【ツアー報告】初夏の富士山 北富士演習場と富士山五合目 2024年6月9日~10日

(写真:コヨシキリ 撮影:坂東俊輝様)

野鳥の宝庫としてしられている富士山。亜高山帯の野鳥たちが間近に見られる富士山五合目は有名ですが、麓の森林帯はコルリの生息密度が日本一と言ってよい高さで、ほかにもキビタキ、センダイムシクイ、クロツグミ、ヒガラなどさまざまな小鳥たちが生息しています。今回はこれら亜高山帯の野鳥、麓の森林帯の野鳥たちを観察することに加え、新たに決められた日にしか入ることができない北富士演習場内で、ノビタキやホオアカ、コヨシキリ、カッコウ、コムクドリ、ビンズイといった草原性の野鳥たちも探す行程を加えた富士山麓探鳥に特化したコースにしてみました。ちょうど梅雨入り直前ということもあって事前に天気予報をチェックし続けていましたが、今回は荒れた空模様にはならないものの、初日夜から雨が降り、翌朝まで雨が残るとの予報が出ていて、どのタイミングで雨が止むのかが気がかりでした。

9日、そもそもこのツアーは東京駅前集合を通常のツアーよりも遅い09:00にして、遠方からのお客様にもご参加いただきやすくしています。余裕を持った集合時間にしていることもあってか特に問題なく順調にご集合が完了したことから、予定通り出発して富士山麓を目指しました。バスは曇り空の中央自動車道を走り、車内ではこのツアーで見られる可能性が高い種の解説や前回のツアーの状況などを話しながら進みました。まずはサービスエリアで休憩をとりましたが、空は相変わらず雲が多く雨が降ってくるのではないかと思ってしまうほどでした。休憩後は富士山に向かってさらに進み、到着した道の駅でバスを降りると思っていた以上に冷え込んでいて、空は相変わらずどんよりとしていました。まずはやや早めの昼食をとっていただき、同時に観察機材の準備もしていただいてから、いよいよ北富士演習場に入りました。北富士演習場は基本的には特定の日しか立ち入ることができないため、通常であればここぞとばかりに走り回るオフロードバイクや山菜を採る地元の方の姿が目立つのですが、この日はどちらかというとあまり人の姿はありませんでした。我々は場内を走りながらバスが安全に止められる場所でバスを降りて観察をするといったスタイルで観察を開始し、最初にバスを降りた場所では、早速、複数のホオアカがさえずっていて、望遠鏡で見てみると胸の鮮やかな模様がくっきりしていて美しく、付近の草にはノビタキのオスが止まっていました。観察していると周辺からはホトトギス、キジ、ヒバリの声が聞こえ、その後は標高を上げて一番外のルートを走ってみました。ただ標高を上げると徐々に風が強くなってきて一気に冷え込んできました。そのため何カ所かでバスを降りて探鳥しましたが、ほとんど鳥の姿がなく、2時間ほどが経ったこともあって一旦道の駅で休憩を取ることにしました。その後は再び北富士演習場に入り、逆回りで比較的近い別のエリアに行ってみました。まずは電線に止まっているモズが見られ、秋から冬にかけて平地で見られる個体とは異なった印象の姿を見ることができました。さらに進むとここではホオアカ、ノビタキよりもコヨシキリが目立ち、他にもなぜか尾羽がないウグイスが枯草に止まってさえずっていました。そして時間的にはやや早かったのですが、曇っていて周囲が薄暗いせいか、早くもオオジシギのディスプレイフライトが始まり、最初は1羽でしたがいつのまにか2羽になって、我々の頭上で騒がしく羽音を立てながら急上昇、急降下を繰り返していました。そして最後は遠くの木のてっぺんで鳴くカッコウを見てこの日の探鳥を終えました。結果的にはいつ雨が降ってきてもおかしくない空模様だったにも関わらず、雨が降ることなく終えることができました。

10日、前日の天気予報を見ると各社07:00までは雨との予報だったことから、この日は出発時間を1時間遅らせて06:00に出発することにしました。ただやはり予報通り06:00の時点ではまだまだ小雨が降っていました。どうしようかと悩みましたがひとまず探鳥地に行ってみることにしました。到着する意外にも雨はほとんど止んでいたことから探鳥を開始し、コルリを探してみましたが声いずれも遠く、そのため場所を変えてみました。ただここでもキビタキのさえずりは聞こえるもののコルリの気配がなかったため一旦、朝食の時間にすることにして買い物後、道の駅に移動しました。この頃からは空はどんどん明るくなってきていて晴れてくるのは時間の問題かなといった感じでした。朝食後は再び探鳥に向い、途中ではオス1羽、メス2羽の計3羽で佇んでいるキジに出会うことができ、森の中ではイカルが飛び回り、センダイムシクイ、キビタキ、そしてコルリのさえずりは聞こえていましたが、ここでもコルリに出会うことはできず、また五合目は晴れてきているとのことから富士山五合目に向かうことにしました。スバルラインを進むと空は次第に青空に変わってきていて、到着した駐車場では富士山の頂を見ることはできませんでしたが、針葉樹林からはルリビタキ、メボソムシクイのさえずりが聞こえてきていました。その後は準備を整えてから坂道を下り、小さな水場にやってくる高山の野鳥たちを観察しました。富士山麓は少々雨が降っても水溜まりができない地質のため、こういった水場は貴重で小鳥たちがやってくるのですが、前日夜にある程度雨が降ったせいもあってか、この日はなかなか野鳥たちが姿を見せてくれませんでした。ただ午前中のうちに目的だったキクイタダキが周囲を飛び回って姿を見せてくれ、ヒガラは間近にある針葉樹で巣材を集めていました。そして晴れ間が増えてきた午後からはようやく鳥たちの動きが良くなり、ウソのつがいが何度かやってきて水浴びをする様子を見せてくれ、時を合わせるかのように青色が鮮やかなルリビタキのオスもやってきてくれました。またヒガラは複数羽がやってきて水浴びをしてくれました。やや霧がかかった周囲の針葉樹林からはルリビタキのさえずりが途絶えることなく聞こえ、周辺を歩かれたお客様はホシガラスの声も聞けたようでした。そして予定通り14:30に駐車場の戻ると、予想以上に雪を冠した富士山頂がきれいに見えていました。

今回の富士山ツアーは前回に引き続いて天候の不安がありましたが、結果的には雨は初日の夜から翌日の早朝までだったことから観察にはほぼ影響なく終えることができました。初日は終日曇天ながら草原の鳥たちは元気で、ホオアカ、ノビタキ、コヨシキリが各所でその姿を楽しませてくれ、ほかにもカッコウ、ヒバリ、モズ、キジなどが見られました。そして主役のオオジシギの豪快なディスプレイフライトは見事でした。翌日は早朝が雨とのことで出発時間を遅らせることで雨を避けることができ、麓の森ではコルリやセンダイムシクイ、キビタキのさえずりが聞こえ、キジ、イカル、ホオジロなどは見られたものの、主役のコルリは姿を見ることができず残念でした。富士山五合目では次第に晴れてくる中、ヒガラ、ウソ、ルリビタキ、キクイタダキなどを見ることができました。この度はご参加いただきましてありがとうございました。

石田光史

ウソ 撮影:川井れい子様

 

ノビタキ 撮影:山尾文明様

 

ヒガラ 撮影:坂東俊輝様

 

ホオアカ 撮影:川井れい子様

 

オオジシギ 撮影:山尾文明様

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