【ツアー報告】フォトツアー秋の佐渡島 朱鷺色のトキを撮る!(追加設定)2023年11月22日~23日
(写真:トキ 撮影:米持千里様)
学名、ニッポニア・ニッポン。トキは日本を象徴する鳥とも呼ばれ、バードウォッチャーなら誰でも一度は見てみたい鳥でしょう。日本では20世紀初頭までに個体群が急速に減少し、環境省レッドリストでは野性絶滅の状態にまでなってしまいました。ただその後の保護活動により、2000年代以降は個体数が回復し、2022年8月現在、野生下で生息するトキは推定569羽、うち放鳥個体は151羽、野生生まれは418羽と発表がありました。この貴重な鳥を観察するツアーは絶対に不可欠と思ってはいましたがなかなか前に進まず、その後もさまざま思いを巡らせつつ現地の状況を見極めてきましたが、結果としてやはり現地のトキ観察のルールを熟知した現地在住の方の同行がツアーにはどうしても欠かせないと判断しました。そしてこの度、とあることから現地案内を引き受けてくださる方と知り合うことができ、長らく思いを巡らせていた佐渡島ツアーが4月に初催行され、おかげさまでこの秋も2回催行できることになりました。ただ、現地の探鳥地の状況、またバス車内からの観察、撮影であることを考慮し、小型バス利用、撮影機材置き場も確保したいことから、お一人様2席利用で10名様限定という極めて小さなツアーとしました。さらには日没が早いことから、今秋からは高速艇を使って早めに佐渡島に到着できるようにして初日の撮影時間を長めに確保できるようにしました。
22日、実際に佐渡島でトキの観察をするまでは、ここまで短時間でトキに出会えると思っておらず、またトキの生息している地域がここまで限定されているとも思っていなかったため日程を長めにしていました。ただ宿泊する宿からほど近い地域にトキの生息地があり、また土地勘バッチリな現地ガイドさんとドライバーさんさえいてくれれば、かなり効率よくトキに出会えることから日程を短くし2日間にしてみました。今回はちょうど荒天と荒天の間に挟まったような日程になり、佐渡島の予報は両日ともに晴れで風もなく穏やかとのことでした。東京駅周辺も朝からまぶしいくらいの快晴となる中、ひとまず新幹線で新潟駅をめざしました。途中、越後湯沢駅を過ぎると遠くの山々には雪が見えましたが、天気はずっと快晴で到着した新潟駅も見事な青空が広がっていました。新潟駅からは佐渡汽船ターミナルまで移動し、前回まではフェリーでゆっくりと佐渡島に向かってはいましたが、この時期は日没が早く、初日の撮影時間が短時間になってしまうことから、今回からは11:30発の高速艇に乗り佐渡島に12:37に到着するようにしました。到着した佐渡島は過去に経験したことがないくらい暖かで快晴無風で汗ばむような陽気でした。早速、現地で案内をしてくださるガイドさん、トキのポイントに精通したドライバーと合流し、撮影機材を整えてからバスに乗車し出発しました。このツアーでは朱鷺色のトキの飛翔、樹木に止まる姿、地上で餌を探す姿、群れる姿などできる限りさまざまなシーンを撮影できるようにしていますが、この日はまず南下しトキを探してみました。途中、点々とトキの姿はあったものの撮影には適さないと判断し、そのままさらに南下していきました。するとここでようやく群れになっているトキを発見したので撮影に取り掛かりました。やや逆光ぎみでしたが二番穂とトキのコントラストが美しく、しばらく見ているとトキが畔に群れはじめ、一斉に飛び立ち朱鷺色が逆光に映えて美しく見えました。その後は飛翔するチュウヒやノスリ、ヒシクイ、水田に群れるコハクチョウなどを見ながら別の水田をめぐりました。各所で群れているトキを撮影することができ、飛翔した群れが紅葉が残る山を背景に飛翔する姿、また水田に群れて採食行動をする様子などを撮影することができました。