【ツアー報告】紅葉の戸隠高原でムギマキに会いたい!2023年10月19日~20日
(写真:ムギマキ 撮影:杉崎明登様)
一年を通してバードウォッチングに最適な場所といえばこの戸隠高原でしょう。東京から行くとなると遠い印象があり、バスでは4~5時間がかかりますが新幹線を使えば東京駅から長野駅までは90分ほどとあっという間に到着することができます。歩くことが多いツアーのため帰りも長野駅から新幹線で帰ることができるので体力的な負担を軽減することもできます。秋の目玉は当地に一定期間だけ滞在する旅鳥のムギマキとマミチャジナイです。ここ数年は写真を撮影したいといった需要が増大したこと、また歩く距離を大幅に削減するため、以前は定番だった鏡池までの往復ハイキングを取りやめ、ムギマキをじっくりと観察、撮影する時間を増やせるように行程を変更しました。この秋の戸隠高原はちょうど20年前に私がまだまだ助手ではありましたがガイドデビューした思い出深い場所であり、個人的にも一番足を運んでいる探鳥地でもあります。もちろん言うまでもなく大好きな探鳥地なのです。そのため多くの方々に来ていただきたいとは思いますが、探鳥のために歩く道のほとんど全てが木道や小径のため、多人数での探鳥は不可能と判断し少人数化して企画しています。この時期の信州はお天気が安定せずころころと変わる空模様を見ながらの進行となることが多いので毎度毎度のことですが、今回も直前に天気予報が変わってしまい、金曜日は午後から雨の予報が出てしまう中での出発となりました。
19日、ここ数日はずっと穏やかな陽気だった東京都内はこの日も早朝から快晴でした。ひとまず予定通りに東京駅を新幹線で出発し長野駅に向かいました。途中、車窓から見られた景色は紅葉が美しく感じ、空は見事な青空でした。東京駅から90分ほどであっという間に到着した長野駅も澄み切った快晴でしたが、かなり肌寒く感じました。到着後はご参加の皆様と合流してから専用バスにて今回の宿泊地のホテルに向かいました。途中、飯綱高原からバードラインを通る頃には、周辺は見事な紅葉に囲まれ1時間ほどでホテルに到着した後は一旦、ロビーをお借りして各自昼食をとっていただき、併せて観察機材の準備をしていただいてから出発しました。出発前にはホテル前のシラカバにアオゲラがやってきてくれました。この日はまず小径を歩くことにしました。一望できる戸隠山は麓の紅葉がとにかく美しく、ここ数年では一番ではないかと思うほどでした。まずは愛想が良いゴジュウカラが目の前までやってきて、どうやら貯食行動をしているようでした。その後は過去にムギマキがやってきていた木の実の場所を見ながら歩きますが残念ながらその姿はなく、奥にあるささやきの小径に入ってみました。ここでも最初の場所ではムギマキの姿はなかったものの、さらに進むと小鳥が動き回る気配があり、見てみると大木に巻き付いたツルマサキの実に小鳥が集まっていました。見てみるとコガラ、コゲラ、アカゲラ、アオゲラ、メジロが入れ代わり立ち代わりやってきていて、メス個体ながら複数のムギマキの姿もありました。またキハダの実には20羽ほどのマミチャジナイが群れでやってきていて、中にはシロハラの姿もありました。見ていると群れは一斉にやってきて実を食べては離れ、またやってきて実を食べるといった行動を繰り返していました。また戻る途中では来る時には鳥の姿がなかったツルマサキにもマミチャジナイ、メジロがやってきていて木の実をついばんでいました。その後はバスにて移動し、まずはキンクロハジロ、ヒドリガモ、カイツブリを観察し、その後は園内にあるムギマキのポイントをめぐってみました。園内では飛び回るツグミの群れが目立ち、枯れ木にはシメが止まっていました。またゴジュウカラとキバシリが並んで木の幹を登っていく様子も見られましたが、ここでも木の実にはコガラ、コゲラがいただけで道を戻り、この日の探鳥を終えました。
20日、この日は日の出の時間に合わせて06:00スタートで探鳥を開始しました。幸いにも天気は良く青空が見えていましたがさすがは戸隠高原といった冷え込みで気温は5℃でした。出発前にはホテル前の草地にはホオジロの姿があり、カケスが飛び回っていました。早朝の時間は歩くことはせずツルマサキの実に絞ってみることにしました。早朝ということもあってイカルやアトリ、アオバト、ツグミの群れが上空を次々に通過して行く姿が見られ、イカルはさえずっている個体もいました。また付近ではカケスの姿もあり、カラマツに止まる個体もいました。そして幸いなことにムギマキはメスながら何度かツルマサキの実にやってきてくれ、ホバリングしながら実をついばむ姿が見られました。その後は一旦、ホテルに戻って朝食をいただき、午後からは雨予報だったことから午前中に歩くことにしました。相変わらず戸隠山の紅葉は見事だったものの、この時間はやや風が強く吹きはじめて雲の流れが早くなってきていました。小径の入り口では、たまたまカラ類の混群に出会うことができ、エナガを中心に、コガラ、シジュウカラ、ヒガラ、ヤマガラが続々と登場してかなり賑やかでした。その後は前日に見た場所よりも手前のツルマサキの実にやってきているムギマキのメスを見ることができ、前日同様に周囲をマミチャジナイの群れが飛び交い、それに混じるアカハラの姿もありました。その後はちょうどお昼に合わせてホテルに戻り、恒例になっている戸隠そばの昼食をいただき、その後は雨予報だったことからあまり歩かなくてもよい場所ということで、早朝に行った場所まで行ってみました。到着時は幸いにも雨は降っておらず、ひとまず1時間待ってみることにしました。残念ながらちょうど13:00頃からは小雨が落ちてきてしまいましたが、ツルマサキの実にはコガラがやってきていて実をついばんでいました。ただムギマキがやってくる気配がなかったことから、再び別のムギマキのポイントを見てみることにしました。池には相変わらずヒドリガモ、キンクロハジロ、カイツブリの姿があり、園内ではコガラやシジュウカラが見られ、ツルマサキの実にはコゲラもやってきてはいましたが、この日の午後はムギマキに出会うことはなく15:00探鳥を終えました。
今回は2日目の午後から小雨が降り始める状況になってしまいましたが、探鳥に大きく影響が出るほどではなく幸いでした。また初日は澄み切った秋空にここ数年で一番美しいのではないかと思うほどの見事な紅葉を楽しむこともできました。目的であったムギマキはそれほど個体数がいなかったようでしたが、それでもメスと思われる個体を複数観察することができました。またマミチャジナイに関しては、今年は当たり年のようで群れ飛ぶツグミと共に、かなり大きな群れを見る事ができ、アカハラ、シロハラも混じっていました。全体的には冬鳥の渡来状況が良いように思え、早朝にはアトリやシメが飛び回り、イカル、カケスの姿が目立ったのも印象的でした。次回は新緑に映えるミズバショウやリュウキンカ、カタクリの花々を見つつ、キビタキ、コサメビタキ、サンショウクイ、クロツグミ、コルリ、ミソサザイ、ニュウナイスズメなどの小鳥たちが楽しめる初夏に企画いたしますのでぜひまた戸隠高原にお出かけください。この度はご参加いただきましてありがとうございました。
石田光史