【ツアー報告】晩秋の十勝平野 ハクガンの群れとナキウサギ(追加設定)2023年10月24日~26日

(写真:アオハクガン 撮影:藤田惠代様)

そもそも日本では定期越冬していなかったハクガンですが、十数年前に数羽の群れが新潟県や秋田県で越冬するようになりました。数羽であっても当時は話題になり、実際に新潟県にてツアーを企画していました。その数羽の群れがその後、みるみる増え2019年にとうとう1000羽を超えるまでに増えました。今回は大群になったハクガンたちの中継地として知られている十勝平野を訪れるとともに可愛らしいナキウサギとの出会い、さらには北海道らしい小鳥類との出会いも楽しみな晩秋の北海道をめぐるツアーです。なるべくムダな移動時間をなくしてコンパクトなツアーにするため往復共に帯広空港を利用し、宿泊も温泉宿に連泊することで2日目、3日目の行動予定をハクガン、ナキウサギの出現状況に応じて行動できるようにしました。これによりハクガン、ナキウサギとの出会いの確率をより高くできるようにすることができました。またガン類は警戒心が強いため、バス車内からの観察、撮影も考慮して参加人数を減らし、バス席をお一人様2席利用にして観察機材置き場も確保しました。渡りの中継地での観察であることから、ハクガンたちが渡ってくるタイミングを計ることが重要になるわけですが、ここ数年はハクガンの渡来時期が早まっている印象があり、そのため今回は例年よりもツアー時期を早く設定してみました。現地からの情報では予想を上回る早さだったようでしたがなんとかハクガンの最盛期に時期を合わせることができました。秋は天気が不安定な時期ではありますが、今回は前回に引き続いて3日間共に大きな天気の崩れはないとの予報が出てくれました。

24日、今回は前回とは異なり、私は帯広市内に残ってこのツアーの出発に備えました。幸いにもこの日の帯広は早朝から秋晴れで、前回に比べるとかなり暖かい印象でした。結果的には15分ほど遅れたものの無事現地にてご集合いただき、空港内にて観察機材の準備をしていただいてからバスにて出発しました。この日も車窓から外を見るとこれぞ北海道といった感じの広大な田園風景に黄金色のカラマツの紅葉が見事に映えていました。現地までは1時間ほどあることから十勝平野でのガン類の観察ポイントや識別ポイント、さらには観察に当たっての注意事項などを解説しながら進み、まずは広大な平野を走りながらハクガンの群れを探してみました。友人たちのおかげでハクガンがどこにいたかは毎日情報が入り、だいたいここかなと目を付けた場所をめぐって行きますが、もちろん今日、どこにハクガンの群れがいるかはわかりません。ただ、今回は現地でたまたま知人に会い、ハクガンの群れが降りている場所を教えていただくことができ、早速、その場所に行ってみることにしました。道路からはやや距離があるものの、畑一面に1000羽ほどのハクガンの群れが降りていたことからひとまずバスを降りて観察することにしました。丈の高い草があることから全体を見渡すことができませんでしたが、それでもハクガンのほか、ヒシクイ、シジュウカラガン、マガン、タンチョウ、オオハクチョウが見られました。ただどうやらアオハクガンの姿はこの群れにはないようでした。しばらく見ているとどこからともなく30羽ほどのハクガンの群れが飛んできたり、いつの間にかタンチョウのつがいが間近にやってきていたり、周囲をハイイロチュウヒのメスが飛び回ったりと楽しい時間を過ごすことができ、陽が傾いてきたころに合わせて場所を変えてみることにしました。ここからは北側に進み、途中、畑地に群れているヒシクイとシジュウカラガンの群れが見られ、遠くを飛翔していた30羽ほどのハクガンの群れが我々の上空を通過して行く様子を夕陽の中で見るなど、周囲が薄暗くなるころまで探鳥してこの日を終えました。

25日、この日は日の出に合わせて06:00からホテル周辺で徒歩探鳥をしました。空には青空が見えていましたが、周囲は霧が立ち込めていました。いきなり駐車場内にある木から2羽のイスカが飛び立ち、ヒヨドリの群れが流れるように飛んで行きました。道路を渡り駐車場付近の林までくると、紅葉した木にシマエナガの群れがやってきてくれ、その後は常連のハシブトガラ、シロハラゴジュウカラ、ヤマガラ、ヒガラが出迎えてくれました。また草地にはアオジの姿もあり、この日もエゾリスが複数やってきて地面を走ったり、木を登ったりして盛り上げてくれました。さらに歩くとこの日も周囲からイスカの声が聞こえ、ふと見ると針葉樹のてっぺんに止まる真っ赤なオスの姿があり望遠鏡で観察することができました。しばらく見ていると低い松の木に移動したことから接近すると、どこからともなくメスもやってきて2羽で仲良く松ぼっくりをつつき始めてくれたため、意外なほどじっくりとその姿を堪能することができました。探鳥後は一旦、朝食をいただき、再出発後はナキウサギ観察に向かいました。この時間も相変わらずの快晴で風もなかったことからとにかく暖かい印象で、前回とはかなり異なった状況でした。途中、休憩に立ち寄った「道の駅」でも快晴無風。遠くに見える山々は見事な紅葉が見えるほど視界も良好でした。その後、再度トイレに立ち寄る時間を取ったほか、観察機材や防寒装備を整えていただきましたが、前回に比べると着るものが2枚少なくて済むほどの気温差を感じました。ナキウサギの観察ポイントに到着後はこの日も午前中はじっと待ってみることにしました。積雪も風もなく、温かい印象のため期待大でしたが、この日も前回同様になかなかナキウサギは現れてくれませんでした。一体どういうことなのかと思っていましたが1時間ほど経った頃に斜面を走ってくるナキウサギの姿が見られ、今回は高い岩に止まってくれたことからまずはその姿を見ることができました。その後も40分ほど経った頃に再び姿を見せて岩に止まり、今回は鳴き声も頻繁に聞くことができました。そしてそろそろ終了時間が迫った12:00過ぎに、いきなり目の前の岩に止まったかと思うと、珍しく5分以上じっとしていてくれたことからたっぷりと観察して終了することができました。一旦昼食の時間とした後は当初の予定通り帯広市内まで戻りました。ここはとにかく紅葉が美しいことで知られ、この日も見事な紅葉を見ながら歩きました。園内に入るといきなりエゾリスがやってきて楽しませてくれ、ハシブトガラ、シロハラゴジュウカラも見られ、オオアカゲラが飛んできました。池まで行くとマガモ、カルガモ、カワアイサ、そして木に止まっている10羽ほどのオシドリが見られました。するとここでクマゲラの声が聞こえ、我々の上空を飛んで行く姿を見ることができました。さらに進むと地上に群れているマミチャジナイの群れに出会うことができ、よく見るとツグミ、シロハラが混じり、いつの間にかアオバトが付近にあった木の実をついばんでいました。そして地上に降りたツグミの群れの中に混じる亜種ハチジョウツグミも見ることができ、いつの間にか薄暗くなっていた16:00過ぎにこの日の探鳥を終えました。

