【ツアー報告】固有種と渡りの鳥たち 春の奄美大島 2024年4月13日~15日

(写真:アカヒゲ 撮影:藤田惠代様)

ここに行かなければ見ることができない固有種と固有亜種たちが豊富な奄美大島を訪れる春恒例のツアー。いつ来ても雨のイメージばかりですが、今回は最終日に雨マークがついてしまったものの概ね天気予報が良く安堵しました。現地では地元、奄美野鳥の会のスタッフが案内をしてくださるため安心できるものの、ツアーを担当するのが5年ぶりになるため3月の最終週に個人的に奄美大島を訪れて主に奄美自然観察の森を中心に下見をしておきました。思えば20217月に世界自然遺産に登録されてからは初めて訪れるため施設が変わっていることにも驚きました。

13日、前回のツアー後はそのまま奄美大島に残りましたが夜からは雨は激しさを増していて、この日の午前中もかなりの雨でした。ただ空港に向かうバスに乗ったころからは空には青空が広がりはじめ、空港に到着してお客様のご集合が完了したころには、すっかり真夏のように蒸し暑さになっていました。出発後は最初の探鳥地に向いました。この日も空き地にはかなりの数のハクセキレイの姿があり、この日もその中に混じる1羽のタイワンハクセキレイがいたことから、飛ばさないようにバスにて接近して車内から観察、撮影を行いました。その後はさらに蒸し暑くなってくる中、隣接する海岸に移動しました。全体的にはシギチドリ類の姿はすくなかったですが、この日はきれいな夏羽のオバシギ、ハマシギ、トウネン、そしてツルシギ、ダイゼンが見られ、観察後はこのツアーのメイン探鳥地である奄美自然観察の森に向かいました。途中、黒い雲に覆われた頃には小雨が落ちてきていましたが、到着時は再び晴れ間が見えていました。奄美大島の森は密林のため、実は小鳥を見ることがなかなか難しいのです。そのためうろうろと散策しても意外に成果が出ないといった傾向があるため、この日はまず展望の良い場所からルリカケスを狙ってみました。ただこの日はなぜかあまりルリカケスの気配がなく、サシバ、アマミヒヨドリ、アマミヤマガラ、リュウキュウメジロは見られたものの、ルリカケスは遠くの稜線に止まった姿を見るに留まりました。そのため場所を変えて林に入ってみました。するとまずはオーストンオオアカゲラのオスが枯れ木に止まって、葉についた昆虫を補食し始めたので意外なほどじっくりと観察することができました。その後はアカヒゲが頻繁に姿を見せ、水浴びをしたり、杭に止まったりとこちらも意外なほどしっかりと観察することができました。ルリカケスはなかなか姿を見せませんでしたが、最後になって2羽で現れて林内を移動し、最後はようやく見晴らしの良い横枝に止まってくれたことからその姿を見ることができました。そして帰り間際には枯れ木に止まって独特の声を響かせるズアカアオバトを見てこの日の探鳥を終えました。この日は奄美大島の食材が詰まったお洒落な夕食をいただき、その際に出た生姜ご飯で盛り上がりました。

14日、日の出は06:00ですが05:00にホテルを出発してこの日も奄美自然観察の森に向かいました。この日は数日前までは晴れ予報でしたが残念ながら天気予報が悪い方に変わってしまい、早朝は小雨、さらにバスが進むにつれて風も強まってきてしまいました。自然観察の森が近づくと地形的な問題からかさらに風が強まってきて濃霧も発生してきてしまいました。そのためこの時間は森に入っての探鳥は断念して林道をバスで走りながら探鳥しました。途中、道路上で餌を探しているキセキレイ、枯れ木に止まっているルリカケスなどが見られましたがアマミヤマシギに出会うことはできませんでした。観察後は一旦ホテルに戻って朝食をいただいてから再び奄美自然観察の森に向かいました。この時間は早朝に比べるとかなり空は明るくなってきていて期待が持てる状況でした。到着後は道路沿いを歩くとズアカアオバトが見られ、その後はやや薄暗いものの森に入ってみました。ここでは朗々とさえずっているアカヒゲの出現を待ちましたが、幸いなことにこの日も間近にさえずり出してくれ、しかもそれほど警戒する様子もなくじっくりと観察することができました。観察中にはオーストンオオアカゲラもやってきて幹をつつく様子も見ることができました。その後は一旦昼食の時間にしましたが、少々時間があったため再び森に入ってルリカケスを狙ってみました。森に入ると2羽のコゲラがにぎやかに動き回り、頭上の木にやってきては昆虫を捕食して嘴に咥えている様子が見られました。また周辺ではアマミヤマガラ、アマミシジュウカラも見られ、その後はさらに奥に入ってみました。するとルリカケスが飛んできてはくれたものの、密林の中に止まっていたためじっくりと観察することはできませんでした。その後は渡り鳥のポイントに移動。残念ながらみるみる空は真っ暗になり、風も強まってきてしまいましたが、この日も周辺で繁殖しているリュウキュウツバメを見ることができ、風に流されるように飛び回り、建物に止まる姿も見ることができました。また翌日早朝に訪れる予定の林道に立ち寄ってみましたが、どんどん雨足が強まったことからこれといった成果はありませんでした。

