥が飛んできて枯れ木に止まり、河口にはカワアイサ、海上にはホオジロガモ、シノリガモ、ビロードキンクロの姿がありました。その後はさらに函館方面に南下し、途中で昼食の時間とり、昼食後は隣接する公園で探鳥をしました。するとここでもナナカマドの実にはかなりの数のツグミがやってきていて、木をつついているアカゲラも見られました。さらに歩くと枯れ木に止まっている2羽のシメの姿がありましたが、これらを狙ってかハイタカが上空を旋回したため鳥たちはいなくなってしまいました。その後はホテルがある大沼に向って進み、途中にある漁港へ行ってみました。この冬はとにかく小鳥類がかなり少ないのですが、なぜかカモメ類が大量に堤防にずらっと並んでいたためバスを降りて観察してみました。ほとんどがオオセグロカモメでしたが、その中には背の灰色が薄いワシカモメ、さらに淡いシロカモメが混じり、初列風切が白黒で背がオオセグロカモメよりもやや薄いセグロカモメ、さらには小型で足が黄色いカモメも見られました。また周辺ではマガモ、カルガモ、コガモ、ヒドリガモといった淡水域に生息するカモ類も多数見られました。そして反対側の砂浜を見てみると、ここには30羽ほどのコクガンが群れていて採食していました。場所的には接近できない状況でしたが、なぜか数羽がどんどん泳いで接近してきてくれたことから、最後はかなり近い距離感で観察することができました。その後は鹿部町の林を通過し、みるみる薄暗くなってくる中、最後に大沼のオオハクチョウ越冬地に立ち寄ってからホテルに向いました。一時的に小雪も舞いましたが風もなく、それほど寒さが厳しくなく幸いな1日でした。

13日、この日は気温がやや高いせいか濃霧に包まれた朝になりました。ただ朝食後の出発時には霧もなくなり、空を見上げると雲一つない快晴でした。この日の行動予定はさまざま考えましたがまずは海岸に向い、コクガンが見られている岩礁にいってみることにしました。途中、見事な霧氷がついた木々につつまれながら進み、到着した岩礁でコクガンを探してみましたが、この日は残念ながら出会うことができませんでした。ただ途中の海岸にはその姿があったことから場所を変えて観察することにしました。ここでは20羽ほどのコクガンが群れていて、器用に逆立ちして海藻を食べていました。よく見ると幼鳥が1羽混じっていて艶のある黒色の成鳥個体との差が良く分かりました。観察中にはオジロワシが飛んできたため、コクガンが一旦は飛び立ってしまいましたが、再び戻ってきてじっくりと見せてくれました。その後はトイレに立ち寄ってから周辺の岩礁を見てみました。ただこの冬はカモ類の数も少なく、海上には数羽のホオジロガモが見られただけでした。その後は冬鳥にさほど期待ができない状況であることから、残りの時間で留鳥のヤマゲラを探してみることにしました。最初に行った場所では小鳥類の気配がなかったため、昨日も行ったハクチョウ越冬地に行ってみました。ただここでもオオハクチョウの見事な飛翔を楽しむことはできたものの小鳥類の気配がなかったため、最後に公園内を歩いてみることにしました。駐車場脇の小さな池にはカルガモ、マガモの姿があり、どこからともなくヤマガラが飛んできました。さらに歩くとアカゲラのメスが見られ、続けざまに今度はオスにも出会うことができました。さらに森に入ると樹液が出ている木があり、そこにやってくるシマエナガ、ハシブトガラ、シロハラゴジュウカラが見られ、付近では木の実をつつくコゲラの姿もありました。ヤマゲラの気配がなかったことから来た道を戻ると、途中にある木の実にとりついているヤマゲラのメスがいたことから、採食する様子、さらには木の幹を登っていく姿を最後の最後でじっくり観察する幸運がありました。

毎回毎回、天候や積雪の状況が気になるエリアでの探鳥ですが、今回は積雪が少なく、さらには3日間を通して小雪がたった1度だけ舞いはしましたが、とにかく青空が多く穏やかで暖かい中で探鳥ができたことは幸いでした。ただこの冬は全国的に冬鳥の渡来状況が極めて悪く、昨年見られたベニヒワ、イスカ、キレンジャク、ウソといった冬鳥は全く気配無く残念でした。ただナナカマドにはツグミの群れやシメがやってきていて、普段は見られないカササギの群れが見られたり、コクガンの群れが2度に渡って間近に見られました。また留鳥のシマエナガ、ハシブトガラ、シロハラゴジュウカラ、アカゲラが見られ、カモ類も少ないながらビロードキンクロ、クロガモ、ホオジロガモ、カワアイサなどが見られ、ワシカモメ、シロカモメの美しい個体も見られました。そして最後は良い条件の中でヤマゲラをじっくり観察する幸運もあり、冬鳥が少ないながらも各所で見どころがあり、また暖かで穏やかな陽気の冬の道南をお楽しみいただけたかと思いました。この度はご参加いただきましてありがとうございました。またご一緒できましたら幸です。

石田光史

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