【ツアー報告】冬の印旛沼と霞ケ浦 トモエガモの群れと猛禽類の塒入り 2025年1月8日

ここ数年、なぜかどんどん増え始めた印旛沼のトモエガモ。数年前から実際に現地で観察してみましたが、湖面に真っ黒くなるほど塊状に群れている姿、またそれらが一斉に飛び回り乱舞する様子はまさに驚きの一言でした。トモエガモの大群と言えばその昔、韓国に出向いて観察するツアーに同行したことがありましたが、川幅いっぱいに群れ、あたかも島のようになって川面の色が変わっていたことが強烈に印象に残っています。今回訪れる印旛沼はさすがにそこまでの規模ではないものの、おおよそ10万羽とも言われています。今回はこのトモエガモの群れと湖畔のヨシ原に棲む小鳥たち、そして夕方は茨城県まで移動して猛禽類の塒入りを観察します。風が吹くととても寒い探鳥地ですが、この日の天気予報は終日ほぼ晴れで風も弱く穏やかな1日になるとのことでした。

8日、早朝から澄み切った青空の東京駅前にほぼ予定通りご集合いただいたことから08:30に出発してまずは千葉県に向かいました。移動中のバス車内ではいつものようにこの日に見られる可能性がある種の中から、特に目立った種に関して識別ポイントなどの解説を行いました。途中、サービスエリアで休憩をとってから再度出発して、ここから20分ほどで最初の探鳥地に到着しました。到着後は各自観察機材の準備を進めていただいてから湖面が一望できる堤防に上がりました。今年は昨年とは異なり、トモエガモの群れがいる位置が岸よりな傾向があるのですが、この日もトモエガモの群れは湖面を真っ黒に染めるほどに見え、やはり岸にかなり近い位置にいました。そして観察をはじめるのに合わせるように群れは飛び立って位置を変え、そのものすごい光景にはもう「すごい」という単語しか出てこないほどでした。群れはどんどん風上側に移動したかと思うと、一時的に高く舞い上がって、あたかも大きな生き物がうごめいているかのように見えました。その後はやや場所を移動するとかなりの数のヨシガモを間近に見ることができ、ほかにもオナガガモ、カイツブリ、カンムリカイツブリが見られました。遊歩道を歩くと、湖面にはさらにホシハジロ、ミコアイサ、ハジロカイツブリ、杭に止まるミサゴ、ユリカモメ、セグロカモメが見られました。ただこの冬を象徴するかのように小鳥類はほぼ見られず、常連のオオジュリンやツグミ、シメが見られず、わずかにホオジロ、カワラヒワ、モズが見られた程度でした。そろそろお昼になったことから一旦近くの公園に移動してまずは各自昼食をとっていただきました。昼食後は1時間ほど移動して茨城県に向かい、夕方にはチュウヒ、ハイイロチュウヒの塒入りを観察する予定でしたが、まだまだ時間があったことから周辺をめぐって探鳥してみました。まずは人気のあるタゲリがよく見られている場所に行ってみると20羽ほどのタゲリの群れがいましたが残念ながら飛んでしまいました。ただ目で追っていくと近くの畑地に降りたことから美しい緑色の姿と独特の冠羽を見ることができました。また電柱にはチョウゲンボウ、そして電線に群れているムクドリの群れの中にホシムクドリがいたことから接近して観察してみました。すると結果的には3羽のホシムクドリがゆったりと電線に止まっていてくれたことから良い距離感で観察することができました。その後はシギ類を探してハス田に行ってみると、ここでは数羽で歩き回るタカブシギが見られ、1羽ながらタシギの姿もありました。その後は一旦トイレに立ち寄ってからさらに観察してみました。すると30羽ほどの群れで飛び回ったり、採食したりしているハマシギに出会うことができました。その後も周辺をめぐりましたが、ある場所では電線に止まっているコチョウゲンボウのメスに出会うことができ、しばらく観察していると驚いたことに我々に向って飛んできて、間近をすーっと通過していきました。そろそろ陽が傾いてきましたが最後のもう一カ所めぐってみると、ここではセイタカシギが見られ15:30になったことから猛禽類の塒入りポイントに移動しました。塒入り観察は風がある日のほうが、猛禽類が飛び回るため見ていておもしろいのですが、この日はどちらかというと無風で穏やかでした。早くも複数のチュウヒが飛んできては木に止まり、再び飛びたっては間近を飛んだりと楽しませてくれました。この日は日没の16:30までの予定でしたが、ハイイロチュウヒがなかなかやってこなかったため16:45まで延長して探鳥しましたが、残念ながらこの日はハイイロチュウヒを見ることはできませんでした。

風が吹くと寒さが厳しい探鳥地をめぐるツアーでしたが、この日は幸い穏やかで無風の探鳥日和でした。主役であるトモエガモは今期は着水している位置が近く、島のように真っ黒くなって湖面に浮いている様子、そして群れ飛ぶ様子は言葉を失うほどの迫力で、たまたま良いシーンを見ることができました。一方でこの冬は小鳥類が各地で少なく、この日もほぼ見られなかったことが残念でした。ただヨシガモやミコアイサ、カンムリカイツブリが見られ、ミサゴ、ノスリ、チュウヒ、チョウゲンボウ、コチョウゲンボウなどの猛禽類、タゲリ、タカブシギ、タシギ、ハマシギ、セイタカシギなどのシギ類、そしてホシムクドリにも出会うことができました。この度はご参加いただきましてありがとうございました。

石田光史

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