【ツアー報告】日本最大のガンの越冬地 伊豆沼と蕪栗沼・化女沼 2024年11月30日~12月1日
四季を通して日本国内を旅していますが晩秋のこの時期に絶対に外すことができないのが今回訪れる宮城県の伊豆沼です。伊豆沼はもちろんガンたちの姿も見事なのですが、各所で見られる風景に懐かしさを感じてしまいます。ご存じの通り、この伊豆沼は日本最大のガン類の越冬地で、その総数は10万羽を超えています。伊豆沼の特長は日本で見られる5種類のガン類を一気に見られる可能性が高いことで、このツアーでもマガン、ヒシクイ、シジュウカラガン、カリガネ、ハクガンの5種を探すことを主な目的にしています。また、早朝に塒から飛び立って行く塒立ち風景、そして夕景の中、続々と塒に戻ってくるガンたちを観察する塒入り観察の大イベントも楽しみです。ただし、探鳥地のほとんどが狭い道のため、我々のツアーではマイクロバスを使用し15名様限定のこじんまりした形態にしています。これにより警戒心の強いガンに近づけるようになるだけでなく、広大な畑地の隅々まで探鳥可能になりました。早朝、夕方の探鳥では特に天候が重要なのですが、今回は前日から30日の朝にかけて天候が悪いものの、その後は回復して概ね天候が良い2日間になるだろうとの予報が出てくれました。
30日、東京都内は早朝から肌寒いながらもほぼ快晴で、太陽がまぶしく感じました。予定通り新幹線でくりこま高原駅に向かうと、意外にも福島駅付近では小雨が降り、どうなることかと思いましたがその後は青空が広がってきて、各所にまだまだ残る紅葉が美しく見えました。改札前でご参加のお客様と合流後は一旦、徒歩にてホテルに向かい、まずはロビーをお借りして観察機材準備を行ってから探鳥に出発しました。伊豆沼、蕪栗沼の探鳥ポイントはどこも道が狭く、また駐車スペースも確保されていないことからこのツアーではマイクロバスを使い、かなり隅々まで探鳥ができるようにしていて、こういった方法でないと、それぞれのガンたちを探し出すには時間がかかり効率が悪いのです。この日はまずマガンが群れている場所に向いました。前回はハクガンに出会うこともできましたがこの日は地上に群れているマガンの数が極端に少なく、ハクガンの姿もなかったですが、なぜかヒシクイが数多く休んでいたことから、意外な形でヒシクイをじっくり見ることができました。その後は別の畑地を見てから一気に移動し、休憩を挟んでカリガネを探してみました。毎回、なかなか見つからず苦労するのですが、この日は前回見られた場所とほぼ同じ場所に4羽のカリガネがいたことからバスを降りて観察しました。よく見ると付近にはさらに数羽のカリガネの姿があり、観察した後はバスに乗って接近してみました。するとまず2羽のカリガネを良い距離感で観察、撮影することができ、その後も十数羽で群れているカリガネ、さらに十数羽で群れているカリガネをじっくりと観察、撮影することができ、マイクロバスの利点を活かすことができました。その後は休憩を挟んで塒入り観察というのがいつものパターンですが、この日はハクガンが見られなかったことから予定変更して、この日は再びハクガンを探しつつ塒入り探鳥を行うことにしました。おそらく夕方になればハクガンたちは戻ってくるだろうと予想したのでした。まずは畑地を見てみることにしましたが、いきなり15羽ほどで群れているハクガンがいて驚きました。そのためバスを降りてじっくり観察することができ、最後は群れで飛んで塒に向う姿を見ることがでました。そしてその後は続々と塒に帰ってくるマガンの大群を見ながら16:30に探鳥を終えました。この日は風が冷たく、かなり寒さを感じる1日でした。
