【ツアー報告】晩秋の十勝平野 ハクガンの群れとナキウサギ 2024年10月13日~15日

そもそも日本では定期越冬していなかったハクガンですが、十数年前に数羽の群れが新潟県や秋田県で越冬するようになりました。数羽であっても当時は話題になり、実際に新潟県にてツアーを企画していました。その数羽の群れがその後、みるみる増え2019年にはついに1000羽を超えるまでに増えました。今回は大群になったハクガンたちの中継地として知られている十勝平野を訪れるとともに、可愛らしいナキウサギとの出会い、さらには北海道らしい小鳥類との出会いも楽しみな晩秋の北海道をめぐるツアーです。なるべくムダな移動時間をなくしてコンパクトなツアーにするため往復共に帯広空港を利用し、宿泊も温泉宿に連泊することで2日目、3日目の行動予定をハクガン、ナキウサギの観察状況に応じて行動できるようになり、これによりハクガン、ナキウサギとの出会いの確率をより高くできるようにすることができました。またガン類は警戒心が強いため、バス車内からの観察、撮影も考慮して参加人数を減らし、バス席をお一人様2席利用にして観察機材置き場も確保しました。渡りの中継地での観察であることから、ハクガンたちが渡ってくるタイミングを計ることが重要になるわけですが、ここ数年はハクガンの渡来時期が早まっている印象があり、そのため今回は例年よりもツアー時期をより早く設定してみました。現地からの情報では、今年は渡来時期が予想をさらに上回る早さだったとのことでやや心配はありましたが、ほぼハクガンの最盛期に時期を合わせることができました。秋は天気が不安定な時期ではありますが、今回は幸いにも3日間共に大きな天気の崩れはないとの予報が出てくれました。

13日、この日の東京は早朝から暑さを感じるほどのからっとした秋晴れ。羽田空港に予定通りご集合していただいた後は資料配布、連絡事項をお伝えしてから搭乗し、少々遅れてとかち帯広空港に向かいました。珍しいくらいによく晴れているとかち帯広空港到着後は、空港内にて観察機材の準備をしていただいてからバスにて出発し、まずはハクガンを探しに向かいました。例年に比べて暑さを感じたものの車窓から外を見るとこれぞ北海道といった感じの広大な田園風景に黄金色のカラマツの紅葉が見事に映えていて、本州ではなかなか感じ取ることができなかった秋を感じることができました。現地までは1時間ほどあることから十勝平野でのガン類の観察ポイントや識別ポイント、さらには観察に当たっての注意事項などを解説しながら進み、まずは広大な平野を走りながらハクガンの群れを探してみました。ただこの日はタンチョウの姿は各所で見られたもののガン類の姿がないまま、ひたすら広大な農地の中の道を進みました。ただ、ある場所では畑地いっぱい群れているシジュウカラガン、ヒシクイの姿があり、遠くの畑地に降りているハクガンの姿が見えました。そのためある程度接近したところでバスを降りて徒歩にて探鳥してみました。ここには数百羽のハクガンが降りていて、周囲にはかなりの数のシジュウカラガンとヒシクイ、そして少数ながらマガンの姿もありました。群れは比較的そわそわした感じで、よく見ると付近にはもう一つの群れが降りていて、行ったり来たりしていました。観察していると遠くからさらに数百羽はいようかというハクガンの群れが飛来し、一気に個体数が増えました。ただ群れは轟音とともに一気に飛び立ち、大乱舞状態になりました。驚いて周囲を見るとオジロワシが悠然と飛んでいて、どうやらオジロワシに驚いて飛びたったようでした。ハクガンの群れが分散してしまったことからやや場所を変えると、ここではさらに数を増したハクガンの群れが地上採食していて、周辺には同様にかなりの数のシジュウカラガン、ヒシクイ、そしてオオハクチョウも見られ、少ないながらもマガンも見られました。この時間帯はもう夕暮れ時だったことから見事な日没も見られ、肌寒くなってきた17:00に探鳥を終えました。結果的にはハクガンの大群に出会うことはできましたが、例年であれば数多く見られる幼鳥個体がほぼ見られない点が少々気になりました。