15日、前日からの雨は夜になってさらに激しさを増し、一時は雷鳴が轟く時間帯があったほどでした。もちろん翌日の天気予報も午前中を中心に雨とのことだったので心配していましたが、05:00の出発時にはなぜか雨は降っていませんでした。この日の早朝探鳥はアマミヤマシギやオオトラツグミを探すために林道に向いました。ただ残念ながら途中からは雨が降り出し、到着したころにはしっかりとした雨になっていました。まだまだ真っ暗な林道を進むと、この日もアマミヤマシギに出会うことはできませんでしたが、幸いなことにアマミノクロウサギに出会うことができヘッドライトに照らされながらも間近でじっとして餌を食べていました。一旦走って斜面に逃げ込んでしまいましたが、さらに進んだ場所で再びアマミノクロウサギに出会うことができ、この個体も逃げる様子もなくじっとして餌を食べていたことから驚くほどじっくり観察することができました。また周囲が明るくなってきてからは距離はあったもののオオトラツグミのさえずりが小雨が降り続く森に響いていました。その後は一旦ホテルに戻って朝食をいただき、朝食後の出発時はなぜかホテル周辺は一気に晴れてきていました。この日はどうするか迷いましたがルリカケスが今ひとつすっきりした感じで見られていないことから、奄美自然観察の森に行って時間いっぱい探鳥することにしました。森に入るといきなりリュウキュウサンショウクイが頭上に止まり、サンショウクイとは異なるやや濁った声で盛んに鳴いていました。ポイントで待つと、この日もなかなかルリカケスはやってこなかったもののオーストンオオアカゲラのメスが木の葉についた昆虫を捕食していました。するとようやくルリカケスのけたたましい鳴き声が聞こえ、1羽また1羽、と結局4羽のルリカケスがやってきて周辺に止まって騒ぎ始めました。その後は周辺をアカヒゲが動き回っているようで、ふと見ると間近な低木にアカヒゲのメスがじっと止まっていて、その後はオスも杭に止まっているなどゆっくりと観察することができました。ただ直後には雨が激しくなってしまったため雨宿りをし、ちょうど時間になったため探鳥を終えてこの日は昼食に奄美群島の郷土料理として知られている鶏飯をいただいてから空港に向いました。

今回は結果的には事前の天気予報ほど天気が悪かったわけではなかったですが3日間を通してめまぐるしく天候が変化する中での探鳥でした。渡りの鳥がほとんど見られなかったことは残念でしたが、固有種に関しては毎回苦戦して悩ましいアカヒゲがかなりじっくり見られ、美しい姿とさえずりが堪能できたことは幸いでした。またルリカケス、オーストンオオアカゲラ、ズアカアオバト、リュウキュウサンショウクイもじっくり見られ、今回はアマミヤマシギ、オオトラツグミは見られなかったものの、アマミノクロウサギを2度にわたってじっくり観察できたことも成果でした。この度はご参加いただきましてありがとうございました。

石田光史

アマミノクロウサギ 撮影:藤田惠代様

 

ルリカケス 撮影:藤田惠代様

 

オーストンオオアカゲラ 撮影:藤田惠代様

 

アカヒゲ 撮影:藤田惠代様

 

タイワンハクセキレイ 撮影:藤田惠代様

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