1日、この日は早朝の塒立ちを観察するため05:45にホテルを出発しました。天気予報は晴れとのことで外に出ると星が輝いていて良い日の出が望めそうな感じでした。現地に到着すると、ちょうど太陽が出てくる方向は雲が切れていましたが、その後は次第に雲が厚くなってきてしまい、結果的には日の出時刻からかなり遅れて日の出を見ることになってしまいました。ガンたちは一気に飛び立って見事な光景を見せてはくれましたが、残念ながら少々タイミングを逸する形になり、日の出と同時に見ることはできませんでした。観察後は一旦ホテルに戻り、朝食をいただいてから再度出発しました。この日は残念ながら草刈りのため、林の中には入れませんでしたが、湖面には多数のハシビロガモが見られ、ほかにもヒドリガモ、カルガモ、コガモ、カンムリカイツブリ、オオバンなどが見られ、この日はカワアイサ、ミコアイサの姿もありました。また草地では真っ赤なベニマシコが姿を見せ、ホオジロも見られました。その後はシジュウカラガンの群れを探すことにしました。ガンたちは基本的には日中は地上で採食行動をしていますが、種類によって群れている場所がやや異なるようで、シジュウカラガンに関しては伊豆沼周辺で日中に大きな群れを見ることはできないようです。現地では広大な畑地をめぐりながらシジュウカラガンを探してみましたが、この日は意外にもあっさりとシジュカラガンの群れに出会うことができ、マガンに混じる数百羽のシジュウカラガンをまずはバスを降りて接近しながら観察し、その後はバスに乗ってゆっくり接近しながら撮影することができました。そしてここではコハクチョウの群れや、ハシブトガラスに追われているチョウゲンボウも見ることもできました。観察後はトイレに寄り、その後は蕪栗沼に向って走り、12:0からは各自昼食の時間としました。昼食後はヒシクイのポイントに向かって歩くことにしました。この時間はヨシ原のヨシが大きく風になびくほど風が吹いていましたが、その風に乗るようにチュウヒが飛び、数羽のオオハクチョウが飛びたっていました。ポイントに着くとこの日はヘラサギが大きく嘴を左右に動かす独特の動作をしながら餌を探し、間近にはかなりの数のヒシクイが群れていました。またよく見るとヒシクイの間に隠れるように2羽のオオハシシギが佇んでいました。ただこの時間はとにかく風が強く、飛んできたマガンやヒシクイが風にあおられるように飛び、チュウヒも強風を喜んでいるかのように飛んでいました。そして最後は数は少なかったですが、オナガガモ、マガモ、ミコアイサといったカモ類を見てからバスに戻り、その後は休憩を取りました。ただ少々時間があったことから再度カリガネを探してみることにし、この日は前日とは異なる場所に群れている数羽のカリガネをバス車内から観察、撮影してから、この日は蕪栗沼で塒入りを観察することにしました。この時間も少々風があったことから寒いだろうと予想し、着るものを整えてから堤防に上がりました。すると意外にもこの日はガンたちの帰りが遅く、湖面にガンたちの姿はなかったものの、付近の畑地に続々とマガンが降り、よく見るとその中には数羽のシジュウカラガンの姿もありました。また枯れ木にはノスリが止まり、どこからともなく飛んできた美しいコチョウゲンボウのオスが電線に止まりました。そのため少しずつ接近して観察、撮影することができ、青灰色と橙色の姿をじっくり見ることができました。そして複数のチュウヒが風に乗って舞っている中、いつもの塒入りの光景が見られはじめ、遠くの稜線に線を描いたかのようにズラリと並んで飛んでくるマガン、シジュウカラガンが見られ、この日は風を避ける意味なのか、かなり低い位置を飛んでくる様子が見られました。そしてこの日も周囲が薄暗くなってきた16:45に探鳥を終えました。
今回は早朝、夕方に雲が多くなってしまいましたが、幸いなことに2日間を通してほぼ青空が見える中で探鳥することができました。今回は数を増したハクガンに初日のうちに出会うことができ、最終的にはマガン、ヒシクイ、シジュウカラガン、カリガネ、ハクガンの5種に出会うことができました。また今期はカリガネの数が多いようで、今回も良い距離感、良い光線状態で見られたことも幸いで、地上に群れているシジュウカラガンも無事に見られました。このツアーの目玉である早朝の塒立ちと夕方の塒入りは残念ながら空に雲がかかってしまい、最高の状態とはいきませんでしたが、圧倒されるようなガンたちの大群の動き、そして轟音のような羽音に圧倒されました。この度はご参加いただきましてありがとうございました。
石田光史