【ツアー報告】日本最大のガンの越冬地 伊豆沼と蕪栗沼・化女沼 2024年12月21日~22日
四季を通して日本国内を旅していますが晩秋のこの時期に絶対に外すことができないのが今回訪れる宮城県の伊豆沼です。伊豆沼はもちろんガンたちの姿も見事なのですが、各所で見られる風景に懐かしさを感じてしまいます。ご存じの通り、この伊豆沼は日本最大のガン類の越冬地で、その総数は10万羽を超えています。伊豆沼の特長は日本で見られる5種類のガン類を一気に見られる可能性が高いことで、このツアーでもマガン、ヒシクイ、シジュウカラガン、カリガネ、ハクガンの5種を探すことを主な目的にしています。また、早朝に塒から飛び立って行く塒立ち風景、そして夕景の中、続々と塒に戻ってくるガンたちを観察する塒入り観察の大イベントも楽しみです。ただし、探鳥地のほとんどが狭い道のため、我々のツアーではマイクロバスを使用し15名様限定のこじんまりした形態にしています。これにより警戒心の強いガンに近づけるようになるだけでなく、広大な畑地の隅々まで探鳥可能になりました。早朝、夕方の探鳥では特に天候が重要なのですが、今回は両日ともに天気予報が芳しくなく、特に21日夜が雨、そして22日は午前中は晴れながら午後からは雪の予報が出る中での出発になってしまいました。
21日、この日の東京都内は早朝から穏やかな快晴でした。予定通り新幹線でくりこま高原駅に向かうと、到着地のくりこま高原は午後から天気が悪くなるとのことで、それを裏付けるかのように次第に雲が厚くなってきてしまいました。改札前でご参加のお客様と合流後は一旦、徒歩にてホテルに向かいましたが、早くも小雨が落ちてきてしまいました。まずはロビーをお借りして観察機材準備を行ってから探鳥に出発しました。伊豆沼、蕪栗沼の探鳥ポイントはどこも道が狭く、また駐車スペースも確保されていないことからこのツアーではマイクロバスを使い、かなり隅々まで探鳥ができるようにしていて、こういった方法でないと、それぞれのガンたちを探し出すには時間がかかり効率が悪いのです。この日は翌日が終日雨または雪の予報だったことから予定を変更して、徒歩探鳥しなくてはならないヒシクイのポイントにまず行ってみました。ここでは幸いにも空が一時的に明るくなる中、ヒシクイの群れが見られ、この日は周辺をマガンの群れが行ったり来たりしていました。湖面にはかなりの数のオナガガモの姿があり、ほかにもマガモ、ミコアイサ、カワアイサ、トモエガモが見られました。戻る途中では草むらで餌を探す3羽のベニマシコが見られ、ここにきてようやく数を増してきたツグミ、そしてモズ、ホオジロが見られました。その後は休憩を挟んでカリガネを探してみました。今年は個体数が多く、そのため過去のツアーではあっさりと群れを見つけることができましたが、この日は地上に降りているマガンの数がそもそも少なく、しばらく探してはみましたがカリガネの姿を捉えることができませんでした。ただ途中ではハシボソガラスとともに群れているかなりの数のミヤマガラスが見られました。少々時間があったことからもう一度、カリガネを探してみると群れでは見られませんでしたが、マガンの群れに混じっている単独個体をいくつか見つけることができ、最後は畑地を歩きながら採食するカリガネを、バスを降りてじっくりと観察することができました。その後は休憩を挟んで、ガンたちの塒入りを観察しました。この時間は残念ながらみるみる雲が厚くなってきてしまい、想定よりも早めに薄暗くなってしまいましたが、マガンたちは続々と塒に入ってきていました。またヘラサギやチュウヒが飛び回る様子が見られ、電線には美しいコチョウゲンボウのオスもやってきてくれました。結局、16:45まで探鳥しましたが、この日は驚くほどの無風状態で寒さをほとんど感じませんでした。
