【ツアー報告】フォトツアー落石クルーズで夏羽のエトピリカを撮る!2023年7月7日~9日

(写真:エトピリカ 撮影:遠藤英一様)

鳥の観察会の道東ツアーでは必ずといってよいほど乗船してきた落石クルーズ。今や落石クルーズに乗船するために根室に行っているといっても過言ではありません。実はこの落石クルーズとは営業運行以前からお付き合いをさせていただいており、試験運行時の乗船やその後の意見交換会にも出させていただいたことから何かと思い入れがあります。その後、営業運行が始まってからも道東ツアーではこの落石クルーズをツアーに入れるようにして微力ながら応援してきました。 この落石クルーズの素晴らしさは見られる海鳥の顔ぶれを見ていただければ一目瞭然で、さらに普段撮影可能な距離感で見られることがほとんどないウミスズメ類を良い距離感で見られることです。ただ実はもっとすごいことがあるのです。それは実際に毎日毎日忙しく漁をされている漁師さんが海鳥たちに興味を持って運行されていて、さらには海鳥の識別をもほぼ完璧にマスターされているということです。小型の漁船を使ったクルーズのため当然のことながら欠航のリスクは常について回ります。ただ今回は幸いにも3日間を通して天候が良く、海況も全く問題ない状況の中で出発することができました。

7日、ここ数日、とにかく暑い日が続いている東京都内は午前中から早くも蒸し暑い状況でした。集合場所の羽田空港は金曜日ということもあって大混雑。まさに旅行復活といった感じでもうコロナの影響を全く感じることはありませんでした。ご集合いただいた後は資料の配布、そしてこの日の連絡事項をお伝えしてから中標津空港に向かいました。到着した中標津空港周辺は曇りながら青空が見えていて、ドライバーさんによると外は28℃あるとか。今年も北海道各所に行かせていただきましたが、この夏の北海道はどこに行ってもとにかく暑く避暑することができていません。空港内で観察機材の準備をしていただいてからバスに乗り、最初の探鳥地に向かいました。この日は名物になっている霧がかかっていなかったこともあって国後島を間近に見ながら走るり、風もなく穏やかで色鮮やかな花々が咲き誇っていました。最初のポイントではシマセンニュウ、オオジュリンがさえずり、防波堤にはオジロワシが止まっていました。その後は場所を変えてみると複数のシマセンニュウがさえずり、中にはハマナスに止まって間近にさえずる個体もいてたっぷりと撮影させてくれました。また最後にはカッコウも間近にやってきてさえずってくれました。ただここで真っ黒い雲がやってきたかと思うと雷鳴がとどろき、雨も落ちてきてしまったことから休憩をして移動しました。次の場所ではここ数年、毎年のようにタンチョウの親子が見られていて、先月に訪れた際にもその姿が見られました。現地に到着後は湿地帯になっている場所を探してみましたが残念ながらその姿は見られず、そのため漁港側に行ってみると仲が良いオジロワシのつがいが間近に止まっていて、コムクドリの姿もありました。そして周囲を見てみるとちょうど対岸の草原にタンチョウの親子の姿がありました。撮影ができる距離感ではありませんでしたが褐色に見えるヒナはもう親鳥と変わらないほどの大きさになり無事に育っているようで安堵しました。

