【ツアー報告】タカ渡る白樺峠とライチョウが棲む畳平 2024年9月21日~23日
(写真:ハチクマ 撮影:八田康弘様)
春から続いたツアーの繁忙期が8月下旬で一旦終わり、その後はスケジュール的には国内バードウォッチングツアーは夏休み状態になっていました。ただいよいよこの時期、秋恒例のタカの渡り観察ツアーから再スタートとなります。秋にしか大規模なタカの渡りは観察できないことから日本各地でツアー企画していますが、いずれも観察可能な期間が短く、しかも天候の影響を大きく受けるためリスクがあるのがデメリットではありますが、タイミングが合えば信じられないような光景を見ることができます。今回訪れる白樺峠では長らくツアー企画してきましたが、どうもこの時期は予報が難しいらしく、毎回予報が各社バラバラであることが普通なため、その日になって予定を変えたりしながら対応してきました。過去には晴れ予報が雨になってしまったり、雨予報が晴れに変わって見事な渡りが見られたこともあり、なにかと思い出が多いツアーです。白樺峠の特徴はなんといっても個体差が激しいハチクマのさまざまな個体が見られること、サシバのタカ柱が見られる可能性が高いことで、観察地が山間部の峠であることから、運が良ければイヌワシ、クマタカといった大型猛禽類に出会える可能性があることでしょう。またわずかな距離にある乗鞍高原や畳平でも魅力的な野鳥が見られることから「タカ渡り」「乗鞍高原の渡り中の小鳥」「畳平の高山鳥」をセットにしました。また以前は乗鞍高原の温泉宿に宿泊していましたが、コロナ以降需要が高まっているシングル部屋が利用しやすいよう松本駅前のホテルに連泊することにしました。今回は台風は去っていったものの、今度は秋雨前線の影響で再び天気予報が悪くなり、毎日毎日天気予報を見ながら予定を組み立てていかなくてはならない状況になってしまいました。
21日、今回も真夏のような東京都内を前日に出て松本駅前までやってきました。現地は夜であるにも関わらず28℃と気温は高かったものの、やや風があったせいか涼しく感じました。今回も前回同様に天気予報が各社バラバラでなかなか予定が決まらないまま、この日を迎えましたが、あれこれ考える間もなく、多くのお客様が乗られている特急が1時間以上遅れるとのことで、さらに予定を立てるのが難しくなっていました。結果的には11:00出発のところ、12:15出発に変わり、ひとまず乗鞍高原に向い、現地で予定を決めることにしました。移動中のバス車内では今回訪れる予定の白樺峠タカ見の広場、そして乗鞍畳平の現地の状況や設備、さらには白樺峠のタカの渡りの特色、そしてサシバ、ハチクマの成鳥、幼鳥、雌雄の識別ポイントについておさらいしながら進み、到着後は各自観察機材の準備をしていただいてから、この日は畳平に向うことにしました。天気予報では終日曇り、または午後からは曇りとのことでしたが、出発時には小雨が降り出してしまいました。たまたま畳平に同じバス会社の方がいらっしゃるとのことで状況を聞いていただいたところ、霧のほか、強烈な風が吹いているとのことで三本滝駐車場で引き返して、この日は乗鞍高原で探鳥することにしました。天気予報が外れてしまったようで小雨が降り続く中でしたが、小川では石にじっと止まって羽繕いしているカワガラスが見られ、カラマツには見事な色彩のアオバトのオスが止まっていました。その後はカケスの大きな群れに出会うことができ、10羽ほどのカケスが次々に林の中を移動していく様子が見られました。ただなかなか小鳥類の動きがないことから場所を変えてみました。相変わらず雨が降ってはいましたが、ここではコガラの群れが見られ、直後には1羽のサメビタキがダケカンバの横枝に止まっていました。さらにはエナガ、コゲラに混じって数羽のエゾビタキが現れて、珍しくじっと止まってくれたため望遠鏡を使って観察することができました。その後はやや時間があったことから乗鞍高原ビジターセンターに立ち寄ってからホテルに向いました。松本市内が近づくと一部に青空が見えていました。
22日、この日も相変わらず天気予報が曖昧な中、早朝に外を見ると早くも小雨が降っていました。天気予報では概ね、午後からは天気が回復するとのことで期待しながら乗鞍高原に向いました。ただ途中に立ち寄った道の駅「風穴の里」では雨はかなり激しくなり、その後も雨は強まる一方でした。ただ乗鞍高原につくと空が明るくなる時間帯と雨が激しくなる時間帯が交互にくるような状況だったため、そのまま1時間ほど待機することにしました。結局10:30まで待ち、外がかなり明るくなってくるのを待って畳平に向うことにしました。途中、一部が紅葉したナナカマドを見ながら進みましたが、現地は残念ながら霧で全く視界がなく、強風も吹いていたことから一旦昼食の時間とし、その後は再びバス待機していただきました。ただ天気予報通りには天候は回復せず、結局、強風の中、イワヒバリだけを見て乗鞍高原に戻りました。エコーラインを下っていくと天気は回復していて大きな虹も見られました。そして15:45からは乗鞍高原を歩いて探鳥してみました。林の中からはゴジュウカラ、エナガ、コガラの声が聞こえ、付近にいたカケスが珍しくじっと横枝に止まってくれたため、じっくりと観察することができました。その後は再びコガラの群れに出会い、カラマツの上には2羽のエゾビタキの姿がありました。さらに歩くと今度はカラマツに止まる3羽のエゾビタキが見られ、飛び立ったり戻ったりを繰り返していて、雨上がりらしく小鳥の動きが良いようでした。小川を覗くと2羽のマガモの姿があり、付近の林にはゴジュウカラの姿もありました。また再びカケスの群れがやってきて、カラマツには今度はコサメビタキが止まっていました。その後は時間になったことから乗鞍高原ビジターセンター方向に向かい、上空を飛んでいるツミを見てこの日の探鳥を終えました。
