【ツアー報告】フォトツアー秋の佐渡島 朱鷺色のトキを撮る! 2023年11月12日~13日
(写真:トキ 撮影:久野守正様)
学名、ニッポニア・ニッポン。トキは日本を象徴する鳥とも呼ばれ、バードウォッチャーなら誰でも一度は見てみたい鳥でしょう。日本では20世紀初頭までに個体群が急速に減少し、環境省レッドリストでは野性絶滅の状態にまでなってしまいました。ただその後の保護活動により、2000年代以降は個体数が回復し、2022年8月現在、野生下で生息するトキは推定569羽、うち放鳥個体は151羽、野生生まれは418羽と発表がありました。この貴重な鳥を観察するツアーは絶対に不可欠と思ってはいましたがなかなか前に進まず、その後もさまざま思いを巡らせつつ現地の状況を見極めてきましたが、結果としてやはり現地のトキ観察のルールを熟知した現地在住の方の同行がツアーにはどうしても欠かせないと判断しました。そしてこの度、とあることから現地案内を引き受けてくださる方と知り合うことができ、長らく思いを巡らせていた佐渡島ツアーが4月に初催行され、おかげさまでこの秋も2回催行できることになりました。ただ、現地の探鳥地の状況、またバス車内からの観察、撮影であることを考慮し、小型バス利用、撮影機材置き場も確保したいことから、お一人様2席利用で10名様限定という極めて小さなツアーとしました。さらには日没が早いことから、今回からは高速艇を使って早めに佐渡島に到着できるようにして初日の撮影時間を長めに確保できるようにしました。
12日、実際に佐渡島でトキの観察をするまでは、ここまで短時間でトキに出会えると思っておらず、またトキの生息している地域がここまで限定されているとも思っていなかったため日程を長めにしていました。ただ宿泊する宿からほど近い地域にトキの生息地があり、また土地勘バッチリな現地ガイドさんとドライバーさんさえいてくれれば、かなり効率よくトキに出会えることから日程を短くし2日間にしてみました。ただ今回は残念ながら事前の天気予報が2日共に芳しくなく雨マークがつく中での出発となってしまい、東京駅周辺も朝から小雨が降っていました。ひとまず新幹線で新潟駅をめざしましたが、意外なことに途中、越後湯沢駅を過ぎたころからは青空が広がり長岡駅までは晴れ間が見えていました。ただ到着した新潟駅は再び曇り空で、今にも雨が落ちてきそうな中を佐渡汽船ターミナルまで移動しました。前回まではフェリーでゆっくりと佐渡島に向かってはいましたが、この時期は日没が早く、初日の撮影時間が短時間になってしまうことから、今回からは11:30発の高速艇に乗り佐渡島に12:37に到着するようにしました。到着した佐渡島は幸いなことに雨は降っていませんでしたが、雨上がりといった感じで各所に水溜りができ、厚い雲がかかっていました。早速、現地ガイドさん、トキのポイントに精通したドライバーと合流し、撮影機材を整えてからバスに乗車し出発しました。このツアーでは朱鷺色のトキの飛翔、樹木に止まる姿、地上で餌を探す姿、群れる姿などできる限りさまざまなシーンを撮影できるようにしていますが、まずは地上で餌を探しているトキを探して撮影を行いました。出発後は両津港のすぐそばの加茂湖北側からトキを探し始めましたが、ここでいきなり3羽のトキが舞い上がり、水田に降りたことから撮影開始。残念ながら小雨が落ちてきてはしまいましたがバス車内からの撮影のため特に問題なく撮影することができました。その後は加茂湖の西側を通って、ここでも水田に降りている複数のトキを撮影することができ、その後はさらに進んで水田をめぐりました。秋はトキの群れる姿が見られることが特徴とあらかじめガイドさんからうかがってはいましたが全くその通りで、この日は6羽で群れているトキを見ることができ、ゆっくりと接近して撮影してみました。しばらく見ていると足早に移動したり、飛翔したりとさまざまな姿を見せてくれました。さらに水田内を走ると各所にトキの姿があり、とある場所では畔に乗ったトキがまったく警戒する様子もなく間近にじっくり撮影させてくれ、鮮やかな朱鷺色を見せながら飛翔する姿も見せてくれました。その後はそろそろ時間的に塒入りになることから枯れ木を見てみました。するとこれが見事に当たり10羽もの時が枯れ木に群れて止まっていました。しばらく見ているとほかのトキが飛んできたり、飛んで行ったりといった感じで動いてはくれましたが、最後はどこからともなく飛んできたトビに驚いて飛び去ってしまいました。ただ枯れ木に群れているトキの姿は印象的でした。
13日、この日も天気予報は芳しくなかったものの早朝に外に出ると雲はありながらも一部には青空が見えていました。日の出は06:30ながらまだまだ薄暗い06:00に出発してまだまだ木に止まっているであろうトキの姿を探してみました。移動中、バスの車窓から見える山々は見事な雪景色でなかなか見ごたえがありました。まずは昨日、トキが群れて止まっていた場所に行ってみましたがトキの姿はなく、その後は屋敷林を見ながら進めました。毎年この時間帯は杉の枯れ木に群れて止まっているトキの姿があるのですが、この日は残念ながら木に止まっているトキの姿はなく、そこを起点に宿に戻る方向に進み、水田に降りているトキを撮影して戻りました。08:00に一旦宿に戻り朝食をいただいてから09:00に再出発。残る2時間強も引き続きトキの撮影を行いました。この時間は再度、木に止まっているトキの姿を探しましたが、飛翔しているトキが見られたのみでした。そのため一旦、朝にもトキを見かけた場所で再びトキに出会うことができました。その後はトイレ休憩をとるとともに売店にも立ち寄りました。またこの際、周辺の針葉樹にはかなりの数のマヒワの群れがいて飛び回っていました。この後は残り時間がわずかなことから周辺の水田をめぐり、晴れ、雨、みぞれとめまぐるしく変わる天気の中、見事な虹を見ながら水田に佇むトキを撮影しながら進み、最後は加茂湖北側の水田で餌を探している3羽のトキの撮影をしてツアーを締めくくりました。そして11:15には両津港近くにある食堂で昼食をいただき、その後は今回お世話になった現地ガイドさんからご挨拶をいただきながら両津港に向かいました。
私の中で長年の懸案だった佐渡島へのツアーがようやく定番になり、安定的に催行できるようになりました。ツアーを作る立場で考えるとどうしてもツアー造成したい場所でしたが、結果的にはなかなか前に進むことがなく時間が過ぎてしまうばかりだった中、ようやく佐渡島在住で現地でのトキ観察のルールに精通した現地ガイドさんに巡り会えたことは本当に幸運な出来事でした。実際に佐渡島をめぐってみるとトキが意外なほど宿近くの狭い範囲の中に生息していること、個体数が増えていることが実感できました。またバス車内からの観察に限定されていることからトキの撮影に集中した2日間という短期集中型のツアーにしてみました。もちろん現地ガイドさん、そしてトキの生息場所に精通したドライバーさんの最強コンビ同行だったことから実現できたことではありますが、ようやくツアーの形も定まってきた感があり嬉しく思いました。そして今回は天気予報が良いほうにハズレたこともあって特に2日目は晴れ間が見える中、美しい虹も見ながらトキの撮影を楽しむことができました。次回は2024年4月に繁殖期に見られる独特の風貌の灰黒色のトキを撮影するためのツアーを企画しています。ぜひまた季節を変えて佐渡島にお出かけください。この度はご参加いただきましてありがとございました。
石田光史