【ツアー報告】固有種と渡りの鳥たち 春の奄美大島 2024年4月10日~12日
(写真:アカヒゲ 撮影:小林浩様)
ここに行かなければ見ることができない固有種と固有亜種たちが豊富な奄美大島を訪れる春恒例のツアー。いつ来ても雨のイメージばかりですが、今回は最終日に雨マークがついてしまったものの概ね天気予報が良く安堵しました。現地では地元、奄美野鳥の会のスタッフが案内をしてくださるため安心できるものの、ツアーを担当するのが5年ぶりになるため3月の最終週に個人的に奄美大島を訪れて主に奄美自然観察の森を中心に下見をしておきました。思えば2021年7月に世界自然遺産に登録されてからは初めて訪れるため施設が変わっていることにも驚きました。
10日、ここ数日、東京は気温差が大きく初夏のような日もあれは最低気温が一桁の日もあるといった感じでした。前日は激しい雨になった東京もこの日は春のような陽気となる中、予定通り羽田空港にご集合いただいた後は資料の配布、この日の連絡事項をお伝えしてから搭乗して奄美空港に向いました。着陸直前に機体が大きく揺れることもありましたが、無事に奄美空港に到着。出発そのものが遅れたため予定よりも20分ほど遅れて最初の探鳥地に向いました。芝生にはコチドリの姿があり、砂地には複数のハクセキレイが見られ、その中に1羽ながらタイワンハクセキレイが見られました。その後は隣接する海岸に移動。駐車場付近ではアマミヒヨドリが見られ、海岸ではダイサギ、アオサギが群れる中、間近にツルシギ、セイタカシギを見ることができました。その後は小川沿いを歩き、コガモ、カイツブリ、オオバンを見てから、このツアーのメイン探鳥地である奄美自然観察の森に向かいました。この日は時間がそれほどなかったことから奄美大島の代表種であるルリカケスに絞ってみました。奄美大島の森は密林のため、実は小鳥を見ることがなかなか難しいのです。そのためうろうろと散策しても意外に成果が出ないといった傾向があるため、まずはポイントで待つことにしました。すると早くもルリカケスのけたたましい声が聞こえ、飛んできたルリカケスが木に止まって種子を食べ始めました。そのため意外なほどあっさりと良い条件で瑠璃色が鮮やかなルリカケスを見ることができ、待っている間にはオーストンオオアカゲラもやってきてくれ、気がつくとズアカアオバトがじっと止まっていました。
11日、日の出は06:00ですが05:00にホテルを出発してこの日も奄美自然観察の森に向いました。この日も晴れということで月が輝いていて、まだまだ真っ暗い時間のため空気が冷たく感じました。バスが進むにつれて空はどんどん明るくなってきていて、空と山の稜線がはっきりし始めた頃に林道を登り始めました。すると早速、道路の真ん中に佇むアマミヤマシギが見られ、さらに進むと今度は速足でちょこちょこ歩き回るオオトラツグミに出会うことができました。この時間はまだまだ林内は暗いためひとまず道路脇の明るい場所で探鳥を行いました。すると早速、ルリカケスが電線に止まってけたたましく鳴き、ふと見るとサシバが次々に北に向って飛んでいく渡りの風景も見られました。眺望の良い場所までくるとルリカケスが次々に眼下を飛び、中には数羽の群れて飛んでいく様子も見られ、枯れ木に止まった個体は望遠鏡を使って観察することもできました。またリュウキュウサンショウクイやアマミヤマガラも飛んできて枯れ木に止まり、ルリカケスが止まっていた枯れ木にはズアカアオバトも止まってじっくりとその姿を見せてくれました。観察後は一旦ホテルに戻って朝食をいただいてから再び奄美自然観察の森に向い、いよいよ観察が極めて難しいアカヒゲを探すことにしました。森に入るとさまざまな場所からアカヒゲの朗々としたさえずりが聞こえてきますが、密林に潜むアカヒゲの姿はなかなか見ることができません。