【ツアー報告】渡良瀬遊水池と城沼・多々良沼 2024年12月3日
(写真:ハイイロチュウヒ 撮影:東海林治様)
渡良瀬遊水地を中心に、周辺の湖沼をめぐる冬恒例の日帰りバスツアーです。ここ数年は狙いの種を絞って探鳥する「会いたいシリーズ」が増えましたが、このツアーのように特に狙いの種を決めていない場合は、各探鳥地をまんべんなくめぐるため観察種が多く、いろいろな野鳥が見たいと考えている初心者の方には特におすすめです。またこのツアーは東京から比較的近い場所に探鳥地あること、また探鳥地間がわずかな距離であることから集合時間を08:30とやや遅めにしても十分にお楽しみいただけます。多々良沼、城沼はハクチョウ類の越冬地として知られ、カモ類も多いことから、それらを狙う猛禽類が多く、メイン探鳥地の渡良瀬遊水地は広大なヨシ原が広がる中で、チュウヒ、ハイイロチュウヒ、ノスリ、ミサゴ、チョウゲンボウなどの猛禽類、さらにはツグミ、ジョウビタキ、カシラダカ、シメ、ベニマシコといった冬鳥にも期待できます。ただ、冬の渡良瀬遊水地周辺は大変に風が強い探鳥地としても知られていて、特に夕方は寒さが厳しくなる傾向があります。ただこの日は12月とは思えない快晴無風の予報が出ていて、驚いたことに最高気温は18℃。この時期とは思えない小春日和になるとの予報が出ていました。
3日、早朝からほぼ快晴の東京駅前に予定通りご集合いたいたことから、ひとまず出発して東北自動車道を走りました。バス車内では数日前の下見時の内容、そしてこの日に期待できる種の解説を行いながら進み、途中、サービスエリアでの休憩を含めても2時間ほどで最初の探鳥地に到着することができ、まずは観察機材の準備を行っていただきました。駐車場から湖畔に向かうと、カワセミが飛び、かなりの数のオオハクチョウの姿がありました。湖面はほぼカンムリカイツブリに占領されているかのようで、傍らにはヒドリガモ、オナガガモ、そしてたった1羽ながらセグロカモメの姿がありました。来た道を戻ると3羽のコハクチョウが飛び、ヨシ原ではカワセミが再び見られ、モズ、ジョウビタキのメス、そして飛びながら餌を探すミサゴの姿がありました。さらに歩くとヨシ原にはスズメが群れ、メジロ、シジュウカラが飛び回っていました。その後は少々移動してオナガガモの群れ、モズを見てから次の湖沼まで移動して探鳥しました。ここはハスが茂ってしまい、水面は一部しか見られませんでしたが、かなりの数のオナガガモの姿があり、オオバンの群れが草地を歩きながら餌を食べていました。ほかにもハスに隠れるようにバン、マガモ、ホシハジロが見られ、ミコアイサのメスの姿もありました。そして時間がお昼を過ぎたことから一旦、付近にある公園で昼食の時間をとり、その前後に下見時にケリが見られた場所を訪れてみましたが、この日は残念ながらその姿はありませんでした。昼食後は渡良瀬遊水池に向いましたが、途中にある畑地を走りながらミヤマガラスを探してみました。この日はそれほど大きな群れではなかったものの電線に止まっている20羽ほどの群れが見られ、額や嘴の特徴もしっかりと見ることができました。その後はいよいよ渡良瀬遊水地に移動することにしました。まずはヨシ原内にある池に向かうことにしました。バスを降りると枯れ木に止まっているノスリが見られ、最初に池ではミコアイサのメスが7羽で群れていて驚きました。さらに歩くと美しいヨシガモが群れていて、付近には頻繁に潜水を繰り返すメジロガモの姿があり、じっくりと時間をとって観察することができました。観察後に戻る途中ではエナガの群れが見られ、その後は谷中湖に行ってみました。ここでも湖面には数多くのカンムリカイツブリが見られ、遊歩道沿いではヒヨドリ、そしてシロハラの姿がありました。さらに歩いて湖面が一望できる場所まで行くと、カモ類の少なさに驚いたものの、ミコアイサだけはかなりの数が見られ、真っ白いオスも見られました。また20羽ほどで群れているトモエガモも見られたもののコウノトリの姿がなかったことから、もう一カ所行ってみることにすると、移動中のバスの中から飛んでいくコウノトリが見られ驚きました。ここではいきなりヨシ原上を飛び回るハイイロチュウヒのオスの姿があり、思わぬ形でじっくり観察することができました。ただここでもコウノトリの姿はなく、水辺で佇むアオアシシギを見て、最後は堤防上からヨシ原を眺めてみました。昨年から残念ながら猛禽類の塒はかなり奥になってしまいましたが、枯れ木に止まるチュウヒやノスリが見られ、頭上を通過してヨシ原を飛ぶハイイロチュウヒのメスを見てこの日の探鳥を終えました。
渡良瀬遊水地は強風が吹き荒れることが多く、寒い探鳥地として知られていますが、この日に見た風景は木々がまだまだ青々としていたり紅葉が見られたりとまるで秋のようで、気温も高くフリースすら必要がありませんでした。冬鳥やカモ類が少ない印象ながら今年もメジロガモとの出会いがあり、オオハクチョウ、ヨシガモ、トモエガモ、ミコアイサ、カンムリカイツブリなどが水辺を彩り、チュウヒ、ハイイロチュウヒ、ノスリ、ミサゴなどの猛禽類、そしてミヤマガラス、コウノトリが見られ、この日は1日で計53種の野鳥たちに出会うことができました。この度はご参加いただきましてありがとうございました。
石田光史