【ツアー報告】秋の渥美半島 田原湾と伊良湖タカの渡り 2024年10月1日~2日
(写真:サシバ 撮影:上田恵様)
秋といえば期間限定で見られるタカの渡り観察を外すことはできません。天候によるリスクが大きいことは残念ながら事実ですが、年間を通して観察できる時期はほんのわずかです。この秋の対馬、白樺峠、福江島、石垣島と催行し、最後を飾るのがこの伊良湖岬です。タカの渡りの時期はある程度決まってはいますが、単に天気のめぐりあわせを含めたタイミングによって変わってしまうため、天気の状況によってはどんどん良い時期がずれたりすることから、良いシーンに出会えるかは運次第といったところです。しかもタカ渡りのポイントはどこも天気予報が難しく、過去には雨予報が晴れに変わり、極めて良いシーンが見られたということもあるし、その逆もありました。今回はタカ渡りの観察は2日目の1日のみで、初日は豊橋駅から田原湾、その後は渥美半島各所にある探鳥地をめぐりながら先端にある伊良湖岬へ向かいます。今回は2つの台風が発生する状況の中ではありましたが、大きな影響はなく、天気予報は両日ともに概ね良いとのことでした。
1日、今回はたまたま台風17号、18号が連続して発生してしまったため心配でしたが、いずれの台風も日本に大きな影響を及ぼすことはない進路をとったため安堵して当日を迎えることができました。前日のうちに豊橋駅まできていましたが、この日は早朝からからっとした青空が広がっていて最高気温はなんと33℃とのことでした。予定通り豊橋駅にご集合いただいた後は、バスにて出発してまずは田原市にある道の駅に向かいました。バス車内ではこの日、さらには翌日の予定もお伝えし、さらには伊良湖岬のタカの渡りの特色やハチクマ、サシバの識別ポイントもお伝えしました。道の駅の到着後は各自昼食、観察機材準備の時間をとってから、まずはノビタキを探して畑地を歩きました。この時間はとにかく快晴で気温も高く、まるで真夏のようでした。バスを降りるとモズの声が聞こえ、暑いながらも雰囲気は秋のようでした。モズの姿を観察していると、草に止まっているノビタキの姿があり、接近して観察していると、さらにもう1羽がやってきて絡み合うように飛んでみたり、水たまりに降りて水浴びをしたり、いつの間にか間近にある草に止まったりとしばらく楽しませてくれました。その後は2羽で仲良く飛んでいるミサゴの姿が見られ、草地の上を飛び回るタシギも見られました。戻る途中でも再度、やや色が薄いほうのノビタキが見られ、観察後はトイレに寄りました。その後はこの時期、なぜか渥美半島周辺にやってきているオオアジサシを探していくつかの漁港をめぐることにしました。最初に立ち寄った小さな港では幸いなことに7羽のオオアジサシに出会うことができました。すっかり冬羽に換羽した個体ながら、じっと止まっていたり、時折飛び立ってみたりとしばらくの間、楽しませてくれ、他にもウミネコ、セグロカモメ、ウミウ、アオサギ、ダイサギの姿もありました。その後はトイレに立ち寄ってからさらに進みました。ここでは遠くの杭に止まっている50羽を超える数のオオアジサシが見られ、ここでもモズ、そしてウミウ、ダイサギ、イソシギも見ることができました。そして最後に訪れた場所ではバスを降りると15羽ほどのムクドリの群れが飛んできて電線に止まったため見てみると、これがすべてコムクドリでした。順光側にまわって観察してみると、オスの美しい色合いをじっくりと見ることができました。貯水池に進むと、今度は電線に止まっているエゾビタキの姿があり、望遠鏡を使ってじっくりと観察することができました。貯水池にはかなりの数のケリ、ダイゼンの姿があり、ダイゼンは腹が真っ黒な夏羽個体も見られました。ほかにもオオソリハシシギ、オバシギも見られ、最後は飛び回るケリの姿を見てホテルに向いました。ただ少々時間があったことから最後に伊良湖岬のタカ渡り観察のメッカ、恋路ヶ浜に立ち寄ってみました。たまたま観察をされている方からこの日のタカ渡りの状況を伺うことができ、ここまで低調だったタカ渡りがこの日は勢いを増し、サシバ407羽、ハチクマ21羽、総数453羽のタカたちが渡って行ったとのことで明日に期待が持てました。
