【ツアー報告】初夏の戸隠高原ハイキング 2024年5月19日~20日
(写真:クロツグミ 撮影:hitaki様)
思い起こせば20年ほど前に私が初めてバードガイドのお手伝いという形で訪れたのがこの戸隠高原でした。その後、担当を引き継いでから15年ほどが経ち、秋のみの企画だったツアーを春も企画するようになって10年ほどが経ちました。私的な感覚ではありますが、数多くある国内の探鳥地の中でも特に好きな場所で、若いころからかなりの日数通い続けています。そのせいか特に得意な場所になりつつあり、毎回訪れるのが楽しみな場所でもあります。初夏の戸隠高原の特長といえばとにかく可愛らしい小鳥類が多く、また見やすいことでしょう。特に目立つのがキビタキとコサメビタキでクロツグミとの出会いの確率が高いことも忘れてはいけません。ほかにも、ニュウナイスズメ、サンショウクイ、アオジ、ノジコ、コルリ、ミソサザイ、また留鳥のコガラやエナガ、キバシリ、アカゲラ、オオアカゲラ、ゴジュウカラなどが存分に楽しませてくれます。珍鳥と呼ばれる種に出会う確率は極めて低いものの、美しい風景と野鳥、そして花々に囲まれる2日間はまさにバードウォッチングの醍醐味が凝縮されているといっても過言ではないでしょう。今回はそもそもの天気予報が若干変わってしまい、初日は晴れから曇りに、そして2日目は雨の予報になっていました。ただ2日目は流動的で早めに雨が去ってくれればと思っていました。
19日、前日は長野市内に宿泊してこの日を迎えましたが、天気予報がコロコロ変わってしまい、そもそも晴れだった天気予報は曇りに変わってしまい、朝からどんよりとしていました。集合時間の頃には天気はやや回復傾向で、空が明るくなってきていて気温もぐんぐん上がっていました。11:10に長野駅新幹線改札前にご集合いただいた後は資料を配布してからバスに乗車していただき、まずは今回お世話になるホテルに向かいました。途中、飯綱高原からバードラインを通って戸隠高原に向かう道は瑞々しい新緑が美しく、さらに標高を上げて中社を過ぎたころからは一部に残雪が見えるいつもの戸隠連山の風景が出迎えてくれました。ホテル到着後は一旦、お部屋に入っていただき各自昼食、観察機材の準備を整えてから再度バスにて出発しました。今回は翌日の天気予報がかなり悪く、雨が降っている状態で木道での探鳥は場所的に狭くて困難と判断し、この日のうちに木道での探鳥を多めにしようと考えました。そのためまずは鏡池に向かったものの短時間で終えて、残りの時間のすべてを木道での探鳥に使うことにしました。鏡池ではウグイス、ツツドリの声がする中を歩き、まずは湖面いるオシドリのオスとカルガモを見てから森に入ってみました。足元に咲くニリンソウを見ながら探鳥するとキビタキ、コサメビタキ、そして遠くからはクロツグミのさえずりが聞こえ、ここではまず営巣中のコサメビタキを見ることができ、間近の枝には黄色が鮮やかなキビタキが止まってさえずっていました。観察しているとコゲラ、シジュウカラ、エナガなども見られ、その後は今にも雨が落ちてきそうな中、予定よりも少々早く移動しました。まずはシラネアオイ、トガクシショウマの花を見ていると、ここで繁殖中のキセキレイが飛び回っていて、その後、マガモのつがい、カルガモが見られ、付近ではカイツブリが浮き巣で抱卵しているようでした。またキセキレイはここで餌を採っているようで、浮遊している昆虫を飛び回りながら採っては杭に止まるといった行動を繰り返していました。その後はオオアカゲラをしばらく観察し、観察後はさらに歩き、さえずるウグイス、木の幹を登るキバシリ、アカゲラが見られ、トイレに立ち寄ってからは木道を集中的に歩いてみました。クロツグミ、ノジコはよくさえずっていましたが、じっくり観察することはできず、ただキビタキやアオジ、そして間近に飛んできたゴジュウカラはしっかりと見られ、最後はカケス、そして突然さえずり出したイカルを見ることができ、かなり薄暗くなってきたため17:30にこの日の探鳥を終えました。パラパラと小雨が落ちてくる時間帯もありましたが、観察には影響はなく幸いでした。
