【ツアー報告】初夏の戸隠高原ハイキング 2024年5月17日~18日
(写真:コルリ 撮影:緑川裕子様)
思い起こせば20年ほど前に私が初めてバードガイドのお手伝いという形で訪れたのがこの戸隠高原でした。その後、担当を引き継いでから15年ほどが経ち、秋のみの企画だったツアーを春も企画するようになって10年ほどが経ちました。私的な感覚ではありますが、数多くある国内の探鳥地の中でも特に好きな場所で、若いころからかなりの日数通い続けています。そのせいか特に得意な場所になりつつあり、毎回訪れるのが楽しみな場所でもあります。初夏の戸隠高原の特長といえばとにかく可愛らしい小鳥類が多く、また見やすいことでしょう。特に目立つのがキビタキとコサメビタキでクロツグミとの出会いの確率が高いことも忘れてはいけません。ほかにも、ニュウナイスズメ、サンショウクイ、アオジ、ノジコ、コルリ、ミソサザイ、また留鳥のコガラやエナガ、キバシリ、アカゲラ、オオアカゲラ、ゴジュウカラなどが存分に楽しませてくれます。珍鳥と呼ばれる種に出会う確率は極めて低いものの、美しい風景と野鳥、そして花々に囲まれる2日間はまさにバードウォッチングの醍醐味が凝縮されているといっても過言ではないでしょう。今回は本来は涼しい戸隠高原でありながらも週末にかけて最高気温が25℃を超えるとの予報が出ていて、天候は両日ともに快晴との予報が出ていました。
17日、この日の東京都内は早朝から快晴で、金曜日ともあって混雑している東京駅はすでに半袖でも問題ないくらいの暑さになっていました。東京駅を出発して長野駅に向かう途中、車窓から外を見ていましたが、空は見事に晴れ渡り風景は初夏のような印象で暑くなることは容易に想像ができました。長野駅到着後はお客様と合流し、資料を配布してからバスに乗車していただき、まずは今回お世話になるホテルに向かいました。途中、飯綱高原からバードラインを通って戸隠高原に向かう道は瑞々しい新緑が美しく、さらに標高を上げて中社を過ぎたころからは一部に残雪が見えるいつもの戸隠連山の風景が出迎えてくれました。ホテル到着後はロビーをお借りして各自昼食、観察機材の準備を整えてから再度バスにて出発しました。この日はまずは鏡池に向かうことにしました。以前は往復歩いていましたが、ここ数年は歩く距離を軽減する意味から歩いてはおらず、バスで駐車場まで送っていただき周辺の湿地帯を歩いています。この日はツツドリの声を聞きながら歩き、林に入るとコサメビタキが間近にやってきてじっくりとその姿を見せてくれました。また湖面には渡り途中と思われるコガモの姿があり、ほかにもカイツブリ、オシドリが見られました。その後はまだまだ時間があったことから別の場所に移動しました。平日にも関わらずなかなか大盛況で賑やかでしたが、川沿いの林ではコサメビタキが飛び回り、川石にはキセキレイが止まっていました。広場まで移動すると2羽のアカハラが歩きまわり、さらに進むともう1羽が地面を歩きながら餌を探していて、付近にはモズの姿もあり、モズも地面に降りては餌を採っていました。するとアカゲラが地面に降りて歩きまわりながら餌を探す様子が見られ、しばらくの間、その様子を観察することができました。その後は新芽をついばむコガラ、メジロ、シジュウカラが見られました。そして夕方に合わせて別に場所に向かいました。シラネアオイやサンカヨウの花を見ているとキセキレイがやってきて、間近に止まってその姿を楽しませてくれ、みどりが池にはカイツブリとマガモの姿がありました。小道を進むとキビタキが止まり、ヒガラが新芽をついばんでいました。木道までくるとクロツグミの地鳴きが聞こえてきていたためしばらく見ていましたが残念ながら姿が見えなかったことから、さらに木道を歩いてみました。すると新緑の梢でノジコがさえずり、木道の杭に止まってミソサザイもさえずっていました。そして求愛給餌するヤマガラなども見られ、ようやく最後に木に止まるクロツグミのオスを望遠鏡で捉えて観察することができました。時間が来たことから来た道を戻ると、ここでもキビタキのオスが見られ、飛んできたサンショウクイが我々の頭上に止まってくれました。そして最後は間近に止まってさえずるアオジを観察してこの日の探鳥を終えました。