8日、早朝から根室の代名詞である濃霧が立ち込める中、朝食前に公園に向かいました。 ここは根室市民の憩いの場であると共に市内の公園とは思えないバリエーションの野鳥たちが見られる場所でもあります。ここでは主に原生花園ではなかなか見られないベニマシコを探すことにしました。次第に濃霧が晴れてくる中、いきなりベニマシコのさえずりが聞こえたため行ってみると、枯れ木に止まってさえずる真っ赤なオスの姿がありました。林に入るとシメが飛び回り、草原からはシマセンニュウやコヨシキリ、そしてなかなか姿を見ることができないエゾセンニュウの「ジョッピン、カケタカ」という独特のさえずりが聞こえていました。その後、池まで行くとオオセグロカモメが水浴びをしていてヨシ原では大音響のコヨシキリがさえずっていました。またここではノゴマのオスがのびやかにさえずり、メスは地上を歩いて餌を探しているようでした。そして気が付くとかなりの数のアマツバメが手が届くような距離をビュンビュン飛び回って圧巻の光景が見られました。戻る途中ではシジュウカラ、ヒガラ、ハシブトガラの群れが賑やかに現れ、よく見てみると黄色が鮮やかなマヒワが混じっていました。探鳥後は一旦ホテルに戻って朝食をいただき、その後は再度出発して落石漁港に向かいました。早朝に比べると空も明るくなり霧は薄くなっていましたが、落石漁港はホテルとは反対側に位置しているため行ってみなければわからないのです。ひとまずバスを進めると空は次第に明るくなってきていて青空も見えてきました。落石漁港が見えてくると海上には霧がかかっていましたがこれはいつものことで驚くほどのものではありません。この日の波予報は0.5ⅿ、風は3ⅿとのことで運行には問題なし。到着後は乗船準備にとりかかっていただき09:25に出航。海上には霧がかかってはいましたがうっすらとユルリ島は見え、周辺は次第に明るくなってきていました。外洋に出ると霧の中からウトウの群れが連続して出現し、このクルーズらしく橙色の嘴にある突起物までしっかりと見ることができました。その後はハシボソミズナギドリオが飛び交う中、次第にケイマフリの姿が目立ってきましたが、この日はカンムリウミスズメの出現が多く、あまり見たことがない成鳥冬羽や幼鳥の姿も見られました。そしてこの日はユルリ島とモユルリ島のちょうど中間点付近でケイマフリと一緒に浮いているエトピリカの非生殖羽に出会うことができ、間近に撮影することができました。そして夏の落石クルーズの目玉でもあるチシマウガラスは今期は数が少ないとのことでこの日は岩礁に止まっている姿はみられませんでしたが飛翔する生殖羽個体を撮影された方がいらっしゃいました。また付近ではこの夏もラッコの数が多く、親子で浮いている姿を見る事もできました。下船後の午後は真夏のような陽気の中、湿原に向かいました。 ここは霧が濃いことで知られている場所ですがこの日は真夏のような陽気で霧は全くなく信じられないような光景が広がっていました。岬ではシマセンニュウやオオジュリンのさえずりはわずかだったため展望台に行ってみました。ここでも小鳥たちの影は薄かったですが、断崖ではアマツバメの乱舞が見られ、飛翔する姿を上から撮影することもできました。駐車場まで移動し岬方向に歩くと眼下にはかなりの数のラッコの姿があり、間近に現れたノゴマの撮影をしてから再びアゼチの岬に行ってみました。ここではオオジュリン、シマセンニュウ、そして枯れ枝でさえずるノゴマの撮影をすることができましたが、いよいよ霧が立ち込めてきてしまったことから移動しました。ここではカッコウやシマセンニュウがさえずっていましたが狙っていたタンチョウの姿はなく、この後は根室方面に戻ることにしました。途中、風連湖に立ち寄り、最後は再び公園まで行き、ナナカマドのてっぺんでさえずるノゴマ、そしてベニマシコを見てこの日の探鳥を終えました。

