【ツアー報告】大洗の海鳥と涸沼の猛禽類 2025年1月7日
(写真:ハイイロチュウヒ 撮影:坂東俊輝様)
平成27年にラムサール条約登録湿地となった茨城県の涸沼と海鳥たちが楽しめる大洗海岸をセットにした毎冬恒例の日帰りバスツアー。ここまでずっと涸沼の主役であったオオワシが残念ながら数年前から渡来しなくなってしまい、入れ替わるように白黒のコントラストが美しい大陸型チュウヒが越冬するようになったのですが、この個体も飛来しなくなってしまい大きな目玉がなくなってしまいました。ただ、このツアーは畑地から海までさまざまな環境をめぐることから、数ある日帰りバスツアーの中でも毎回観察種数が多くバリエーションが豊かなことは特色と言えるでしょう。そしてこの冬は昨年に引き続いてハイイロチュウヒのオスが渡来しているとのことから、今回は最後にハイイロチュウヒを狙う行程にしてみました。畑地、湖沼、海岸と風が吹くと寒さが厳しい探鳥地ばかりのため天候が気がかりでしたが、今回は薄曇りの時間帯もありながら、風は吹かず穏やかな陽気になるとの予報が出てくれました。
7日、早朝の東京駅前は昨夜の雨はすでに止んでいたものの、やや雲が多い朝でした。ほぼ予定通りご集合が完了したことから東京駅前を08:30に出発してこの日はまず常磐自動車道を走って茨城県方面を目指しました。移動中のバス車内では今日の行動予定や見られそうな鳥の解説をしながら進め、途中にあるパーキングエリアで観察機材準備をしていただいてから再度出発し、まずは涸沼の西端にある畑地から探鳥をスタートしました。とりあえず全体的に見て回ると電線にコチョウゲンボウのメスがいたことからバスを降りて観察してみました。その後は土手に上がってみると電線にはチョウゲンボウ、そして電柱にはノスリが止まっていてのんびりとしていました。ヨシ原に目を移すとアオジ、オオジュリン、ベニマシコが見らえましたが数は少なく、枯れ木にはカワラヒワの群れと、そこに混じっている数羽のシメが見られ、この冬の少ない小鳥類をなんとか見ることができました。その後は涸沼が一望できる公園まで行き、堤防上から湖面を見てみましたが驚くほど鳥の姿がなく、わずかにハジロカイツブリ、カンムリカイツブリ、キンクロハジロ、カルガモが見られたのみでした。また公園内ではアカハラ、メジロは見られたものの、ツグミやシメの姿はありませんでした。時間もそろそろお昼になったことから大洗まで移動して各自昼食をとっていただき、午後からは大洗海岸をめぐりました。最初のポイントではやや雲が多くなっていて、予想以上に波が立っていましたが、間近に数羽のシノリガモが浮かんでいて、のんびりと羽繕いをしていました。またここにはかなりの数のヒドリガモが群れていましたが、この日はアメリカヒドリの姿はりませんでした。ほかにもミユビシギとハマシギの群れが堤防上を歩き回り、イソシギ、イソヒヨドリの姿も見られました。海岸沿いを歩くと、海上には3羽のアカエリカイツブリが見られ、岩礁にはウミウ、ヒメウが並んで止まっていて、たった1羽で岩礁に止まっている美しいシノリガモのオスも見られました。その後は来た道を戻りながら漁港に立ち寄ってみました。最初に立ち寄った河口では複数で浮いている美しいヨシガモが見られ、ほかにもセグロカモメ、ユリカモメが見られました。さらに戻って漁港に立ち寄ってみると、ここでもカモ類の数は少なかったですが、キンクロハジロ、スズガモが見られ、ユリカモメの群れ、ウミネコ、セグロカモメ、オオセグロカモメ、そして1羽で歩き回るシロチドリも見られました。そして夕方の時間に合わせて涸沼に戻りました。まずはここまで見ることができていないタゲリを探してやや遠回りしてみると、ちょうどうまい具合に1羽で歩き回っているタゲリがいたとから観察し、その後は堤防上に上がってみました。すると対岸からハイイロチュウヒのオスが低く接近してきて、我々の目の前をゆっくりと飛翔してくれ、その後は畑地に降りました。その後、再び飛びたったハイイロチュウヒは畑地をゆっくりと飛んだかと思うと、我々のほうに方向を変えて再び目に前を悠々と飛翔し、どこからともなく飛んできたコチョウゲンボウのメスがモビングをする様子も見ることができました。そしてこの日は美しい日没とともに探鳥を終えました。
主役不在かと思われた涸沼ですが、ハイイロチュウヒのオスの大乱舞で締めくくってくれました。ほかにもノスリ、ミサゴ、チョウゲンボウ、コチョウゲンボウといった猛禽類が見られ、畑地ではアオジ、オオジュリン、シメ、ベニマシコ、大洗ではシノリガモ、ウミアイサ、ヨシガモ、アカエリカイツブリ、クロガモ、イソヒヨドリ、ハマシギ、ミユビシギなどが見られ、この日は56種の野鳥たちに出会うことができました。この度はご参加いただきましてありがとうございました。
石田光史