18日、この日も早朝から快晴。外に出ると想像以上に肌寒く感じたため冬用のインナーとフリースジャケットを着こむほどで、空気が澄んでいるのか、目の前の戸隠連山が美しく映えていました。ひとまず早朝に出発して早朝探鳥を行いました。土曜日ながらこの時間帯はまだまだ人影はまばらで、まずは昨日、声を聞くこともできなかったコルリを探してみました。森に入ると早朝だけあってキビタキ、アオジ、ノジコ、アカハラなどのコーラスが聞こえ、コルリのさえずりも聞こえてきていました。そのため声を頼りに探すと珍しく横枝に止まってさえずっているコルリがいたため、しばらくの間、じっくりと観察することができました。また付近にはサンショウクイの姿もあり、目線ほどの高さを飛び回っていました。木道を歩くと枯れ木に止まってさえずっているアオジを間近に観察することができ、さらに進むとよく似たさえずりのノジコが新緑の木に止まってさえずっていました。さらに水芭蕉園ではやや茶色みがかったオスのキビタキがさえずっている姿も見ることができました。戻る途中では杭に止まってさえずっては羽繕いを繰り返しているミソサザイに出会うことができ、少しずつ接近して観察することができました。その後は一旦朝食に戻り、再出発後は再び探鳥を行いました。途中、この日もキセキレイに出会うことができ、この日はトガクシショウマの花を見ることができました。みどりが池にはマガモ、カルガモ、カイツブリの姿があり、付近でさえずっているウグイスを見ていると、突然、上空をハチクマのつがいが旋回飛翔していて、ツミが盛んにモビングを仕掛けている様子が見られました。その後は別ルートを歩いて水芭蕉園を目指しました。途中、アカハラが手が届くほどの場所にじっと止まり、その後は木に止まったことからしばらくの間、観察することができ、さらには美しい新緑の林でさえずっているキビタキを望遠鏡を使って観察することもできました。戻る途中ではクロツグミがさえずっていましたが姿を捉えることはできず、変わって周辺ではゴジュウカラのつがいやシジュウカラ、コガラ、ヒガラ、エナガなどが見られました。観察しているとそろそろ時間がお昼にさしかかったことから、一旦ホテルに戻り昼食の時間としました。昼食は戸隠高原ツアーの隠れた目玉である戸隠蕎麦をいただき、最後の1時間半ほどの時間は木道エリアで探鳥することにしました。日中の時間帯な上、気温がかなり高くなってしまったことからか、早朝ほど鳥の声はしませんでしたが、クロツグミが鳴いていた場所で待ってみました。相変わらずキビタキ、コサメビタキが林の中を飛び回り、クロツグミがさえずり出しましたが残念ながらこの日はその姿を捉えることはできませんでした。
早朝のひんやりした空気はいつもの感じでしたが、日中の暑さがやや想定外な2日間ではありましたが、今回の初夏の戸隠高原ツアーは両日ともに澄み切った青空の下で探鳥ができて幸いでした。年々、倒木が目立つようになり、森がやや明るくなってきている印象があるものの、キビタキ、コサメビタキはどこでも見られ、クロツグミ、コルリ、ノジコ、アオジ、サンショウクイ、ニュウナイスズメ、アカハラといった夏鳥たちに加え、オオアカゲラ、アオゲラ、アカゲラ、ゴジュウカラ、キバシリ、ミソサザイ、コガラ、エナガなどの小鳥類総登場といった感じで、今回はハチクマのつがいの飛翔も見ることができました。この度はご参加いただきましてありがとうございました。
石田光史