【ツアー報告】ベストシーズンに巡る夏の北海道 2024年6月19日~22日

(写真:ギンザンマシコ 撮影:佐久間昭宏様)

この時期、本州は梅雨の時期を迎え、また多くの野鳥たちが繁殖期を終えて静かになってしまうため探鳥は不向きになります。一方でちょうどバードウォッチングの最盛期を迎えるのが北海道です。一般的には北海道は梅雨がないといわれていますが、実際に何年も何年もこの時期の北海道に来た印象としては確かに梅雨のような長雨はないものの、意外と天気がよくない印象があります。このツアーでは移動距離が長いというデメリットはあるものの、夏の北海道での探鳥では絶対に外せない、シマアオジやギンザンマシコ、そして、総数100万羽ともいわれる海鳥が生息する天売島を訪れるなど夏の北海道のこれぞという探鳥地を網羅しているほか、森林の野鳥を観察する行程が全く含まれていないことから白金温泉付近で森林帯の野鳥も観察できるようにしています。またギンザンマシコ観察に関しては気温上昇と共に起こる陽炎の影響を避けるため、また観光客が増える前に現地を訪れるため早朝便のロープウェイに乗車できるよう日程を調整して企画しています。ただ今年はどうしたことか本州の梅雨入りが大幅に遅れて晴天が続き、肝心な北海道の天候が今一つで、今回も2日目以降は天気が悪くなるとの予報が出ている中での出発となってしまいました。

19日、本州は相変わらず暑い日が続いていてこの日の東京都内も早朝からほぼ快晴でした。平日にもかかわらずかなり混雑している羽田空港でしたが、予定通りご集合が完了したことから資料の配布、そしてこの日の連絡事項をお伝えしてから搭乗口に進み稚内空港に向かいました。やや遅れたものの無事到着した稚内空港は道北としては珍しく青空が広がっていて穏やかな印象で、まずは空港内で観察機材の準備をしていただいてからバスに乗車していただき原生花園に向いました。到着後は道路沿いを歩き、穏やかな青空の下、まずはノビタキが杭に止まってくれました。観察しているとツメナガセキレイが飛んできて飛び回り、ツメナガセキレイも杭に止まってくれたことからじっくりと観察することができました。少々歩くと今度はマキノセンニュウのさえずりが聞こえたことからしばらく待っていると、枯れた低木に止まってさえずり始めたため、じっくりと観察することができました。マキノセンニュウも最近ではそれほど見かけなくなったことから嬉しい出会いでした。ただ結果的にはシマアオジの気配はなく、その後はトイレに立ち寄ってから移動しました。途中にある池ではたまたまアカエリカイツブリが繁殖していたため見てみると、美しい夏羽に換羽したつがいと思われる2羽が見られ、巣材を運んでいるようでした。ほかにもマガモ、ヨシガモのつがいも見られ、木にはアオサギが止まっていました。その後はやや風が冷たくなってくる中、移動しました。到着すると周囲では複数のコヨシキリがさえずり、間近にその姿を観察することができました。また電線ではカッコウが鳴いていて、いつの間にかツツドリもやってきて並んで鳴いているという珍しいシーンを見ることができました。その後は道を歩くとノビタキが姿を見せ、ノゴマのさえずりが聞こえたことから探してみると2個体のノゴマが草に止まってさえずっていたことからその姿を見ることができました。