20日、この日はそもそも天気予報が悪かったことから時間ごとの天気予報を見ていましたが、早朝ほど天気が悪い予報だったので一応06:30から早朝探鳥を予定しました。ただ早朝は激しい雨に加え、霧が出ていたことから探鳥は中止し08:00から朝食をいただきました。ただ天気予報が当たったようで朝食を食べている頃には雨は上がり、みるみる青空が広がってきてくれました。出発の09:00には幸いなことに雨は上がっていて空も一部に青空が見えていました。早朝探鳥ができなかったことから、早速この日は森に向いました。月曜日、しかも雨上がりということもあって前日に比べると閑散としていて探鳥には良いように思えました。早速、川沿いではミソサザイがせっせと餌を探し、森に入ると思った以上に鳥のさえずりが多く聞かれ、クロツグミ、ノジコ、アオジ、キビタキの声が聞こえていました。木道を進むと新緑の木でアオジがさえずり、よく似た声のノジコもさえずっていました。さらに進むとちょうど繁殖中のコサメビタキがいて巣の上にいる親鳥の尾羽が見えていました。そのためやや距離をとってみていると周囲を親鳥が飛び回っていて頻繁に餌を運んでいました。観察中にはアカハラが飛んできていて、ほかにもキビタキ、コガラ、シジュウカラなどが見られました。その後は木道を一周してから一旦、場所を変えてみることにしましたが、バスを待っている間にたまたまハチクマのオスが間近を旋回飛翔する姿を見ることができました。現地に到着した頃からはやや雲が厚くなっていましたが、川沿いではキセキレイ、コサメビタキが飛び、アカゲラとオオアカゲラが同じ木に止まっていました。また林の上をノスリが飛んでいて地面を歩くアカハラも見られました。園内に入るとモズが飛び、アオゲラのけたたましい声がしたかと思うと目の前の木を登り始めました。さらに歩くと再び地面を歩くアカハラに出会い、ほかにもカワラヒワ、キセキレイも見られ、最後は高い木に群れているイカルが見られました。そしてちょうどお昼を過ぎたことから一旦ホテルに戻り昼食の時間としました。昼食は戸隠高原ツアーの隠れた目玉である戸隠蕎麦をいただき、最後の1時間半ほどの時間はここまで見られていないコルリやクロツグミを探して木道エリアで探鳥することにしました。残念ながらコルリのさえずりは聞こえませんでしたが、クロツグミが間近に朗々とさえずりはじめたため近づいて探してみると、木に止まってさえずっているクロツグミが見られました。その後もクロツグミの動きがあったため待っていると、何度となくクロツグミが付近を飛び回り、結果的には目線ほどのよい場所に2度止まってくれ、意外なほどじっくりとその姿を堪能することができました。時間がきたため道を戻ると天候の回復に合わせるようにアマツバメの群れが上空を飛び回り、最後にサンショウクイが頭上の木にやってきてくれました。
今回は天気予報が悪い方に当ってしまい、結果的には早朝探鳥ができない状況になってしました。ただ一方で天候の回復は想定よりも早かったため、日中の探鳥は両日ともに大きな影響はありませんでした。主役の中の1種であるコルリが見られず残念でしたが、クロツグミをじっくり観察する機会が何度もあったことは幸いでした。またキビタキ、コサメビタキ、ノジコ、アオジ、サンショウクイ、ニュウナイスズメ、アカハラといった夏鳥たちに加え、オオアカゲラ、アオゲラ、アカゲラ、ゴジュウカラ、キバシリ、ミソサザイ、コガラ、エナガなどの小鳥類総登場といった感じで、今回はハチクマやノスリの飛翔も見ることができました。この度はご参加いただきましてありがとうございました。
石田光史