【ツアー報告】ハチクマの群翔に期待!五島列島・福江島 2024年9月27日~29日
(写真:ハチクマ 撮影:上山功夫様)
秋のタカ渡り観察ツアーの中でもハチクマに絞った恒例のツアー。ハチクマは夏鳥として日本に渡ってくるタカですが、春の渡りと秋の渡りで大きくルートが異なり、秋はひたすら西へ西へと移動を続け、春とは異なり朝鮮半島を経由せずに渡っていきます。その秋の渡りの国内の最終休憩地が今回訪れる福江島で「日本におけるハチクマの出口」とも呼ばれています。ここから飛び立ったハチクマは東シナ海を一気に飛び、中国南東部へ渡ります。そのため、福江島は例年数多くのハチクマが観察される場所として特に有名な観察ポイントとなっていて、この秋もここまで3日連続で1000羽を超えるデータが出ていました。タカの渡りはとにかく天候に左右されるため、天気予報のチェックが欠かせませんが、この3日間は概ね晴れの予報が出ていて、ひとまず安堵して出発日を迎えることができました。
27日、この日の東京都内は朝からしとしとと雨が降っていました。混雑している羽田空港にご集合いただいた後は、資料の配布、搭乗券の配布、そしてこの日の予定をお伝えしてから搭乗口に進みましたが、使用機材の遅れがあり、なかなか搭乗できず、ようやく出発したものの今度は福岡空港では着陸の順番待ちもあって結果的には到着が大幅に遅れてしまい、予定していた福江島に向う便には乗れず、17:00発便に振り替えることにしました。そのため大幅に遅れて福江島に到着した後は美しい夕景を見ながらホテルに向い、豪華な夕食をいただいて翌日に備えることにしました。
28日、この日も天気予報は終日晴れ予報。昨日、午後に展望台からの観察ができなかったことから、この日は午前中だけでなく、午後も展望台からハチクマの渡りを観察する予定で、早朝04:30にホテルを出て大瀬崎展望台に向いました。外はまだまだ真っ暗でしたが星が見えていたことから天気は問題なさそうで、展望台に到着する前にトイレに立ち寄りました。到着後は歩いて10分ほどで展望台に到着し、各自準備を進めていただきました。06:00に展望台に立つとみるみる空は明るくなってきていて、早速、サンショウクイが鳴きながら飛び回っていました。06:10にはアオサギとダイサギが海を渡り、06:15からはハチクマが続々と沸き上がっては海上に飛び立っていく様子が観察できました。06:20には30羽ほどのハチクマのタカ柱が出現し、その中には「ピックィー」と鳴きながら飛ぶサシバが混じっていました。07:30頃には複数のアマツバメが飛び回り、07:40にはミサゴが飛んでいました。07:50頃からは今度はハリオアマツバメが飛び始め、我々がいる展望台をかすめるように飛んでくれたため盛り上がりました。そして08:00には上空にアカハラダカの幼鳥が現れてゆっくりと飛んでくれました。08:30にはかなりの数のハリオアマツバメが旋回上昇する「ハリオ柱」が出現して盛り上がりました。09:00にはノスリ、そしてハシブトガラスが飛び、09:20にはチゴハヤブサが眼下から舞い上がって高速で飛んでいきました。09:45には10羽ほどのコシアカツバメが飛び、10:30には目の前の林からセッカが飛びたちました。11:00にはハチクマの渡りはほぼ終わった感がありましたが、それでもポツポツと飛び、この頃からは暑さも厳しくなってきました。11:40には上空をハチクマのメスが飛び、その後はツバメ、アマツバメ、ハリオアマツバメが主役となって楽しませてくれ、12:40に飛び回るミサゴを見てから昼食のため13:00に一旦、展望台を降りました。昼食後の14:00過ぎに展望台に戻ると、ここからは福江島に向って飛んでくるハチクマが連続して見られる良い時間が続きました。14:15、14:20と連続してタカ柱が出現し、30羽ほどのハチクマが旋回上昇する様子は見事でした。14:30頃にはハヤブサが飛び回り、14:50には眼下から舞い上がったハチクマのメスと幼鳥が上空低く飛んでくれました。その後も16:00まではポツポツとハチクマが上空を飛んでくれ、この日は16:30に探鳥を終えてホテルに向かう途中、トイレに立ち寄ると、突然飛び立ったカラスバトが枯れ木に止まってくれました。