20日、この日は午後から天気が悪くなる予報でしたが、夜のうちに天気予報が変ってしまい終日雨予報になってしまいました。そのため早朝探鳥に出発する時点ですでに曇り空から小雨が落ちてきていました。この時間は再び原生花園に向かい、この日も前日同様に過去にシマアオジが見られている場所を、前日よりもさらに広範囲に探してみることにしました。バスを降りるとすでに小雨模様ながら、黄色いエゾカンゾウの花や白いコバイケイソウの花が美しく咲いていました。ただ小雨模様に加えてやや風もあったことから想像以上に鳥の気配は少なく、相変わらず元気なノビタキが飛び回っているほかは、オオジュリン、ホオアカ、ツメナガセキレイがわずかに見られ、ここでようやくオオジシギのディスプレイフライトを見ることができました。またこの日も低木でさえずっているマキノセンニュウにも出会うことができました。探鳥後は一旦ホテルに戻って朝食をいただき、再度出発して再び原生花園に向かいました。この時間は曇り空ながらようやく雨は気にならないくらいになっていて、この時間は木道を歩いてみました。やや風はあったもののここではホオアカの姿が目立ち、複数の個体がそれぞれさえずっていて、エゾカンゾウがひときわ美しく咲いているエリアではノビタキがさえずり飛翔を見せてくれました。探鳥後は一旦ビジターセンター内を見学するなどしていただき、その後は天売島に行くフェリーに乗るために羽幌港に向かいました。途中、再び降り始めた雨は激しさを増してきてどうなることかと心配になりましたが、羽幌町が近づいてきたころからは幸いにも雨は上がり、海上には焼尻島、天売島を見ることができました。羽幌港到着後は海の幸満載の昼食をいただき、予定通りに出航して天売島を目指しました。この航路からもウトウやケイマフリが数多く見られ、今回は出航直後に着水しているウトウが複数見られたほか、飛翔しているハシボソミズナギドリが見られ、1時間ほどして焼尻島に接近したころからは次第にケイマフリが目立ち始め、港の中に入っている個体も見られました。天売島到着時は幸いなことに雨が降っていなかったことから徒歩にて探鳥を行いました。天売島では人気があるノゴマが見やすいことから探してみると、探す間もなく電線でさえずっているノゴマが間近に見られ、その後も道沿いでさえずっているノゴマをたっぷり観察することができました。ほかにも子育て中のコムクドリや飛び回るアマツバメやノスリ、そしてクロツグミのさえずりが聞こえ、少々早い夕食をいただきました。その後はまだまだ続く探鳥行程の中でも天売島のメインともいえるウトウの帰巣風景を観察しに向かいました。到着前から海から飛んでくる80万羽ともいわれているウトウに取り囲まれ、この日は風向きのせいか、ここまで見てきたような飛び方ではなく、四方八方からウトウが舞うように飛んでくる様子が印象的でした。よく見ると魚を咥えた個体がすぐ足元でじっとしているなど、この日は群れの様子も見事ながらそれ以外にもさまざまなウトウの姿を堪能することができました。

21日、この日はボートクルーズの予定だったためかなり早めに起きて海況をチェックしました。残念ながら小雨が落ちてきてはいましたが海上は穏やかで幸いにも05:30には出航が決まりました。定員の関係から今回は2回に分かれて乗船していただきました。天候はほぼ曇りや小雨といった感じで後半は一時的に激しい雨に打たれる時間帯もありましたが海鳥たちは元気で、間近に群れるケイマフリや岩礁に群れるウトウ、そして目玉のウミガラスは着水している個体はもちろん、営巣地の断崖付近を飛び回る11羽の群れが見られるなど、天売島への渡来数は順調に回復しているように感じました。下船後は少々時間があったことから「海の宇宙館」に立ち寄るなどして時間を使っていただいてから天売港フェリーターミナルにご集合いただき乗船して穏やかな海でウトウ、ケイマフリ、ヒメウ、ウミウなどを眺めながら進みました。羽幌港到着後はこのツアーで最も長い移動となり、まずは昼食を購入していただいてから再度出発し、道の駅でまずは休憩、その後は高速道路を走って途中のSAで休憩、その後、美瑛町からはようやく空が明るくなってきて、遠くにうっすらと十勝岳が見えるほど天候の回復が見えました。この日の宿泊地到着後は一旦お部屋に入っていただいてから再度ご集合いただき周辺を探鳥しました。雨は上がり少々蒸し暑く感じる中、周辺では当地の目玉であるアオバトが飛び回り、枯れ木にはニュウナイスズメが止まっていました。また林の中からはセンダイムシクイやキビタキのさえずりが聞こえてきていて、シマエナガの声が聞こえたことから見ていると巣立ったヒナを連れたシマエナガの一団が飛び回ってその姿を見せてくれました。また付近の木のてっぺんではオオルリが朗々とさえずっていて美しいブルーが印象的でした。そして最後は滝周辺で木に止まるアオバトを観察してこの日の探鳥を終えました。

