【ツアー報告】サンカノゴイに会いたい!初夏の印旛沼 2015年6月4日(木)
いよいよ6月に入り、森の小鳥たちの繁殖活動も一段落。小鳥たちのさえずりに代わってセミの声が煩くなってきます。ただ、湿原の鳥たちは待ってましたと言わんばかりに歌い始めている時期です。今回は一日中ほぼ同じような環境を巡るため観察できる鳥の種類は少ないですが、貴重な種が多いためそれらをじっくりと観察することを目的にしています。アシ原という環境に依存して生活しているサンカノゴイを目玉に、ヨシゴイ、オオセッカ、コジュリンなどを観察します。
当日は梅雨入り前の貴重な晴れ日となり、早朝の東京駅前は薄雲はあるものの天候の心配はまずない状況で、予定通りに08:00に出発し、途中休憩を挟みましたが現地には1時間半ほどで到着しました。現地ではまず観察機材の準備に取り掛かりましたが、早くも水田をのっしのっしと歩くサンカノゴイの姿がありました。見ていると時々首を伸ばしたりしていましたが、思いのほか稲の生育が良く、その姿を見失うこともありました。ただ、最終的には移動のために農道の上を横断するように歩いてくれたため、幸運にもその独特のその姿を全身見ることができました。また飛翔するサンカノゴイの姿を僅かな時間ながら見ることもできました。また、ここはオオヨシキリの個体数が多く、その賑やかなさえずりは途切れることはなく、フワフワと飛翔するヨシゴイの姿も何度も見ることができました。
2時間弱観察した後は一旦トイレに立ち寄り、利根川周辺での観察のため移動することにしました。ポイントに向かう途中にある道の駅で各自昼食をとっていただき、その後観察を開始しました。たまたま草刈をしていたためちょっと心配しましたが草原の鳥たちの声はほとんど途切れることなく耳に入ってきていました。こちらでもオオヨシキリの姿が目立ちましたが、それ以上にオオセッカの声が耳に残り、見ていると複数の個体が「さえずり飛翔」と呼ばれる独特の行動を繰り返していました。中には間近になわばりを持っている個体もいて、望遠鏡を使ってじっくりと観察することもできました。喉を震わせるようにして行うさえずりは何度見ても印象的です。ほかにもホオジロに似たさえずりのコジュリンは頭が真っ黒になっていて見つけやすく、ここ数年、個体数が減少傾向だったコヨシキリの姿も楽しむことができました。そして水田ではアオサギ、ダイサギ、チュウサギ、コサギが勢ぞろいで、越夏中と思われるチュウヒの姿も見ることができました。気が付くと日焼けするほどの晴天で暑くなっていて、汗ばむような中での探鳥でした。その後は一旦トイレ休憩をとり、再度印旛沼に向かいました。
夕方は午前中とは違ってアシ原側が順光になるため、アシ原上を飛翔するヨシゴイが見やすくなります。到着するとまたまたサンカノゴイが水田を徘徊していました。観察していると全く別方向からサンカノゴイが飛来して、アシ原上を悠々と飛翔し、我々の目の前に降り立ちました。そしてこの個体とは別個体と思われる1羽がアシ原を飛び出して水田に舞い降りました。するとすでに水田にいた1羽が急に早足になり、農道を越えてその個体の近くまで歩いて行き2羽で寄り添いながら採食する行動も見ることができました。水田から2羽の首が伸びてくる様子はなんともユーモラスで少々時間をオーバーして観察を続けました。また夕方の時間もヨシゴイは頻繁に飛翔してくれ、フワフワとした飛翔を楽しむことができました。
今回は日中は汗ばむような快晴でしたが、印旛沼ではやや風があったおかげで涼しい中での探鳥ができました。お目当てだったサンカノゴイは何回も現れてくれ、さまざまな表情を見せてくれました。ほかにもヨシゴイ、コジュリン、オオセッカ、コヨシキリ、オオヨシキリ、セッカ、そして越夏中のチュウヒも見られ、アシ原という環境に依存して生活している貴重な種をたっぷりと見ることができました。皆様お疲れ様でした。
石田 光史