【ツアー報告】絶景の立山 ライチョウの親子に会いたい! 2024年7月19日~21日

(写真:ライチョウの親子 撮影:K様)

今年はいつが梅雨なのかがほとんどわからないような猛暑が続いていましたが、今回はちょうど関東地方が梅雨明けするタイミングに合わせるように出発することになりました。ただ5月から始まった暑さはこの時期にはさらに厳しくなってしまい、7月にもなると本州ではもう外出そのものが危険になるほどです。そんな中、標高2450mの涼しい室堂に出かけて国の特別天然記念物であるライチョウを観察するツアーはすっかり定番になっていて、しかもこの時期は可愛らしいヒナたちを連れた親子に出会う確率が高い時期なのです。ライチョウはこの立山室堂のほか、乗鞍高原の畳平でもツアー企画していますが、畳平は晴天時にはなかなか出会うことができないというライチョウ特有のマイナス要素があるものの、ここ室堂のライチョウは天候に左右されない印象があり、過去、毎回、可愛らしい親子連れのライチョウに出会っています。ただ現地はマイカー規制がされているため室堂に行くには何度も何度も乗り換えをしなくてはならず、特に荷物が多い我々にはなにかと面倒です。そのためツアーでは専用バスを利用して富山駅から直接室堂まで行くことができるようにし、また天候の急変などの場合、専用バスであれば好きな時間に移動できるため、危険回避の面からも何かと便利なのです。ただ今回は天気予報が各社バラバラで運行が難しくなることが予想させる中での出発になってしまいました。

19日、この日の都内は早朝から薄曇りながら、とにかく蒸し暑く、週末ということもあって混雑している東京駅は、人込みが蒸し暑さを助長しているかのようでした。ひとまず集合時間よりも30分ほど早く富山駅に到着する新幹線に乗り、到着後は待合室で昼食をたべてから集合場所に向いました。ただこの日の富山市内は気温が37.3℃とのことで頭がくらくらするほど暑く、いつに間にか空は真夏のような青空でした。ご集合いただいた後は資料を配布してからバスにご乗車いただき、この日の宿泊地である標高2300ⅿの弥陀ヶ原を目指して出発しました。途中、昼食の時間をとるため道の駅に立ち寄って各自、昼食をとっていただき、その後はいよいよ弥陀ヶ原に向けてバスを進めました。この時点では周辺はほぼ快晴ながら室堂方面には黒い雲がかかっていて、どうなることかと心配でしたが、その後はバスが進んでも雲は広がっておらず、霧もかかっていなかったことから、途中、その落差が日本一の称名滝を見ることもできました。その後もバスはグイグイ山道を登り、左手に弥陀ヶ原の高層湿地が見え始めると、ようやく今回お世話になる宿が見えてきました。宿に到着後はロビーをお借りして観察機材の準備をしていただき、再度バスにて出発して室堂に向かいました。空は一部に青空が見えるものの山々の頂を隠すように雲がかかっていました。室堂駐車場でバスを降りると、それほど寒さを感じることはありませんでしたが、やや強い風が吹いている中をイワツバメが飛び、山の斜面には雪がまだまだ残っているのが見えました。室堂平に出るとすでに見ごろは過ぎているものの、チングルマやイワカガミ、イワイチョウ、ヨツバシオガマの花が咲き、そのまま歩いてみくりが池周辺の斜面を見てみました。すると斜面にへばりつくようにライチョウのオスが見え、夏季にはなかなか見ることができないだけに驚きました。ただ周辺にメスやヒナの姿がなかったことから、その後は室堂平内を歩きながらライチョウを探しましたが残念ながらライチョウの姿はなく、来た道を戻りました。すると斜面にライチョウのメスの姿があり、よく見ると間近には2羽のヒナの姿がありました。しばらく観察しているとハイマツの中からメスが2羽現れてこの親子に接近すると、ヒナを連れたメスがその個体を追い回して威嚇する様子が見られました。さらに観察を続けると2羽のメスは速足でどんどん近づいてきて、そこをめがけて1羽のオスがやってきました。その後はさらにもう1羽、オスが加わり計4羽のライチョウがけん制しあったり、砂浴びをしたいとかなり良い動きを見せてくれ、気が付くと17:30になっていたため、急いで宿に戻りました。結局、この日は雨に打たれることはなかったものの、夜には霧が立ち込め雨が降ってきました。

