【ツアー報告】フォトツアー落石クルーズで海鳥を撮る! 2024年3月8日~10日

(写真:ウミバト 撮影:天野昌弘様)

バードウォッチングにはさまざまな分野がありますが、その中でもカモメ類、シギチドリ類、ミズナギドリ類は特に難解で縁が遠い印象があります。中でも海鳥類は船に乗らなくてはいけないというハードルまであることからさらに縁が遠い印象があるでしょう。今回はそんな海鳥類の中でも普段ほぼ見る機会がないウミスズメ類、中でも国内観察が極めて難しいと思われる小型ウミスズメ類を落石クルーズから撮影しようというかなり偏ったフォトツアーです。海況によって成果が大きく変わることから3日間という短期間ながら落石クルーズに2回乗船するという大胆な行程を組んでいます。今回乗船する落石クルーズは実は営業運行前から関わらせていただいていて私的にも何かと縁があり応援してきました。実際、ウミスズメ類の観察、撮影という点から考えると唯一無二なクルーズであることは間違いないでしょう。冬にはウミバトという謎めいたウミスズメ類が高確率で見られるほか、この時期にはようやくコウミスズメ、エトロフウミスズメといった小型ウミスズメ類が増えてきます。この冬もすでに何回か乗船していますが、この冬はウミガラスとの遭遇率が高く、ウミバトも通常よりかなり多く出会えています。

8日、3月だというのに前日の夜から都内で小雪が舞い始め、この日はある程度の積雪があるだろうとの予報が出ていましたが、早朝に外を見ると小雨は降っていたものの、交通に影響が出るような心配はないものと思いました。予定通り羽田空港にご集合いたいたことから

資料の配布、そして連絡事項をお伝えしてから羽田空港をやや遅れて出発して中標津空港に向かいました。現地が近づいてくると眼下には真白な大地が広がり、まだまだ真冬であることが印象付けられました。現地到着後は撮影機材の準備をしていただいてからバスにて出発しましたが、意外にも空は見る見る晴れてきて、視界に海が入ってくる頃には見事な快晴の中、海上には点々と流氷が見えました。この日は野付半島での探鳥のため、半島を先端に向って走ると左手には雪を冠した国後島が見え、海上に点々としていた流氷は次第に大きな塊に変わってきていました。途中、杭に止まっているオジロワシ、オオワシを撮影し、海上にはクロガモの群れやシノリガモ、ウミアイサ、そして飛び回るオオセグロカモメが見られました。この冬はとにかくベニヒワの姿をよく見かけていたことから探してみると、10羽程度の小群で飛び回るベニヒワの姿があり、バスを降りて接近して撮影しました。地面を這うように動き回りながら餌を探しているようで、なかなか良い場所には出てくれませんでしたがジワジワ接近しながら撮影することができ、気が付くと美しい夕日が野付湾に沈んでいく様子も見ることができ、撮影後は道の駅で休憩しその後は根室市内にあるホテルに向かいました。根室市内に入ると小雪が舞っていました。

9日、この日は昨夜の雪は止み、意外にも早朝から快晴でした。ただ午前中の落石クルーズはすでに欠航が決まっていたことから、午前中は根室周辺の探鳥地をめぐりながら時間を使い、午後から乗船できるかの回答を待つことにしました。そのため朝食後はまず根室半島の漁港に行ってみました。この冬は流氷が納沙布岬よりも南側に来ているとのことで心配はしていましたが漁港はほぼ流氷に埋め尽くされていました。ただ北側の港は海面が見えていたため行ってみるとスズガモ、キンクロハジロ、ホシハジロ、クロガモ、ウミアイサ、ヒメウの姿があり、やや距離はあったもののコオリガモのつがいも見られました。その後はさらに戻ってみました。園内に入るとヒガラ、シロハラゴジュウカラ、コゲラの混群に遭遇し、しばらく観察しているとキバシリがやってきて、カラマツの目線ほどの高さに止まってじっくりその姿を楽しませてくれました。さらにはハシブトガラ、キクイタダキも見られ、最後は飛翔するオオワシも見られました。その後は漁港に立ち寄りましたが根室半島の北側にある港のため、かなりの流氷が押し寄せていて、わずかに開いた海面にはウミアイサ、ハシビロガモの姿があったのみでした。その後はさらに落石港に近い漁港に行ってみました。今年はとにかくカモ類が少ないのですが、ひとまず一番外側の港に行ってみました。ここでもカモ類の姿は少なかったですが、シノリガモ、クロガモ、アカエリカイツブリが見られ1羽で餌を探しているケイマフリの姿がありました。しばらく見ていると何度も潜水して餌を捕っていました。ただここで今日の午後も落石クルーズの欠航が決まってしまったため、その後は道の駅で休憩を挟んでから各自昼食を購入していただきました。まずは漁港から観察を開始しましたが意外なことにここもかなりの流氷が入っていました。ただ小さな港の中にケイマフリがいたことからバスを降りて低い位置から撮影することができました。また堤防にはオオワシ、オジロワシが止まっていて小競り合いをしているようでした。その後は岬まで行きました。ここではノスリがホバリングし、オジロワシが飛んでいる中、岬方向に歩いていってみました。眼下まで流氷が押し寄せてきていましたが2頭のラッコの姿があり、チシマウガラスをご覧になった方もいらっしゃいました。その後は休憩を挟んで根室まで戻ると、途中でつがいと思われるタンチョウがいたことから氷に閉ざされた平原を歩くタンチョウという珍しいシーンを撮影することができ、最後は春国岱に立ち寄って飛び回るシロカモメ、そして塒に向かって次々に飛んでいくオオハクチョウを撮影してこの日を終えました。