ただこの春はとても見やすい個体がいたことからひとまずこの個体に賭けて時間を使うことにしました。するとものの10分もしないうちに間近にある木に止まってアカヒゲがさえずり出し、しばらくの間、じっくりち観察することができました。この個体はなぜか羽繕いとさえずりを交互に行っていました。その後は何回か見晴らしのよい横枝でさえずってくれたことから、過去にないくらいのじっくり度で観察をすることができました。そのため残った時間を少々場所を変えてオーストンオオアカゲラの出現を待ってみることにしました。ただこの時間は残念ながら出会うことができませんでしたが、アカヒゲのメスが餌を加えて動き回っている姿を見ることができました。その後は一旦昼食の時間にしましたが、少々時間があったため再びオーストンオオアカゲラを探してみました。するとこの時間は周囲から声がするなど気配があり、ようやく木の葉のついた昆虫をついばんでいるメスに出会うことができました。珍しく長時間に渡って採食していたことからじっくりと観察することができ、突然現れたカラスバトも一緒に見ることができました。その後は渡り鳥のポイントに移動。残念ながらこの日はこれといった渡り鳥の姿はなかったものの、周辺で繁殖しているリュウキュウツバメを見ることができました。またホテルに戻る途中には、翌日早朝に訪れる予定の林道に立ち寄ってみました。
12日、今回のツアーで初めてとなる雨予報。この日も早朝探鳥のため05:00に出発しましたが早くも小雨が落ちてきていました。林道に到着するとまだまだ真っ暗のため昨日同様にアマミヤマシギを探しながらゆっくりと走っていきました。ただ時間とともに雨足が強まってしまったからか、この日はアマミヤマシギの姿はありませんでした。ただバスを降りると周辺からはアカヒゲやリュウキュウメジロのさえずりが聞こえ、カラスバトの唸るような声も聞こえていました。やや雨が弱まったことから歩いてみると、ようやくオオトラツグミのさえずりが聞こえ、地面で採食行動をしていた個体が飛びたって林に入りました。そのためしばらく出現を待ってみましたが残念ながら出会うことはできませんでした。その後は一旦ホテルに戻って朝食をいただき、朝食後の出発時はホテル周辺は一気に晴れてきていました。この日はまず水田に行ってみました。途中、天気がコロコロ変わり、到着時は小雨でしたがいつの間にか雨は上がっていました。水田ではセイタカシギが歩きまわり、コチドリの姿も見られました。しばらくするとタカブシギの小群が飛んできて水田に降り、その中には1羽だけヒバリシギが混じっていました。観察していると周囲でハシブトガラスが騒いでいることから見てみるとハヤブサが飛んできてセイタカシギを狙って追い回していて、最後はハヤブサがハシブトガラスに追われていました。そして最後はわずかな時間ながら海岸に行ってみました。10日には見られなかったムナグロの群れが見られ、ほかにもキョウジョシギ、メダイチドリ、トウネンが見られ、この日は昼食に奄美群島の郷土料理として知られている鶏飯をいただいてから空港に向いました。
今回は最終日に雨が降ったものの観察には大きな影響はなく幸いでした。固有種に関しては毎回苦戦して悩ましいアカヒゲに関しては、たまたま見やすい個体がいたことから、過去最もよく見られたといっても過言ではないくらいで、美しい姿とさえずりをかなりじっくり観察することができました。またさらに見ることが難しいメス個体が見られたことも幸いでした。ほかにもルリカケス、オーストンオオアカゲラ、ズアカアオバト、カラスバト、リュウキュウサンショウクイもじっくり見られ、今回は早朝にアマミヤマシギ、オオトラツグミも見ることができました。渡り鳥は少なかったもののその分、固有種観察に時間をさけたことが逆に幸いしたのかもしれません。この度はご参加いただきましてありがとうございました。
石田光史