20日、昨日の天気予報ではこの日は午前中曇り、午後から雨でしたが、早朝に天気予報を見ると、それが完全に逆になっていて午前中は雨、午後から晴れになっていました。まずは曇り空の中、宿周辺を歩いてみました。早くもウグイス、アカハラのさえずりが響き、歩きだすと針葉樹に止まったホシガラスがゆっくりと羽繕いをしていました。さらに歩くと風に乗るようにチョウゲンボウが飛び、クロジのさえずりも聞こえましたが姿は見えず、ただホトトギスがけたたましく鳴きだしたため探してみると、針葉樹に止まって鳴いていたため、珍しくじっくりと観察することができました。ただ直後には小雨が降り出し、その雨は07:00にはかなり激しい雨に変わっていました。そのため朝食時にこの日の予定変更をお伝えし、ひとまず室堂に行くことは諦め、09:00から弥陀ヶ原を歩く予定にしたものの雨は止まず、さらに10:30に変更したものの深い濃霧で全く視界がないことから断念し12:00から昼食をいただき状況を見ることにしました。ただ幸いなことに天気予報がほぼ当ったようで昼食を食べている頃にはすっかり雨は上がり、次第に明るくなってきました。そのため13:00に出発して室堂を目指しました。ただ室堂はまだまだ視界が開けていなかったことから、まずは買い物をしていただく時間を30分ほどととることにしました。するとようやく視界が開き、美しい山々が姿を現しはじめたため、この日もライチョウを探して歩き出しました。すると昨日と同じ斜面にライチョウの姿があり、よく見るとオス2羽、メス1羽がいましたが、ヒナを連れているメスではないようでした。そのため残りの時間は室堂平を歩きました。ただここでもライチョウの姿はなく、岩に止まっているイワヒバリ、間近を歩き回る2羽のカヤクグリ、飛び交うアマツバメなどが見られました。

21日、この日は天気予報どおり、早朝から快晴だろうと思っていましたが残念ながらどんより曇っていて霧も出ていました。この日も早朝に宿周辺を歩いてみましたが、いつにもましてウグイスのさえずりがあちらこちらから聞こえてきていました。周辺の針葉樹を見てみると高原らしく、てっぺんに止まってさえずっているウグイスが見られ、アカハラの姿もありました。歩いて行くとヒガラが見られ、ここ数年、よく目のするハシブトガラスが3羽飛び交っていました。クロジのさえずりが聞こえるほうに行ってみるとナナカマドの林の中からさえずりが聞こえました。かなりしっかりとさえずりは聞こえたものの、なかなか視界には入らず、ちらっと見られただけでした。ただこの日もホトトギスのけたたましい声が聞こえ、枯れ木に止まっている姿を見ることもできました。その後は意外にも小雨が降ってくる中、07:30から朝食をいただき09:00からは宿に滞在している富山県の自然ガイドさんと共に弥陀ヶ原を歩くツアーに参加しました。この頃には雨が上がっていて天気は一気に回復傾向に向い、少々蒸し暑く感じるほどでした。まずはワレモコウ、テガタチドリ、タテヤマウツボグサなどを見ながら弥陀ヶ原特有の地形の解説を伺い、木道を歩いていくと各所で池塘とワタスゲが見られました。またこの日は橙色が鮮やかなゼンテイカの花も見事で、足元を見ると小さいながらも存在感があるタテヤマリンドウが咲き誇っていました。探鳥の都合でわずか1時間ほどでしたが担当してくださったガイドさんのおかげで楽しく過ごすことができました。そして良いタイミングで霧が晴れ、空に青空が見え始めたことから、この日も最後に室堂に向かいました。相変わらずイワカガミの花がかろうじてここだけ見事な群落を作っていて、足元の雪渓には2羽のカヤクグリの姿がり、間近に見ることができました。ただライチョウの姿がなかったことから、昨日最後にライチョウを見た斜面も見てみましたがここにもライチョウの姿がなかったことから、その後は室堂平を歩きました。結果的にはここでもライチョウの姿はなかったですが、チングルマやヨツバシオガマ、イワイチョウ、アオノツガザクラ、ハクサンイチゲ、シナノキンバイなどの花々を見ながら歩き、最後は間近にさえずっているメボソムシクイを観察して探鳥を終えました。

ここ数年は天候が安定していた夏の立山ツアーですが、今回はなかなか当たらない天気予報に翻弄される形になってしまいました。また今年はライチョウのヒナの数が2羽と少なく、結果的には見られたこと自体がラッキーだったのかもしれません。今回出会ったヒナたちが順調に育ってほしいと思いました。ただ一方で夏羽のオスが複数見られたことは印象的でした。この時期はヒナを連れたメスに出会うことは珍しくないものの、オスを見ることは稀で、今回は威嚇行動や砂浴び、飛翔、さらには声もでも聞くことができました。ほかにもイワヒバリ、カヤクグリ、メボソムシクイ、弥陀ヶ原ではホトトギス、アカハラ、クロジ、ヒガラなどが見られ、チングルマやイワカガミ、イワイチョウ、ハクサンイチゲ、ヨツバシオガマ、タテヤマリンドウ、ハクサンイチゲ、シナノキンバイなどの花々も見事でした。この度はご参加いただきましてありがとうございました。次回は白いライチョウの姿を求めて雪原の室堂にぜひお出かけください。

石田光史

カヤクグリ 撮影:K様

 

ライチョウ 撮影:K様

 

メボソムシクイ 撮影:K様

 

ライチョウ 撮影:K様

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