29日、この日も天気予報は晴れで、前日よりも予報はさらに良いようでした。そのため大きな期待を抱きながらまだまだ真っ暗な04:30にホテルを出発して大瀬崎展望台に向いました。トイレに立ち寄ってから展望台に上がると、まだまだ暗いながらも東の空はみるみる明るくなってきていました。準備を進めていると早くも06:00には数羽のハチクマが旋回しながら沸き上がり、これが合図だったのか、06:30頃からは次々にハチクマが沸き上がって旋回しながら上昇し、海上に向って流れていく様子が観察できました。観察しているとサンショウクイが飛び、この日はメジロの姿も目立ちました。また06:50には20羽ほどのコムクドリが飛び回っていました。また眼下の電柱にはエゾビタキが止まり、たまたま飛んできたヤマガラと場所取り争いをしていました。この日のハチクマは羽毛が美しく揃っていて、初列風切が黒く見える幼鳥が多く、意外な印象でした。ハチクマが連続して舞い上がってくる状況はおおよそ08:00まで続き、気が付くと天気が良かったせいか気温がぐんぐん上がっていてかなり暑く感じました。一旦、休憩のような状況になりましたが、09:00過ぎからはチゴハヤブサが飛び始め、宙返りするように飛んではトンボを捕らえているようで、何度も何度も頭上を飛んでくれたことから、思いのほかじっくりと観察することができました。また上空に現れたツミが何かと絡み合うように飛んだことから見てみると、もう1羽はアカハラダカの幼鳥で、2種を同時に観察することもできました。その後は再びアマツバメが飛び回り、10:40には10羽ほどのコシアカツバメが飛び回ってくれました。そしてこの日はかなり暑くなってきた11:30に展望台での探鳥を終え、昼食会場に向かいました。到着後はまず売店に行って買い物をしてから昼食をいただき、その後は当地でよく見られているカラスバトが飛び去る姿を見てから、少々時間があったことから空港近くの水田で探鳥をしました。トラクターに群がるハシブトガラス、ハシブトガラス、トビの姿ばかりが目立ってしまい、これといった鳥の姿はありませんでしたが、セッカが飛び回り、畑にはヒバリの姿がありました。貯水池ではイソシギ、川ではアオサギ、チュウサギ、そしてセイタカアワダチソウに止まるホオジロを見て探鳥を終えて空港に向いました。公式データでは28日はハチクマ934羽、29日はハチクマ826羽が渡っていったとのことでした。
今回は初日に羽田空港出発が遅れてしまった関係で予定していた福江島便に乗り継ぎができず、結果的には初日の探鳥が全くできず残念でした。ただ天気がずっとよかったことから最大の目的だったハチクマの大規模な渡り風景を堪能することができ、特に最終日の朝は続々と沸き上がってくるハチクマの群れに圧倒されっぱなしの時間を過ごす幸運がありました。美しいと表現するのが良いか、不思議と言ったらよいのか、まさに人間の想像を完全に超えてくるような光景が印象に残る時間でした。ほかにもサシバ、ツミ、ノスリ、そしてアカハラダカ、チゴハヤブサも見ることができ、特にチゴハヤブサはかなりしっかりと観察することができました。さらにはアマツバメ、ハリオアマツバメの飛翔を間近に見ることができ、晴天の展望台でさまざまな鳥たちの渡りを楽しむことができた2日間でした。タカの渡り観察ツアーはさまざまな場所で企画しています。成果が天候に大きく左右されるデメリットはあるものの、何度来ても全く同じ結果にはならず、飽きることがありません。ぜひ秋はタカの渡り観察を恒例行事にしていただき、また来秋もどこかの空を眺めていただければ幸いです。この度はご参加いただきましてありがとうございました。
石田光史