23日、この日は各社ほぼ晴れマークの予報が出ていたため期待して朝を迎えました。外を見るとほぼ快晴で、乗鞍高原側も青空だったことからひとまずほっとして出発しました。乗鞍高原に向かうバス車内ではもう一度、白樺峠の特長やタカ見の広場の設備、そしてサシバ、ハチクマの識別ポイントをおさらいしながら進み、乗鞍高原到着後は飲み物を購入していただきました。再度出発後はスーパー林道を進みましたが、白樺峠が近づいてくると駐車している車がどんどん増え、駐車場付近は満車を通り超して大変な状況になっていました。なんとか駐車場に到着した後は、それぞれ20分ほど山道を歩いて白樺峠タカ見の広場に移動していただきました。異常なほどの人出ではありましたが、我々はトラベルイヤホンを使用して観察することから、タカの出現状況や識別ポイントを的確にお伝えすることができる点は幸いでした。10:00に白樺峠タカ見の広場に立つと、かなりに混雑で驚きましたが、早くも数羽のハチクマが飛び、頭上を通過していき、同時に当地では珍しいトビが2羽飛んでいました。10:05にはノスリが飛び、10:20、10:30には旋回上昇したハチクマが飛ぶと同時に、高速でハリオアマツバメが通過していきました。10:40には白樺峠では少ないハチクマの幼鳥が上空を旋回し、10:45には羽ほどながらサシバのタカ柱が出現しました。10:50には3羽のサシバが旋回しながら上昇して右に尾根に流れ、11:00にはツミが上空を旋回飛翔してくれました。11:10にはやや風が強まってくる中、5羽のハチクマが次々に頭上を通過し、11:20にはサシバの幼鳥が低く出現して、我々の頭上を旋回飛翔してくれました。11:35には再び2羽のトビが出現し、11:40にはノスリがゆっくりと頭上を旋回してくれました。12:05には強風に乗るようにハリオアマツバメが通過し、12:10には珍しくミサゴが通過していきました。12:25にはハチクマの幼鳥、メスがやや左のコースを通過し、12:40には後方のカラマツに止まったホシガラスが飛びたって飛んでいきました。12:50頃からは松本方面に雲が立ち込め、稜線の頂を覆う状況になる中、突然現れたハイタカが通過し、13:10にはハチクマのメスが頭上を旋回してくれました。13:15には3羽のハチクマが風にあおられるように上空を通過し、13:20には今度は3羽のサシバが頭上を旋回してくれました。ただこの時間からはさらに風が強まり、半袖では肌寒く感じるほどでした。13:40には今度はハチクマのオスが上空を旋回し、14:15には今度は幼鳥とメスが旋回してじっくりと姿を見せてくれました。14:20には10羽ほどのサシバがタカ柱が出現し、同時に珍しくオオタカ幼鳥が飛んでいました。14:30には4羽のサシバが流れるように上空を通過し、14:40にはなぜか尾羽が全くないハチクマの幼鳥が上空で旋回していました。その後は単発ながらハチクマが次々に通過し、15:00には眼下から舞い上がったハチクマのオスが見事な旋回飛翔をしながら上昇する様子が観察できました。そして15:20頃からは稜線上にサシバの群れが出現し始め、最後は上空で旋回しながら上昇していくサシバのタカ柱で盛り上がってこの日の探鳥を終え、15:30には荷物をまとめて下山し、駐車場で荷物整理をして16:00に松本駅に向けて出発しました。公式発表では23日、サシバ1348羽、ハチクマ385羽、総数1874羽となり、ここまでの今期の最高値、見事4桁日に当たることができました。
そもそも天候が安定しない時期であることもあって、過去、台風直撃や天候悪化などにより予定変更が頻繁に発生するなど何かと問題が多いツアーですが、今回も天気予報に翻弄される状況になってしまっただけでなく、中央本線のトラブルも加わり、何かとご苦労が多いツアーになってしまいました。乗鞍高原では小雨の中にもかかわらずエゾビタキやサメビタキ、コサメビタキ、アオバト、ゴジュウカラ、カワガラス、カケスなどが楽しませてくれ幸いでしたが、結果的には畳平での探鳥ができず残念でした。ただここまでの我慢が報われたのか、最終日は見事な秋空の下、次々に頭上を通過していくサシバ、ハチクマ、ノスリ、ツミを堪能することができ、当地では比較的珍しい、トビ、ミサゴ、ハイタカ、オオタカが見られ、ハリオアマツバメ、ホシガラスも見られました。ここ白樺峠にはすでに15年以上来ていますが、タカの渡りは何度来ても全く同じ光景はなく、毎回毎回新しい感動を与えてくれます。今後も秋はタカの渡り観察におでかけいただけましたら幸いです。この度はご参加いただきましてありがとうございました。
石田光史