【ツアー報告】大洗の海鳥と涸沼の猛禽類 2024年1月16日
(写真:ハイイロチュウヒ 撮影:佐藤幹夫様)
平成27年にラムサール条約登録湿地となった茨城県の涸沼と海鳥たちが楽しめる大洗海岸をセットにした毎冬恒例の日帰りバスツアー。ここまでずっと涸沼の主役であったオオワシが残念ながら数年前から渡来しなくなってしまいました。ただ、頭が黒く全体的に白黒のコントラストが美しい大陸型チュウヒが渡来していることからこのツアーの新たな主役になってくれました。しかしながらこの大陸型チュウヒも渡来しなくなってしまったことからどうしようかと思っていると、この冬はハイイロチュウヒのオスが渡来しているとのことで、今回は最後にハイイロチュウヒを狙う行程にしてみました。そこから僅かな場所にある大洗海岸は海鳥たちの宝庫で、魅力的なカモ類が見られることから数ある日帰りバスツアーの中でも毎回観察種数が多くバリエーションが豊かなことがこのツアーの特長です。この日は気温が低いとの予報が出ていましたが、天気は概ね良好との予報でした。
16日、気温は低いながらも早朝から晴天の東京駅前を予定通り08:30に出発してこの日はまず常磐自動車道を走って茨城県方面を目指しました。移動中のバス車内では今日見られそうな鳥の解説をしながら進め、途中にあるサービスエリアで観察機材準備をしていただいてから再度出発し、まずは涸沼の西端にある畑地から探鳥をスタートしました。ただ空を見上げると怪しげな雲がかかり雪雲かなと思っていると、驚いたことに小雪が舞い始めました。畑地ではたまたまトラクターが畑を耕していたことからタゲリが群れ、ほかにもアオサギやハクセキレイ、セグロセキレイ、タヒバリの姿もありました。また数羽のオオハクチョウが飛んできては畑地に降りて餌を探していました。堤防に上がると雪の勢いが増す中、枯れ木にシメが2羽止まり、建物にはハヤブサが止まっていました。その後は次のポイントに移動しようかと思いましたが、たまたま電線にコチョウゲンボウのメスが止まっていたことから観察することができ、電柱にはノスリの姿もありました。その後は涸沼が一望できる公園まで行き、堤防上からかなりの数で群れているスズガモが見られ、ほかにもハジロカイツブリ、カンムリカイツブリが見られ、広場ではツグミ、メジロが見られました。この頃には時間もそろそろお昼になったことから一旦、大洗にて各自昼食をとっていただき、午後からは大洗海岸をめぐりました。バスを降りると海からの風がかなり冷たく感じましたが、海上や岩礁には無数のヒドリガモが群れ、それに混じるように美しいシノリガモの姿上がり、ウミアイサのメスが見られました。またこの日は最近、あまり見かけなくなってしまったミミカイツブリが良い条件で見られ、ここでは2羽が寄り添うように浮いていました。さらに海沿いに歩くと岩礁にはウミネコ、セグロカモメ、オオセグロカモメがたたずみ、ウミウ、ヒメウの姿もありました。また別の岩礁ではカルガモ、ヒドリガモに混じって数羽のミユビシギがせっせと餌を探し、海だというのにカワセミも現れました。さらに進むと岩礁を歩きまわるクロサギが見られ、ふわふわとした独特の飛翔を見ることもできたほか、付近では数羽のハマシギも見られ、海上を眺めるとアカエリカイツブリ、ミミカイツブリが浮いていました。その後は周辺の小さな漁港を見ながら再び涸沼を目指して移動し、河口では3羽のヨシガモが見られ、間近にハジロカイツブリが浮上しました。そして夕方の時間に合わせて涸沼にあるヨシ原に移動しました。さすがにこの頃からは風は刺すように冷たくなってきていました。堤防に上がるとスズガモ、キンクロハジロ、ホシハジロ、カルガモが群れ、背後から飛んできたハイイロチュウヒのオスが逆光に照らし出されるように畑地を飛んでいました。また風を利用してホバリングするミサゴが現れ、猛スピードで飛んできたハヤブサが我々の上空を通過していきました。その後は日没に合わせるようにチュウヒとハイイロチュウヒのメスがヨシ原を飛び、風に飛ばされるかのようにハイイロチュウヒのオスが飛んできたのを見てこの日の探鳥を終えました。
主役不在かと思われた涸沼ですが、この冬はハイイロチュウヒが渡来してくれ、この日も夕方にオス、メスともに見ることができたほか、ミサゴ、チュウヒ、ノスリ、ハヤブサ、コチョウゲンボウといった猛禽類、さらにはタゲリも見ることができました。大洗海岸ではシノリガモ、ウミアイサ、ヨシガモに加え、この日は久しぶりにミミカイツブリが見られ、カイツブリ類5種が1日に出そろいました。またミユビシギ、ハマシギ、クロサギなども楽しめました。夕方は刺すような冷たい風の中での探鳥となりました。この度はご参加いただきましてありがとうございました。
石田光史