10日、この日は朝から晴れていましたが雲が通過するタイミングで小雪が舞っていました。ただ根室市内は全くの無風で一安心といった感じでした。予想では波は1.4mとやや高めながら風は北よりの風3mとかなり収まってきているようでした。朝食後はいよいよ落石クルーズに乗船できるとのことで落石港にある待合室に向いました。ただ驚いたことに落石港の中にまで流氷が押し寄せてきていて、その結果いつのも場所からは乗船できず港の一番端の海面が開いている場所からの乗船となりました。漁港内ではオオハクチョウ、ウミアイサ、ホオジロガモの姿があり、テトラポットにはヒメウ、シノリガモが止まっていました。快晴の中、外洋に出るとやはりまだまだうねりが残っていて、ウミスズメ類を探すには最悪ではないものの好条件ではありませんでした。またこの日は出発からやや大回りでユルリ島を目指しましたがユルリ島付近までは全くウミスズメ類が見られない異例の状況でした。ただようやく複数のケイマフリの姿があり、そこの混じるように浮いている冬羽のウミガラスに出会うことができ、この冬の落石クルーズの傾向がいきなり出る形となりました。その後はケイマフリに混じるアリューシャンウミバトに出会うことができましたが島に近く、波が高かったため接近はかなり難しい状況でした。ただカモ岩付近ではラッコが何回か見られ、合わせてウミバトを間近に見ることができ、ここでは波が穏やかだったことか十分な撮影ができました。戻る途中では遠くに流氷の帯が見られ、ここまでかなり少なかったクロガモの大群に出会うことができ、次々に飛び立つ様子は圧巻でした。またコオリガモもかなりの数が見られ、群れで飛び回るビロードキンクロの姿も見事でした。いずれにしても落石クルーズで漂う流氷を見ることは初めでだったのでかなり驚きました。

まず今回は南岸低気圧の通過に伴って道東地方も風が強く、結果として海上のうねりがなかなかとれず、2度乗船する予定だった落石クルーズに1度しか乗船できなかったことは残念で、いきなり海鳥観察をリスクの部分が出てしまいました。ただ欠航の代替えとして探鳥を行ったことから、漁港内にいるケイマフリの撮影がじっくりできたことは幸いで、ほかにもベニヒワ、タンチョウ、ハシブトガラ、ヒガラ、キバシリ、キクイタダキなども撮影できました。落石クルーズは乗船はできたもののうねりは完全には収まっておらず、波に視界を妨げられる中での撮影となってしまいました。小型ウミスズメ類に出会えなかったことは残念でしたが、ウミバトをじっくり撮影できたほか、ケイマフリは繁殖羽、中間羽、非生殖羽とさまざまを撮影でき、ウミガラスも間近に見られました。また落石クルーズから初めて見た流氷帯は見事な景観で、そこに群れるクロガモ、コオリガモ、そしてビロードキンクロの群翔も見事でした。今後もウミスズメ類の観察、撮影においては唯一無二のこの落石クルーズに乗船するツアーを企画していこうと思いますのでまたの機会、ぜひご乗船下さい。この度はご参加いただきましてありがとうございました。

石田光史

クロガモ 撮影:鶴田美津子様

 

アリューシャンウミバト 撮影:島田真司様

 

キクイタダキ 撮影:鶴田学様

 

オジロワシ 撮影:天野昌弘様

 

ベニヒワ 撮影:小林浩様

 

ウミガラス 撮影:日下部桂子様

 

ケイマフリ 撮影:鶴田美津子様

 

ウミバト 撮影:島田真司様

 

チシマウガラス 撮影:鶴田学様

 

タンチョウ 撮影:天野昌弘様

 

コオリガモ 撮影:小林浩様

 

ビロードキンクロ 撮影:日下部桂子様

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