9日、この日も毎度おなじみの霧が出ていましたが前日に比べるとそれほど濃くはない印象でした。早朝は公園に向かい、バスを降りると独特のさえずりでエゾセンニュウがさえずっていました。林の中からはベニマシコの声が聞こえてきたため探してみるとメスのベニマシコが柵に止まって鳴いていました。またこの日もかなりの数のシメが飛び交っていて、草原からはシマセンニュウ、コヨシキリ、ノゴマのさえずりが聞こえていました。次第に霧がなくなっていく中、池ではこの日もオオセグロカモメが水浴びをしていて、周辺ではオオジュリンが餌を探していました。またこの日もほとんど同じ場所でコヨシキリがさえずり、ノゴマ、ノビタキ、アオジなどを見てから一旦ホテルにて朝食をいただき、その後は昨日同様に落石漁港に向かいました。この頃の根室市内はほとんど霧はなくなっていて空はみるみる青空になってきていました。そのため期待しながら落石漁港に向かいましたが、バスが進むにつれて霧が立ち込めてきてしまい、到着した落石漁港は昨日とそれほど違いがない霧に包まれていました。この日の波予報は0.7ⅿ、風は4ⅿと前日とほぼ変わらない状況。霧が晴れてくれることを祈りながら08:30に出航して生殖羽のエトピリカを探しました。この日は前日に生殖羽のエトピリカが確認された場所を重点的に探しながら航行していただくことにしかなりゆっくりと進めました。ただ残念ながら海上の霧は前日よりもかなり濃く、視界は30ⅿほどで霧の中から突然海鳥が出現するといった感じでした。この日も群れで浮いているウトウがいくつも見られ、生殖羽のウミスズメ、ウミガラスにも出会うことができました。そしてこの日も2個体のエトピリカに出会うことができましたがいずれも生殖羽個体ではありませんでした。そしてユルリ島沖までやってくると一時的に霧が晴れて周囲を見渡せる状況になりましたが、無数のケイマフリ、そして傷ついているようなハシボソミズナギドリが見られたのみでした。またこの日も多数のラッコ、そしてゼニガタアザラシを見ながらウミウ、ヒメウが群れている岩礁に来ましたが、ここでは残念ながらチシマウガラスの姿はなく、そのため別の岩礁に行ってみると岩肌にへばりつくように止まっている生殖羽のチシマウガラスに出会うことができました。

小型船を使ったツアーはさまざま企画していますが、欠航という大きなリスクがついて回る反面、普段なかなか見ることができないウミスズメ類を撮影可能な距離感で見ることができるというメリットはかなり大きく今回もそれを実感できました。結果的には生殖羽のエトピリカに出会うことができず残念でしたが、根室半島特有の霧はあったものの両日ともに比較的良い海況の中、クルーズができたことは幸いでした。ただ生殖羽のチシマウガラスやウミガラス、ウミスズメ、カンムリウミスズメ、非生殖羽のエトピリカには3度出会うことができ、ケイマフリやウトウは多数見ることができました。またラッコは間近にかなり楽しませてくれ、このクルーズをより一層楽しく盛り上げてくれました。クルーズ以外ではタンチョウの親子やオジロワシ、原生花園や公園ではノゴマやオオジュリン、シマセンニュウ、ベニマシコ、ノビタキ、カッコウ、コヨシキリ、アマツバメなどを楽しむことができました。落石クルーズは極めて特殊なクルーズですが、海鳥好きのバードウォッチャーにとっては極めて貴重なクルーズです。 冬季にはウミバトをはじめ、コウミスズメ、エトロフウミスズメといった国内観察が極めて難しい小型ウミスズメ類が高確率で見られます。ぜひまた季節を変えてご乗船ください。 この度はご参加いただきましてありがとうございました。

石田光史

ケイマフリ 撮影:IH様

 

ノゴマ 撮影:箕輪篤子様

 

ラッコ 撮影:遠藤英一様

 

オジロワシ 撮影:IH様

 

シマセンニュウ 撮影:箕輪篤子様

 

オオジュリン 撮影:遠藤英一様

 

オオセグロカモメ 撮影:IH様

 

コヨシキリ 撮影:箕輪篤子様

 

カンムリウミスズメ 撮影:遠藤英一様

 

ウミガラス 撮影:IH様

 

カンムリウミスズメ 撮影:箕輪篤子様

 

ハシブトガラ 撮影:遠藤英一様

 

コヨシキリ 撮影:IH様

 

エトピリカ 撮影:箕輪篤子様

 

ケイマフリ 撮影:遠藤英一様

 

ラッコ 撮影:IH様

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