14日、この日も早朝から快晴の中、見事な日の出に合わせてホテル周辺で徒歩探鳥をしました。周辺の林にはヒヨドリが群れ、朝からかなり賑やかでした。さらに歩くとシラカバの木にハシブトガラ、シジュウカラが群れ、おなじみのエゾリスが針葉樹を揺らしていました。さらに歩くとここでもヒヨドリの群れが木の実に集まっていて、1羽ながらアカハラの姿も見られました。林の中からはホオジロ類の地鳴きが聞こえるものの姿を見ることができず、その後も群れるヒヨドリ、そしてメジロの姿が見られたのみでした。その後は来た道を戻ると、再びエゾリスに出会い、周辺ではハシブトガラ、ヒガラ、シジュウカラも見られました。さらには針葉樹のてっぺんに止まるカワラヒワを見てからホテルに戻りました。ただここで針葉樹に止まるシメが見られたため接近して観察していると、アカゲラがやってきてくれ、観察後には北海道では珍しいジョウビタキのオスが木の実をついばんでいました。探鳥後は一旦、朝食をいただき、再出発後はナキウサギを探しに向かいました。この日の天気予報は晴れで、車窓からは驚くような雲一つない青空が見え、そこに美しい紅葉が相まって見事な景色が広がっていました。途中、休憩に立ち寄った場所でも美しい紅葉と真っ赤に実ったナナカマドが鮮やかで、遠くに見える然別の山々も紅葉で色づいていました。到着後は再度トイレに立ち寄る時間を取ったほか、観察機材や防寒装備を整えていただき、それからナキウサギの観察ポイントに移動しました。到着後は1時間弱待ってみましたが、全く気配がなかったことから場所を変えてみることにしました。ただここでもこれといった気配無く、同様に1時間ほどが経過してしまいました。ただ待っている間にはナナカマドの実を食べているシマリス、鳴きながら飛んでいくミヤマカケスが見られました。そしてようやく12:00を過ぎたあたりでナキウサギの声が聞こえ、とある場所にヤマをかけてみていると、ナキウサギがすっと岩に上がったため、ようやく観察することができました。一旦、姿を消してしまいましたが、再びヤマを張って見ていると、望遠鏡を立てていた方向の倒木にナキウサギがすっと上がり、今度はのんびりとしてくれたことから望遠鏡を使ってじっくりと観察することができました。そして帰り間際にもわずかながらナキウサギの姿を見ることができたため一旦下山することにしました。下山した時にはたまたまシマエナガの群れが頭上を通過していく様子を見ることもできました。この段階で13:00を過ぎていたことからその後は昼食の時間とし、午後からは公園に向いました。この日は快晴無風だったことから予想していたような寒さはなく、到着時はこの公園らしい美しい紅葉が見事でした。早速、エゾリスがやってきて餌を食べている姿を見せてくれ、その後は複数のシロハラゴジュウカラがシラカバの林で貯食行動をしていました。池まで行くとマガモ、カルガモが見られ、よく見ると20羽ほどのオシドリの群れが木々に止まったり、水辺で小競り合いをしていました。また2羽のマガンの幼鳥の姿があったことから驚いて見てみると、うち1羽がカリガネでまたまた驚きました。そしてこの日も日没に合わせるように16:45に探鳥を終えてホテルに向いました。

15日、この日も前日同様に日の出に合わせてホテル周辺を歩きましたが、この日は霧が立ち込めていて、前日に比べると寒さはやや緩んだような印象でした。ホテルの庭では早速、ハシブトガラがやってきて、なぜかしばらく枯れ木に止まりさえずっていたことから、姿はそっくりながらコガラとは全く異なるさえずりをじっくり聞くことができました。その後は前日と同じルートを歩くと、エゾリスがやってきて木から木へと渡り歩き、この日も各所でヒヨドリの群れが騒いでいました。またこの日は周辺の林から「ズッ」というアオジの地鳴きが聞かれ、枯れ木に止まったアオジを何回も見ることができました。またツルウメモドキの実にはハシブトガラ、ヒガラ、シジュウカラ、シロハラゴジュウカラが入れ替わり立ち替わりやってきていました。戻る途中でもエゾリスを何回も見ることができ、上空をミサゴが通過していきました。探鳥後は一旦朝食の時間とし、朝食後は初日同様にハクガンを探しに行きました。ただ途中には十勝川が一望できる場所があるため立ち寄ると、かなりの数のカワアイサが見られ、中には石に上がって羽繕いしている個体もいました。ほかにもオオセグロカモメ、ヒドリガモ、コガモ、キンクロハジロ、カイツブリなどが見られ、2羽のコハクチョウが羽を休めていました。その後はハクガンを探しに向かいましたが、ここまでタンチョウをしっかり見ていなかったことから、まずはタンチョウが数多く群れている場所に行ってみました。ここではなぜか20羽ほどのタンチョウが地上採食していて幼鳥も1羽ながら見られました。またその中にどこからやってきたのか1羽のカナダヅルが混じっていて驚かされました。その後は一旦休憩を取り、残りの時間はハクガンを探しました。この日はガンの群れは比較的動きがあり、飛び回っている印象でした。ただとある場所には数百羽のハクガンの群れが降りていて、かなりの数のシジュウカラガン、ヒシクイの姿もありました。丁寧に見ていくと2羽のアオハクガンの姿があり、あまり活発に動いていなかったものの望遠鏡でなんとか観察することができました。しばらく見ているとハクガンの群れはシジュウカラガンとともに飛び立ち、その後は乱舞状態になったことから見てみると1羽のオジロワシがガンの群れに突っ込むように飛翔していました。群れは別の場所に降りているように見えたことから行って見ると、オジロワシの接近によって再び群れは乱舞し、ものすごい状況になっていました。この状況は最後にも見られ、数百羽のハクガンとともにシジュウカラガン、ヒシクイ、マガンも一緒に乱舞し、驚いたことに数羽のハクガンとともに飛ぶアオハクガンも見られ、ツアーを締めくくってくれました。

今回の秋の十勝平野はとにかく穏やかな天候に助けられた3日間でした。まず主役のハクガンはおそらくは4桁に限りなく近い数が見られ、アオハクガンも2個体確認することができました。オジロワシの襲来で舞い上がり、乱舞する状況は圧巻でしたが、今回はとにかく幼鳥が少なかったことが気がかりでした。もう一つの主役であるナキウサギに関してはここ数年、なかなか見ることができず苦戦続きでした。今回は2時間ほどの観察の中で3回出会うことができたものの、しっかり見られたのは一度だけでやはり難しいなといった印象でした。一方で今回も北海道だからこその、ハシブトガラ、シロハラゴジュウカラ、シマエナガ、ミヤマカケス、タンチョウ、そして愛嬌あるエゾリス、シマリスにも出会うことができ、さらには北海道では珍しいジョウビタキが見られ、ほかにもカリガネ、カナダヅルとの幸運な出会いもありました。北海道はとても魅力的な探鳥地のため、季節ごとにさまざまなツアーを企画しております。ぜひまた北海道にお出かけください。この度はご参加いただきましてありがとうございました。

石田光史

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