【ツアー報告】秋の佐渡島 朱鷺色のトキに会いたい! 2024年11月16日~17日

(写真:トキ 撮影:高木信様)

学名、ニッポニア・ニッポン。トキは日本を象徴する鳥とも呼ばれ、バードウォッチャーなら誰でも一度は見てみたい鳥でしょう。日本では20世紀初頭までに個体群が急速に減少し、環境省レッドリストでは野性絶滅の状態にまでなってしまいました。ただその後の保護活動により、2000年代以降は個体数が回復し、2022年8月現在、野生下で生息するトキは推定569羽、うち放鳥個体は151羽、野生生まれは418羽と発表がありました。この貴重な鳥を観察するツアーは絶対に不可欠と思っていましたが、やはり現地のトキ観察のルールを熟知した現地在住の方の同行がツアーには欠かせないと判断していました。そしてようやく現地案内を引き受けてくださる方と知り合うことができ、おかげさまで佐渡島ツアーがこの秋も2回催行できることになりました。ただ、現地の探鳥地の状況、またバス車内からの観察、撮影であることを考慮し、小型バス利用、撮影機材置き場も確保したいことから、お一人様2席利用で10名様限定という極めて小さなツアーとしました。さらにこの時期は日没が早いことから、往路は高速艇を使って早めに佐渡島に到着できるようにして初日の観察、撮影時間を長めに確保できるようにしました。

16日、今回は前回とは異なり、ちょうど天気や気候の変化するタイミングで佐渡島を訪れることになりました。そのためこの日は晴天ながら夜からは天気が変わり、2日目は残念ながら雨の予報が出ていました。早朝の東京駅周辺は意外にもやや曇ってはいたものの空は次第に明るくなってきていました。ひとまず新幹線で新潟駅をめざすと、時間とともに空は晴れ間が増え、到着した新潟駅は薄雲があったものの幸い晴れていました。新潟駅からは佐渡汽船ターミナルまで移動し、当初はフェリーでゆっくりと佐渡島に向かってはいましたが、この時期は日没が早く、初日の探鳥時間が短時間になってしまうことから11:30発の高速艇に乗り佐渡島に12:37に到着するようにしました。幸い海上も穏やかで高速艇は順調に進み、到着した佐渡島は快晴無風のせいか、やや暑さを感じるほどでした。早速、現地で案内をしてくださる方と合流し、機材を整えてからバスに乗車し出発しました。このツアーでは朱鷺色のトキの飛翔、樹木に止まる姿、地上で餌を探す姿、群れる姿などできる限りさまざまなシーンを観察、撮影できるようにしていますが、この日はまず両津フェリーターミナルから南下するルートを通りながらトキを探してみました。ただ期待したエリアでは残念ながらトキに出会うことができず、そのためさらに南下しました。すると周辺の水田にはポツポツの単独で餌を探しているトキの姿が見られ、ところどころでバスを止めて観察、撮影の時間を取りました。また遠くの枯れ木には4羽のトキが止まっていたことから、やや接近して観察、撮影してみました。その後は13羽の群れで地上採食している、比較的大きなトキの群れがいたことからバスを止めて観察、撮影していると、群れが一斉に飛び立って見事な姿を見せてくれました。観察後は時間が経ったことから休憩の時間をとり、その後は再び北上してみましたが、このエリアではトキに出会うことができず、夕暮れ時になってきたことから、トキが塒にしている場所に行ってみました。ただこの日はまだまだ枯れ木に止まっているトキはおらず、針葉樹には数羽のトキがやってきていました。ただ動きがないのと付近の水田にトキが群れていたことから一旦、移動して行ってみました。するとここでは数羽で餌を捕っているトキの姿があり、これらを観察、撮影してから再び塒に行ってみました。日没まで20分ほどでしたが、各所からトキが飛んできて針葉樹に止まり、最後はさらに距離をつめて観察してみました。薄暗い時間ながらトキは塒周辺を飛び回り、最後はトビに驚いたのか、一斉に飛ぶトキの姿を見てこの日の探鳥を終えました。そして今回も地元の食材をふんだんに使った豪華な夕食をいただくことができました。

17日、この日は09:00頃から雨予報だったことから、それほど期待していなかったのですが、意外にも空は雲が少なく、一部に晴れ間も見えていました。予定通り早朝に出発してまずは昨日、夕方に訪れた場所に向かい、塒から出てくるトキを見ることにしました。深夜に雨が降ったようで路面は濡れていましたが、この時間は幸いにも雨はまだ落ちてきていませんでした。曇りがちだったこともあり、なかなか周囲が明るくなってきませんでしたが06:30を過ぎたあたりからはトキが塒から飛び立ち始め、美しい朱鷺色の姿を見ることができました。その後はもう一カ所の止まり木に行くと、ここには2羽のトキが止まっていたことから間近に観察することができ、最後は飛び立っていく姿も見ることができました。さらに周囲の水田をめぐると点々とトキの姿があり、水を張った水田にはコハクチョウが群れ、その中に混じるオオハクチョウ、そしてたった1羽ながらマガンの姿もありました。すると真っ黒い雲が上空を覆い、一気に降り出した雨に追われるように探鳥を終了して、宿に戻って朝食をいただくことにしました。朝食後の天気に関してはほとんど期待していませんでしたが、09:00に外に出ると意外にも青空が広がっていて陽射しもありました。ここから残りの2時間強はここまでトキがよく見られていた場所に向かうことにしました。途中、水田には点々とトキの姿はありましたが、バスが安全に止められないためスルーし、さらに進むと早朝にコハクチョウの群れが見られた場所にまだコハクチョウがいたため接近すると、周囲には数羽のトキが見られ、マガンは7羽になっていました。ここからは水田で餌を探しているトキを観察、撮影しながら進み、地上採食する姿や飛び立つ姿、また飛翔する姿を見ることができました。そしてとまる場所まで来ると10羽ほどのトキが群れている場所があったことから時間をかけて観察、撮影をすることにしました。群れは畔上に並んだり、畔沿いに歩きながら採食したりと、意外なほどじっくり姿を見せてくれ、どんどん接近してきてくれました。ただここで再び黒い雲がやってきて雨が降りはじめてしまい、雨に耐えているようなトキの姿を見ることもできました。そして最後はやや時間があったことからトキが塒にしている場所に立ち寄ってから両津港近くにある食堂で昼食をいただきました。

私の中で長年の懸案だった佐渡島へのツアーがようやく定番化し、安定的に催行できるようになりました。これもひとえに佐渡島在住で現地でのトキ観察のルールに精通した現地ガイドさん、そしてトキの生息場所を熟知したドライバーさんに巡り会えたことのおかげと感謝しております。実際に佐渡島をめぐってみるとトキが意外なほど狭い範囲の中に生息していること、個体数が増えていることが実感できました。またバス車内からの観察に限定されていることからトキの観察、撮影に集中した2日間という短期集中型のツアーにしたことも結果的には正解で、今回のように雨が降っていても対応できる点も良いと思いました。この度はご参加いただきましてありがとうございました。また現地でさまざまお世話になった方々にも重ねて感謝申し上げます。

石田光史

トキ 撮影:秦順一様

 

コハクチョウ 撮影:正木彰様

 

トキ 撮影:高木信様

 

トキ 撮影:秦順一様

 

マガン 撮影:正木彰様

 

トキ 撮影:高木信様

 

トキ 撮影:正木彰様

 

トキ 撮影:高木信様

 

トキ 撮影:正木彰様

 

トキ 撮影:高木信様

 

トキ 撮影:高木信様

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