【ツアー報告】晩秋の十勝平野 ハクガンの群れとナキウサギ 2023年10月21日~23日

(写真:ハクガン 撮影:小林浩様)

そもそも日本では定期越冬していなかったハクガンですが、十数年前に数羽の群れが新潟県や秋田県で越冬するようになりました。数羽であっても当時は話題になり、実際に新潟県にてツアーを企画していました。その数羽の群れがその後、みるみる増え2019年にとうとう1000羽を超えるまでに増えました。今回は大群になったハクガンたちの中継地として知られている十勝平野を訪れるとともに可愛らしいナキウサギとの出会い、さらには北海道らしい小鳥類との出会いも楽しみな晩秋の北海道をめぐるツアーです。なるべくムダな移動時間をなくしてコンパクトなツアーにするため往復共に帯広空港を利用し、宿泊も温泉宿に連泊することで2日目、3日目の行動予定をハクガン、ナキウサギの出現状況に応じて行動できるようにしました。これによりハクガン、ナキウサギとの出会いの確率をより高くできるようにすることができました。またガン類は警戒心が強いため、バス車内からの観察、撮影も考慮して参加人数を減らし、バス席をお一人様2席利用にして観察機材置き場も確保しました。渡りの中継地での観察であることから、ハクガンたちが渡ってくるタイミングを計ることが重要になるわけですが、ここ数年はハクガンの渡来時期が早まっている印象があり、そのため今回は例年よりもツアー時期を早く設定してみました。現地からの情報では予想を上回る早さだったようでしたがなんとかハクガンの最盛期に時期を合わせることができました。秋は天気が不安定な時期ではありますが、今回は幸いにも3日間共に大きな天気の崩れはないとの予報が出てくれました。

21日、この日の東京は早朝から心地よい秋晴れ。羽田空港に予定通りご集合していただいた後は資料配布、連絡事項をお伝えしてから搭乗し、とかち帯広空港に向かいました。着陸直前には機体がやや揺れ、結果的には5分ほど遅れたものの無事現地に到着した後は、空港内にて観察機材の準備をしていただいてからバスにて出発しました。車窓から外を見るとこれぞ北海道といった感じの広大な田園風景に黄金色のカラマツの紅葉が見事に映えていました。現地までは1時間ほどあることから十勝平野でのガン類の観察ポイントや識別ポイント、さらには観察に当たっての注意事項などを解説しながら進み、まずは広大な平野を走りながらハクガンの群れを探してみました。情報はある程度いただいてはいるものの、その日のその時間、どこにハクガンがいるかはわからないため、とにかく広範囲に探すしかありません。走っていると秋の十勝平野の名物ともいえるタンチョウの姿があちらこちらに見え、大多数を占めるヒシクイも点々と牧草地に降りています。そうこうしているうちにとある場所に降りている1000羽ほどのハクガンの群れに出会うことができました。とはいっても農耕車の邪魔にならないよう考えてからでないと観察に入れないことから一旦、その場を離れてバス停車位置を考え、結果的にはバスを下りて観察する間はバスにはその場を離れていただくことにしました。ハクガンの群れはかなり安定している雰囲気でこれといった動きはなく、よく見るとヒシクイ、シジュウカラガン、マガンとすべてのガン類が揃い、ハクガンの群れの中には過去には見たことがない緑色の首輪をつけた個体、さらにはそのすぐそばにアオハクガンの姿もありました。しばらく観察しているとどこからやってくるのか、ヒシクイ、シジュウカラガン、マガンの小さな群れが次々にやってきては合流し、次第に群れの動きが活発になってきているようでした。すると対岸に群れていたと思われるヒシクイの群れが突然飛び立って乱舞状態になったかと思うと、ハクガンたちが次々に飛び立ちました。よく見るとオジロワシが悠然と飛翔し、どうやらこれに驚いて飛び立ったようでした。ただ結果的には乱舞するハクガンの姿を堪能することができ、付近の林ではアオジやシロハラゴジュウカラ、枯れ木に群れているツグミなどを見てこの日の探鳥を終えました。

