【ツアー報告】秋の佐渡島 朱鷺色のトキに会いたい! 2024年11月9日~10日
(写真:トキ 撮影:天野昌弘様)
学名、ニッポニア・ニッポン。トキは日本を象徴する鳥とも呼ばれ、バードウォッチャーなら誰でも一度は見てみたい鳥でしょう。日本では20世紀初頭までに個体群が急速に減少し、環境省レッドリストでは野性絶滅の状態にまでなってしまいました。ただその後の保護活動により、2000年代以降は個体数が回復し、2022年8月現在、野生下で生息するトキは推定569羽、うち放鳥個体は151羽、野生生まれは418羽と発表がありました。この貴重な鳥を観察するツアーは絶対に不可欠と思ってはいましたがなかなか前に進まず、その後もさまざま思いを巡らせつつ現地の状況を見極めてきましたが、結果としてやはり現地のトキ観察のルールを熟知した現地在住の方の同行がツアーにはどうしても欠かせないと判断しました。そしてようやく現地案内を引き受けてくださる方と知り合うことができ、長らく思いを巡らせていた佐渡島ツアーがおかげさまでこの秋も2回催行できることになりました。ただ、現地の探鳥地の状況、またバス車内からの観察、撮影であることを考慮し、小型バス利用、撮影機材置き場も確保したいことから、お一人様2席利用で10名様限定という極めて小さなツアーとしました。さらにこの時期は日没が早いことから、往路は高速艇を使って早めに佐渡島に到着できるようにして初日の観察、撮影時間を長めに確保できるようにしました。
9日、今回はちょうど冷え込んだタイミングで佐渡島を訪れることになりましたが、天気予報は両日晴れとのことで、風もなく穏やかとのことでした。東京駅周辺も朝からまぶしいくらいの快晴となる中、ひとまず新幹線で新潟駅をめざしました。途中、到着した新潟駅はやや雲がかかってはいたものの、一部に青空も見え、新潟駅からは佐渡汽船ターミナルまで移動し、当初はフェリーでゆっくりと佐渡島に向かってはいましたが、この時期は日没が早く、初日の探鳥時間が短時間になってしまうことから、今回は高速艇に乗り佐渡島に早めに到着するようにしました。幸い海上も穏やかで高速艇は順調に進み、到着した佐渡島は少々肌寒さを感じるほどでした。早速、現地で案内をしてくださるガイドさんと合流し、機材を整えてからバスに乗車し出発しました。このツアーでは朱鷺色のトキの飛翔、樹木に止まる姿、地上で餌を探す姿、群れる姿などできる限りさまざまなシーンを観察、撮影できるようにしていますが、この日はまず北側に水田に行ってみました。ただここでは残念ながらトキの姿がなかったことから南下し、トキとの遭遇率が高い場所に向いました。ただこの周辺の水田でもトキの姿がなかったことから、さらに南下しました。する途中にあった水田で6羽で群れているトキに出会うことができ、予想外に時間がかかってしまったものの美しいトキ色を堪能することができました。その後は毎回、トキがよく止まる枯れ木のある場所にいってみました。すると枯れ木にトキの姿はなかったものの、単独で採食しているトキに出会うことができ、警戒心が薄いのか、どんどん近寄ってきてくれ、水たまりで小魚を捕食する姿を見ることができました。その後は群れ飛ぶトキがいたことから行ってみると、群れは次々に地上に降り、8羽の群れで採食しているトキを見ることができ、ここでは飛翔する姿も見ることができました。その後は休憩の時間をとり、夕方はトキが塒にしている場所に行ってみました。ここではすでにやってきて枯れ木に止まっていた2羽を見ることができ、ちょうど3羽のトキが飛んできたことから羽の裏側の朱鷺色を見ることもできました。動きがなくなったことから一旦、別の枯れ木に止まっているトキを見てから再び戻ると、止まっていたトキは飛び去ってしまっていましたが、夕暮れに合わせるように次々にトキが飛来し、結果的には20羽前後のトキが上空を旋回しながら林に入っていくところを見てこの日の探鳥を終えました。そして今回も地元の食材をふんだんに使った豪華な夕食をいただくことができました。
10日、この日も幸い晴天予報で、まだまだ暗いうちに外に出ると全く雲がかかっていない空が広がっていました。朝食前のこの時間はまず、昨日、夕方に訪れた場所に向かいました。到着すると枯れ木にはすでに2羽のトキが止まり、付近の針葉樹の中にも複数のトキの姿が見えました。日の出が迫ってくると複数のトキが飛びたち、さらにはハシブトガラスに驚いたのか、次々にトキが飛び出してきて、一時的に乱舞状態になってから餌場に向っていきました。トキの姿がなくなったことから移動し、水田で餌を採っているトキを見てからさらに北上して数羽のトキに出会うことができ、宿に戻る途中の水田でも数羽で群れているトキが見られ、探鳥後は宿に戻って朝食をいただきました。朝食後はまず宿から西に進路をとってみました。この日は前日とは雰囲気が異なり、各水田には点々とトキの姿がありました。すると途中では30羽はいようかという、かなり大きなトキの群れに出会うことができ、水田に群れている様子は過去最多といえるレベルでした。群れはたまたま通りかかった軽トラックに驚いて飛びたち、幸いなことにやや近い位置に降りてくれました。ただここも道から近すぎるために飛び立ってしまい、どうなることかと見ていると、たまたま紅葉した山々を背景に飛んでくれたことから今回のツアーのハイライトともいえるシーンに出会うことができました。その後はちょうど水田が湿地状になっている場所で休んでいるコハクチョウを見に行きました。ここには30羽ほどのコハクチョウが群れ、中に混じる数羽のオオハクチョウ、そして3羽のヒシクイも見られました。また周辺の水田には10羽ほどのトキも佇んでいて、やや逆光の中、美しい朱鷺色の姿を見ることができました。その後は時間が押してきたことから北上し、途中にある水田でも点在するトキを見て探鳥を終了しました。この日は前日に比べるとトキとの出会いが多く、この時期らしく群れているトキの姿が多く見られたことが印象的でした。探鳥後は食堂で昼食をいただき、そして今回お世話になったガイドさんからご挨拶をいただきながら両津港に向かいました。
私の中で長年の懸案だった佐渡島へのツアーがようやく定番化し、安定的に催行できるようになりました。これもひとえに佐渡島在住で現地でのトキ観察のルールに精通した現地ガイドさん、そしてトキの生息場所を熟知したドライバーさんに巡り会えたことのおかげと感謝しております。実際に佐渡島をめぐってみるとトキが意外なほど狭い範囲の中に生息していること、個体数が増えていることが実感できました。またバス車内からの観察に限定されていることからトキの観察、撮影に集中した2日間という短期集中型のツアーにしたことも結果的には正解でした。そして今回はこの時期としては珍しいくらいの穏やかな晴天の中で過ごすことができたことも幸いでした。この度はご参加いただきましてありがとございました。また現地でさまざまお世話になった方々にも重ねて感謝申し上げます。
石田光史