22日、この日はこのツアーの大きな目的の一つであるギンザンマシコを探しに行くため早朝にホテルを出発しました。外はすっかり明るくなっていて天気予報では早朝まで現地は雨。ただその後は曇りとのことでしたがこの時間には早くも空には一部で青空が見え始めてきていました。探鳥ポイントに向かうために乗車しなくてはならないロープウェイは夏シーズンになると始発が08:00から06:30に変わります。我々のツアーでは気温が上がり陽炎が立ってくるとギンザンマシコがクリアに見られなくなること、また観光客が増える前に現地に行きたいといったことから始発が06:30に変わるタイミングに合わせてツアー企画することにしていて、ちょうどこの日が始発が06:30に変わる日なのです。出発当初は旭岳は霧に包まれていて、その姿は全く見ることはできず心配でしたが、現地が近づいてくると空には青空が見えてきていました。ただ到着直前には再び霧が立ち込めてきてしまい残念ながら霧の中でした。予定通り06:30のロープウェイに乗って現地を目指すと霧は次第に濃くなり、到着した現地はかなり濃い霧に包まれていて気温12℃でした。ただ天気予報は悪くなかったことから予定通り歩き出して観察をする場所に向かいました。もうすでに20年近く当地に来ていますが、とにかく年々残雪が減り、過去、雪が積もっていた遊歩道はほとんど積雪がなく驚かされました。周囲を見るとキバナシャクナゲやエゾノツガザクラ、チングルマといった可憐な花々が美しく、この日は特にキバナシャクナゲの花が見事でした。そして到着すると霧が残ってはいたものの、早くもギンザンマシコのつがいが間近にやってきてしばらくハイマツに止まっていてくれました。その後は次第に視界が広がってくる中、ギンザンマシコの出現は続き、真っ赤なオスと若草色のメスが並んでハイマツの実をついばみ、やや距離があるハイマツに止まってさえずっている真っ赤なオスの姿が見られるなど、たっぷりとその姿を楽しませてくれました。また周辺では真っ赤な喉を震わせてさえずるノゴマをはじめ、カヤクグリ、ルリビタキ、飛び回るツツドリも見られ、順調に観察が進んだことから予定よりも30分ほど早く下山し売店で時間を使っていただいてから旭川空港に向いました。

本州の梅雨を避けて北海道に来るという感覚でツアー企画しているものの、今年は本州の梅雨入りが大幅に遅れ、北海道内の天気が悪いという珍しいパターンに当ってしまったツアーで、特に天売島で天候に恵まれなかったことは心残りでした。道北の原生花園ではシマアオジには出会えませんでしたが、ツメナガセキレイ、マキノセンニュウといった最近見づらくなってしまった2種に出会うことができ、ほかにもベニマシコ、オオジュリン、ホオアカ、コヨシキリ、ツツドリ、カッコウ、アカエリカイツブリが見られ、天候が悪いながらもオオジシギのディスプレイフライトも見られました。天売島では天候に恵まれなかったものの、押し寄せるかのように群れ飛ぶウトウの帰巣風景を見ることができ、ボートクルーズではウミガラス、ケイマフリ、ウトウ、ヒメウなどをたっぷりと観察できました。そしてこのツアーの目玉でもあるギンザンマシコは見る見る条件が良くなったことから真っ赤なオス、若草色のメスを堪能することができました。北海道は魅力的な場所で季節が変われば目的となる鳥も変わり何度訪れても新たな出会いや感動があり飽きることがありません。またの機会にぜひ北海道にお出かけください。この度はご参加いただきましてありがとうございました。

石田光史

ノゴマ 撮影:高崎孝二様

 

ウトウ 撮影:佐久間昭宏様

 

ヒメウ 撮影:高崎孝二様

 

ツメナガセキレイ 撮影:佐久間昭宏様

 

カヤクグリ 撮影:高崎孝二様

 

ウミガラス 撮影:佐久間昭宏様

 

ウトウ 撮影:高崎孝二様

 

マキノセンニュウ 撮影:佐久間昭宏様

 

ケイマフリ 撮影:高崎孝二様

 

ケイマフリ 撮影:佐久間昭宏様

 

ノゴマ 撮影:佐久間昭宏様

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