22日、この日は日の出に合わせて06:00からホテル周辺で徒歩探鳥をしました。昨日は比較的穏やかだったにも関わらず、さすがに早朝はかなりの冷え込みでした。まずは十勝川から飛び立ったと思われるオオハクチョウの群れが朝日に照らされながら飛んで行く様子が見られ、駐車場付近の林までくると、常連のハシブトガラ、シロハラゴジュウカラ、ヤマガラ、ヒガラが出迎えてくれ、針葉樹の林の中にはキクイタダキの姿もありました。さらに歩くとこちらも常連のエゾリスが現れ、アカゲラの姿もありました。ふと見ると水たまりに飛んできた小鳥がいて、なにげなく見てみると、なんとイスカのメスで驚かされました。さらに驚いたのがミヤマカケスの多さでした。最近ではなかなか姿が見られなかったのですが、この日はあちらこちらを飛び回っていて針葉樹のてっぺんに止まるなどしてくれました。さらに歩くと木の実に群れるツグミが見られ、帰り間際にも松ぼっくりに取り付いているイスカのメスをじっくりと観察することもできました。探鳥後は一旦、朝食をいただき、再出発後はナキウサギ観察に向かいました。この日の天気予報はこれといって問題はなかったのですが、やや風が強かったのが気がかりでした。途中、休憩に立ち寄った「道の駅」でもやや風が強く、そのせいかかなり冷える印象でした。また遠くに見える山々はしぐれているようで白く霞んでいました。その後、再度トイレに立ち寄る時間を取ったほか、観察機材や防寒装備を整えていただき、それからナキウサギの観察ポイントに移動しました。到着するとうっすらと積雪があり、日陰のせいかかなり寒い印象でした。ただナキウサギは冬眠はしないし、過去に別のポイントで観察した際には積雪があったことはそう珍しくはありませんでした。ひとまず午前中はいてみることにし、じっとナキウサギの登場を待ちましたがちらっちらっとは見られたものの、結果的にはその姿をしっかり見ることはできず、そのため一旦昼食の時間とし、午後からも予定を変更して再度、ナキウサギにチャレンジすることにしました。午後からは場所を変えて観察をしてみました。この頃には雪は解けて積雪は全くなかったですが、それでも時折小雪が舞うような厳しい寒さの中での観察となりました。ただここでも1時間ほど待ってみましたがナキウサギに出会うことはできず、最後の1時間は最初の場所に戻ってみました。ただ、結果的にはどういうことなのか、全くナキウサギを見ることはできず、残念ながら16:00にはこの日の観察を終えました。

23日、この日も同様に日の出に合わせて06:00からホテル周辺を歩きました。天気予報は晴れマーク一色でしたが、この日も早朝からやや風が強く、そのせいか体感気温はかなり低い印象でした。この日もオオハクチョウの群れが飛び、背後からはオジロワシが飛んできて我々の頭上を通過していきました。前日と同じルートを歩くと、同様にハシブトガラ、シロハラゴジュウカラ、シジュウカラ、ヤマガラ、キクイタダキ、アカゲラといった顔ぶれが出迎えてくれ、この日もイスカのメスが飛んできて針葉樹のてっぺんに止まりました。林ではモズが鳴き、草地からはベニマシコの声が聞こえていました。芝生のある広場まで行くとかなりの数のツグミが群れで地上採食していて、周辺をミヤマカケスが飛び回っていました。そして戻る途中ではエゾリスが針葉樹のかなり高いところにいて思わず見入ってしまうほどでした。探鳥後は一旦朝食の時間とし、朝食後は再びナキウサギ観察にチャレンジすることにしました。出発時は美しい秋空が広がる快晴でしたがやや風が強く、途中、休憩に立ち寄った「道の駅」でもやはり風の強さが気になりました。再度トイレに立ち寄る時間を取ったほか、観察機材や防寒装備を整えていただき、それからナキウサギの観察ポイントに移動しました。到着するとこの日は積雪はなく、前日に比べると冷え込みもそれほど厳しくはない印象でした。ただ時折風が吹きぬける際には一気に冷える感じがしました。我々が到着する1時間ほど前にはナキウサギが出てきていたとのことで期待感が高まりますが、どうしたことかなかなかその姿を見ることができず、どんどん時間が過ぎて行ってしまいました。この日は12:30には現地を出発しないといけないことから、諦めるタイミングを計っていた残り10分のところで斜面を元気よく走ってくるナキウサギが見え、あっという間に目の前の岩に止まりました。その後は走り回ってはいましたが、結果的には低い岩に止まってくれたことから最後の最後でようやくナキウサギの可愛らしい姿を見てツアーを締めくくることができました。

今回の秋の十勝平野はとにかくナキウサギが見られず苦労した3日間になりました。3日間を通して天候は良かったのですが、ナキウサギ観察の時だけ小雪が舞うような天候と思わぬ強風で寒さが厳しくなってしまったことが要因と思われますが、とにかく想定外のことが起こってしまいました。ただ最後の10分で出てきてくれたことに感謝したいと思いました。一方、ハクガンは群れのピークに当たることができ、幸にもアオハクガンも見ることができ、ヒシクイ、シジュウカラガン、マガンも見られ、オジロワシに驚いて一斉に飛翔する姿は圧巻でした。ほかにも愛嬌あるエゾリスが見られ、ハシブトガラ、シロハラゴジュウカラ、シマエナガ、ミヤマカケス、タンチョウといった北海道らしい種をはじめ、アカゲラ、キクイタダキ、そして今年はイスカが何度も楽しませてくれました。北海道はとても魅力的な探鳥地のため、季節ごとにさまざまなツアーを企画しております。ぜひまた北海道にお出かけください。この度はご参加いただきましてありがとうございました。

石田光史

ナキウサギ 撮影:小林浩様

 

イスカ 撮影:小林浩様

 

ミヤマカケス 撮影:小林浩様

 

シマエナガ 撮影:小林浩様

 

ハクガンとアオハクガン  撮影:小林浩様

 

シロハラゴジュウカラ 撮影:小林浩様

 

エゾリス 撮影:小林浩様

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