22日、この日は早朝に強風が吹いたとのことでしたが外に出ると風はなく、天気予報通りの快晴でした。早朝の時間はガンたちの塒立ちを観察に向かいました。天候が良くても東の空には雲が出てしまうことが多いのですが、この日は珍しく全く雲はなく、良い条件で日の出が見られそうでした。現地に到着するとガンたちは比較的近い位置に群れ、時間とともに遠くに着水していたガンたちが飛びたっては近くに降りたためその数が増していきました。そしてこの日は日の出時刻の06:50に合わせるかのように群れが一斉に飛び立ち、その声と轟音のような羽ばたき音の両方を同時に楽しむことができました。結果として一緒でガンたちが飛びたって行ったことから07:15にはホテルに戻ることができ、朝食後の08:15に再出発してまずは化女沼に立ち寄りました。公園内には数羽のカシラダカの姿があり、湖面のカモ類は少なかったものの、カルガモ、ヒドリガモ、ハシビロガモ、カンムリカイツブリなどが見られました。また草地では種子をついばむベニマシコのメスが見られ、その後はシジュウカラガンの群れを探すことにしました。ガンたちは基本的には日中は地上で採食行動をしていますが、種類によって群れている場所がやや異なるようで、シジュウカラガンに関しては伊豆沼周辺で日中に大きな群れを見ることはできないようです。現地では広大な畑地をめぐりながらシジュウカラガンを探してみましたが、この日は意外にもあっさりとシジュカラガンの群れに出会うことができ、まずはバスを降りて接近しながら観察、撮影しました。ただ観察中に雪が強まったためバスに乗って車内からの観察、撮影に切り替えました。ただ雪はさらに激しくなり、一時的にシジュウカラガンの姿が見えなくなるほどでした。観察後はトイレに寄り、その後は時間があったことから再びカリガネを探してみました。ただこの日もカリガネの姿はなかなか見つからず、30分ほど走り回ってようやく見つけることができました。まずはバス車内から慎重に観察し、その後はバスを降りて望遠鏡を使ってじっくり観察することができました。たまたま群れが小さかったことから意外に接近でき、額の白色部や嘴の色、アイリングといった特徴をしっかりと見ることができました。やや時間が押してしまいましたがその後は各自昼食をとっていただき、昼食後はハクガンを探してみることにしました。先月のツアーでは17羽のハクガンが見られたため、まずは先月、ハクガンが見られたエリアに行ってみましたが、なんと驚いたことにちょうど我々のバスの上空を通過するように50羽ほどのハクガンの群れが飛んできました。見ていると畑地に降りたためバスに乗ったままでまずは接近して車内から観察、撮影しました。先月の17羽でもかなりの驚きでしたが、この日は50羽ほどのハクガンが地面に降りていて、まさに雪の白色のような美しい姿をじっくりと見せてくれました。しばらくすると群れは付近にいたマガンにつられるように飛んでいき、この頃からは再び雪が強まってきてしまいました。そのため周辺を探してみましたが姿を見つけることはできず、一旦戻って積雪の中でマガンやオオハクチョウを観察し、夕方に合わせて塒入りしてくるであろう場所で待ってみることにしました。この頃には雪の勢いはさらに増してきていて、周囲は一面の銀世界で視界も良くなかったですが、マガンたちは続々と湖面に帰ってきていて、そこには数羽のハクガンの姿もありました。そのため丁寧に見てみると数羽の群れで着水していたハクガンの中に1羽のアオハクガンの姿がありました。雪の勢いが強まる中ではありましたが、なんとかその姿を最後に見ることができ、良い締めくくりになりました。
今回は晴れ、曇り、雪とめまぐるしく変わる天候の中での2日間でした。夕方の塒入り観察が良い条件にならず残念でしたが、目的だったガン類5種に出会うことができ、カリガネは数こそ少なかったですが良い条件、良い距離感で見ることができ、シジュウカラガンは雪が舞う中で数百羽の群れを堪能できました。そしてハクガンは50羽ほどの群れが見られ、最後の最後にはアオハクガンに出会う幸運もありました。ただなんといっても一瞬にして数千羽のマガンたちが轟音とともに飛び立って行った早朝の塒立ちシーンは最高の瞬間で強烈な印象を残してくれました。
さて2024年の私の担当ツアーはこれをもって終了いたしました。今年もさまざまな場所でさまざまな野鳥と出会うことがき、皆様と感動の共有を果たすことができました。本当にありがとうございました。来年以降も鳥の観察会をよろしくお願いたします。
石田光史