そしてとある場所に近づいたころ、たまたま道路脇で餌を採っているトキがいたことからバスを停めると、反対側の木に止まる3羽のトキが見えました。バス車内から木に止まっているトキを撮影していると、反対側にいたトキの群れが一斉に飛び立ち、続々と戻ってきては木に止まるシーンは圧巻でした。その後は逆光の畦道にいたトキが飛び立つシーンを撮影することができ、陽が傾いてきた頃に合わせて前回同様の場所に行ってみました。すると20羽ほどのトキが針葉樹に群れていて、しばらく見ているとどこからともなく飛んできたトキが続々と針葉樹に止まるシーンを見ることができ、周囲が薄暗くなった16:45にこの日の探鳥を終えました。
23日、この日は午後から天気がやや崩れてくるとの予報。ただ早朝は空は明るく、この日はまだまだ薄暗い06:00に出発して前日の夕方に訪れた場所に向かいました。到着すると針葉樹には数羽のトキの姿が見え、しばらく見ていると数羽のトキが飛んできて上空を旋回飛翔する光景が見られました。その後は周囲が明るくなってくる中、前日に木に止まっている個体が多く見られた場所に行ってみましたが、すでに飛び立ったのか姿はありませんでした。そのため昨日はトキの姿がなかったものの、よく止まっている枯れ木に行ってみました。するとこの日は7羽のトキが止まっていたことからしばらく撮影することにしました。東の空の雲が厚かったことから、なかなか光線が当たりませんでしたが、ようやく07:30を過ぎたころから太陽光が当たり始め、みるみる鮮やかな朱鷺色に変わってきて見事なシーンでした。08:00に一旦宿に戻り朝食をいただいてから09:00に再出発。残る2時間強も引き続きトキの撮影を行いました。この時間はまず宿から西に進路をとって水田を見てみました。思ったほどのトキはいませんでしたが、バスの前を横切るハイイロチュウヒのメス、チョウゲンボウが見られ、ここでも数羽で群れて餌を採っているトキの撮影ができました。その後はさらに進みました。するとここでは水田に群れている7~8羽のトキの姿がありました。そのためバスを停めて撮影することにしました。すると遠くにいた2個体がこちらに向かって飛んできて真正面から撮影することができたほか、畔の上で争う2羽が見られ、またどこからともなく飛んでくる個体がいるなどしてくれたためさまざまなシーンを撮影することができました。そして時間が迫ってきたことから最後は加茂湖北側を走って11:30には両津港近くにある食堂で昼食をいただき、その後は今回お世話になったガイドさんからご挨拶をいただきながら両津港に向かいました。
私の中で長年の懸案だった佐渡島へのツアーがようやく定番になり、安定的に催行できるようになりました。ツアーを作る立場で考えるとどうしてもツアー造成したい場所でしたが、結果的にはなかなか前に進むことがなく時間が過ぎてしまうばかりだった中、ようやく佐渡島在住で現地でのトキ観察のルールに精通した現地ガイドさんに巡り会えたことは本当に幸運な出来事でした。実際に佐渡島をめぐってみるとトキが意外なほど宿近くの狭い範囲の中に生息していること、個体数が増えていることが実感できました。またバス車内からの観察に限定されていることからトキの撮影に集中した2日間という短期集中型のツアーにしたことも結果的には正解でした。もちろん現地ガイドさん、そしてトキの生息場所に精通したドライバーさんの最強コンビ同行だったことから実現できたことではありますが、ようやくツアーの形も定まってきた感があり嬉しく思いました。そして今回は過去に経験したことがないほど穏やかで暖かな中で過ごすことができたことから、さまざまな光線状態で朱鷺色のトキの撮影を堪能することができました。次回は2024年4月に繁殖期に見られる独特の風貌の灰黒色のトキを撮影するためのツアーを企画しています。ぜひまた季節を変えて佐渡島にお出かけください。この度はご参加いただきましてありがとございました。
石田光史