2日、この日の伊良湖岬の日の出は05:45ということで、日の出前に部屋から外を見ると澄み切った快晴だったため期待を持って屋上に上がりました。06:00を過ぎたころからはハクセキレイ、ツバメが続々と渡って行く様子が見られ、眼下の林を見るとメジロ、そしてヒヨドリの群れが流れるように渡って行く様子も見られました。06:15には伊良湖岬では少数派のハチクマの幼鳥が飛び、06:25にもハチクマの幼鳥が眼下から舞い上がって旋回飛翔していました。06:30には今度はサシバの幼鳥が低く飛び、同時に4羽のサンショウクイが上空を飛び回っていました。06:45には海上から沸き上がったハチクマの幼鳥が頭上を旋回し、06:50には3羽のハチクマがやや北寄りに通過していきました。06:55には海上をミサゴが飛び、直後にはこの日最初の30羽ほどのサシバのタカ柱が出現しました。07:15には再び30羽ほどのサシバのタカ柱が頭上に上がって歓声が上がりました。07:35には4羽のハチクマが眼下から舞い上がって間近を旋回飛翔し、08:00にも眼下から舞い上がった1羽のハチクマが間近を飛翔しました。その直後には大型の鳥が悠々と舞い始めたことから見てみると、驚いたことにコグンカンドリで、しばらく飛んでくれたことからじっくりと観察することができました。08:45には対岸の稜線に15羽ほどのサシバのタカ柱が見え、ぐんぐん近づいてきたかと思うと、我々の頭上でタカ柱になり、再び歓声が上がりました。09:05にはハチクマの幼鳥3羽が間近を飛び、09:15には再び20羽ほどのサシバが上空を流れるように通過していきました。09:20には海上から舞い上がったハチクマの幼鳥が間近を旋回飛翔し、09:30にはメジロの群れが鳴きながら通過していきました。09:40には海上から舞い上がった2羽のサシバが間近を飛び、続けざまに20羽ほどのサシバが上空を通過していきました。10:00にはノスリが飛び、続けて5羽のサシバが通過していきました。10:10には伊良湖岬では珍しいハチクマの成鳥オスが飛び、10:15には30羽ほどのサシバのタカ柱が上空にでき、直後には流れるように渡っていく様子が見られ、再び歓声が上がりました。10:30にはチョウゲンボウが高速で飛び、10:50にはミサゴが眼下から舞い上がって飛んでいました。10:55には4羽のサシバが上空を旋回し、11:45には珍しく4羽のノスリが一緒に飛んでいました。12:00には再び2羽のノスリが飛び、この頃にはすっかりサシバ、ハチクマの姿は見られなくなっていました。12:20にはかなりの数のトビが飛び回る中、1羽のツミがトビにモビングをしていました。12:45には再びチョウゲンボウが飛ぶと、その後はタカの姿はなくなり、暑さばかりが気になって日陰に逃げ込んでの観察になりました。そして久しぶりに14:50にミサゴが飛ぶと、その後はさらにタカの姿はなくなり、16:15に観察を終了しました。結局この日はサシバ478羽、ハチクマ75羽、総数582羽のタカたちが伊良湖岬を通過して行き、今期ここまでの最高の記録となりました。
秋はやっぱりタカの渡りを見ないと落ち着かない。ということで毎年恒例ではありますが、タカ渡りの成果はお天気に大きく左右されることから、この時期はとにかく天気予報を見る機会が一気に増えます。今回は2つの台風が発生する中でしたが幸いにもツアーには影響はなく助かりました。初日は渥美半島各所の秋の渡りを見ながらめぐりましたが、まず主役の秋色のノビタキが楽しませてくれ、隠れた主役であるオオアジサシは最大で総数50羽ほどが見られました。また群れ飛ぶケリの群れやダイゼン、オオソリハシシギ、オバシギも見られ、渡り途中と思われる、コムクドリ、エゾビタキも見られました。翌日のタカの渡り観察は真夏のような陽気の中での探鳥となり、暑さが厳しかったですが、この秋のカウント数としてはここまでの最高値に当たることができました。伊良湖岬の主役であるチゴハヤブサに出会うことができず残念でしたが、サシバのタカ柱が連続で見られたほか、伊良湖岬では少数派のハチクマも多数見られ、今回は成鳥のオスも見られました。またノスリ、ミサゴ、ツミ、チョウゲンボウとさまざまなタカたちを見ることができ、驚いたことにコグンカンドリの見事な飛翔をたっぷり見ることもできました。タカの渡りは秋のごく一時期しか見ることができません。ぜひ今後も秋のタカ渡り観察を恒例行事にしていただければと思います。この度はご参加いただきましてありがとうございました。 またご一緒できましたら幸いです。
石田光史