26日、この日も同様に日の出に合わせて06:00からホテル周辺を歩きましたが、天気予報が外れたのか外は雨上がりといった感じで、この日はさらに深い霧が立ち込めていました。この日も前日と同じルートを歩くと、同様にハシブトガラ、シロハラゴジュウカラ、シジュウカラ、ヤマガラ、ヒガラといった顔ぶれが出迎えてくれ、ミヤマカケスが飛び回っていました。畑地では高木に止まるツグミ、シメが見られ、シロハラゴジュウカラと一緒に餌を探すキバシリも見られました。さらに歩くと木の実に群れるツグミの姿があり、地面にはマミチャジナイ、アカハラの姿がありました。しばらく観察しているとどこからともなく飛んできたイスカのメスが目の前に止まり、その後は地上を歩き回ってくれました。その後、道を戻るとエゾリスに出会い、枯れ木に止まるアカゲラを見て、探鳥後は一旦朝食の時間とし、朝食後は再びハクガンの群れを探しに行きました。ただ、この時間になっても霧は晴れず空はどんよりとしていて天気予報が外れたようでした。途中、十勝川が一望できる場所に立ち寄ると、草地にはホオアカの姿があり、よく見ると幼鳥2羽を連れたタンチョウの親子がいて、見事な飛翔も見せてくれました。また川にはキンクロハジロ、ヒドリガモ、カワアイサ、ホオジロガモ、クサシギの姿もありました。そしてこの日はまず平野の北側から進むことにしました。すると早速、ヒシクイ、マガンの群れに出会うことができ、そこに混じる15羽ほどのハクガンの姿もありました。さらに進むとかなりの数のオオハクチョウがいたためバスを停めて見てみると、間近にマガン、シジュウカラガンが見られ、たった1羽ながらコハクチョウの姿も見られました。その後は一旦、「道の駅」でトイレに寄ってから初日にハクガンの群れを見た場所に行ってみました。するとこの日も全く同じ場所に同数程度のハクガンの群れが降りていたことから、再びバスを降りて観察してみました。この日は初日とは異なり、緑色に染まった牧草地にもかなりの数のハクガンが降りていて、緑色の背景とのコントラストが美しく見えました。そろそろ移動しようかと思った時、どこからととなく飛んでくる10羽ほどのハクガンがいたことから見ていると色合いのおかしな個体が混じっていました。その個体は幸いにも緑色の牧草地のほうに降りてくれたことからしっかりとその姿を見ることができました。これがアオハクガンでした。ここまで見ることができていなかっただけに最後に良い出会いがあり良い締めくくりとなりました。

今回の秋の十勝平野は最終日がどんよりとした曇り空で霧が出る場面はあったものの3日間ともに概ね良い天気に恵まれ、2日目の日中は暑さを感じる時間帯もありました。主役のハクガンはほぼ最盛期にあたることができ、最後の最後にはアオハクガンにも出会うことができました。またヒシクイ、シジュウカラガン、マガンも間近に見ることができ、タンチョウのつがいや飛び回るハイイロチュウヒも印象的でした。一方、ナキウサギは今回もそれほど良い出現状況ではなかったですが、前回とは異なり半日でじっくり見るチャンスが訪れてくれ幸いでした。ほかにも愛嬌あるエゾリスが見られ、ハシブトガラ、シロハラゴジュウカラ、シマエナガ、ミヤマカケス、アカゲラ、そして前回に引き続いてイスカが何度も見られ、マミチャジナイ、アカハラ、シロハラ、アオバト、オシドリ、亜種ハチジョウツグミ、そしてクマゲラの登場には驚きました。北海道はとても魅力的な探鳥地のため、季節ごとにさまざまなツアーを企画しております。ぜひまた北海道にお出かけください。この度はご参加いただきましてありがとうございました。

石田光史

ナキウサギ 撮影:藤田惠代様

 

クマゲラ 撮影:藤田惠代様

 

ガン類の群れ 撮影:藤田惠代様

 

ハイイロチュウヒ 撮影:藤田惠代様

 

シロハラゴジュウカラ 撮影:藤田惠代様

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