【ツアー報告】フォトツアー初夏の上高地でコマドリを撮る! 2023年5月25日~26日
(写真:コマドリ 撮影:寺田祐治様)
そもそもは上高地でコマドリを、そして乗鞍畳平でライチョウを撮影する2日間のツアーとして企画していましたが、たまたま標高約2700ⅿの畳平に向かう乗鞍スカイラインで崩落事故があり、その動向を注視していましたが、結果的には開通の目途が立たないとのことで、今回は上高地のコマドリに絞って撮影する2日間コースに急遽変更しての催行となりました。コマドリはそれほど珍しい鳥ではないですが、良い距離感、良い環境で観察、撮影することは案外難しく、そのため今回は2日間のすべてをコマドリ撮影に集中できることは、コマドリを撮影したいというお客様には逆に良かったのかもしれません。ひとまず天気予報を見ていましたが直前に晴れが曇りになった程度でしたのでまずは安心して出発できることになりました。
25日、やや雲はあったものの早朝から晴れ間の見える新宿駅を予定通りに出発してひとまず松本駅を目指しました。ここ最近の傾向ではありますが、平日にもかかわらずとにかく外国人観光客の姿が目立ち、信州に向かう特急のホームには登山服を着こなした人も多く、もはやコロナウイルス感染拡大のころが信じられないくらいでした。特急利用のためもちろん渋滞の心配はありませんでしたが、この日は急病人が出たとのことで10分ほど遅れて松本駅に到着。ここでお客様と合流して資料と今回歩くコースの地図をお渡ししてから上高地バスターミナルに向かいました。途中、道の駅に立ち寄りましたが、この頃には空はより青くなってきているようで天気予報よりは少々良いのかなといった感じがしました。その後は翌日までのすべての連絡をお伝えしながらバスを進め、我々は観光バス利用のため途中の面倒な乗り換えや荷物の積み替えなしで進み、途中、大正池を眺めながら新緑の森を抜けて無事、上高地バスターミナルに到着。到着後は荷物を持って一旦、今回宿泊する宿に向かいました。河童橋は意外なほどに混雑はしておらず、雲がかかってはいたものの見事な穂高連峰を眺めることができました。宿に到着後は撮影機材の準備をしていただいてから探鳥に出発しました。幸い空は思ったよりも明るく雨の心配はないように感じました。歩き出すと早速、キセキレイのオスが愛想良く姿を見せてくれ、小梨平では高い場所でさえずっているオオルリも見ることができました。また周辺からはヒガラ、ウグイス、エゾムシクイの声が聞こえ、遠くからはコマドリのさえずりも聞こえていましたが、かなり森の奥からだったので、ここはひとまずスルーして過去にコマドリを撮影した場所をめぐっていくことにしました。さらに歩き、過去によくコマドリに出会っている場所まで来るとどうやら2個体のコマドリがさえずっているようでした。そのためひとまず時間をとって観察を続けていると、笹薮から飛び出した枯れ木にコマドリがひょいと止まってさえずり出しました。この個体はこれといって警戒する様子もなく、一旦笹薮に消えてはまたやってくるといった行動を繰り返してくれたため、その可愛らしい姿を一時間ほどじっくりと楽しむことができました。思いほのか時間が過ぎてしまったことから休憩を挟むことにしてさらに歩くと、ここからのルートは花々が美しく満開のシャクナゲ、岩場に咲くイワカガミ、そして群落を作るサンカヨウやニリンソウが見事でした。休憩中もコサメビタキやヒガラ、エナガなどが見られ、戻る途中ではオオアカゲラのオスが現れたかと思うと、続けてアカゲラが登場してしばらく撮影させてくれました。薄暗くなる中、遊歩道を歩いて行くと、人影がまばらになったせいかサルの姿がとにかく目立ち、サルに取り囲まれるようにしながら宿に戻りました。夕食は地元の食材をふんだんに使ったお料理をいただきみなさん大満足といった感じでした。
26日、この日は終日曇り予報ながら空は明るく一部に青空が見える中、04:30に出発して前日と同じルートを歩きました。河童橋付近では早くもコマドリ、そしてコルリ、オオルリがさえずっていました。前日にコマドリを撮影した場所をめざしましたが、早朝ということもあってか各所からコマドリのさえずりが聞こえていました。それだけに期待してポイントに行ったのですが、この日は残念ながら期待していたほどのさえずり合戦はなく、やや遠くからながら3個体のコマドリのさえずりが聞こえていました。しばらく観察しているとこの日も何回かソングポストと思われる木にコマドリが止まってくれたため撮影ができたほか、付近ではミソサザイがよくさえずっていて何回も撮影のチャンスがきていました。その後は宿に戻って朝食をいただき、再度出発しました。こちらのルートは木道が多く樹林帯や湿地帯、渓流など変化に富んだルートです。早速、樹林帯ではサメビタキのつがいと思われる2羽が飛び交い、ヒガラが間近にやってきてくれました。その後は同様にコマドリのさえずりは聞こえましたが距離が長いため、諦めてさらに進みました。湿地帯ではようやくオシドリのつがいに出会うことができ、付近ではマガモのつがい、そしてなぜかアオジが我々の足元を歩いていました。さらに進むとコルリとコマドリがほぼ同じ場所でさえずっていましたがここでも森が深くコマドリの姿を見ることができずでしたが、折り返し地点付近でようやく良い距離感でさえずっているコマドリを発見。この個体もほぼソングポストが決まっているようで苔むした倒木の上でさえずっていました。しばらく撮影したあとは一旦笹薮に入ってしまい、姿を見ることができなくなりましたが、ひとまず待ってみることにしました。すると笹薮の中からさえずりが聞こえ、小一時間も待っていると再び同じ倒木に乗ってさえずり始めました。この個体はさえずり出すと長時間歌っているので15分近く、ポジションを変えながら撮影することができ最後の最後でかなり楽しませてくれました。その後は一旦休憩してから戻りましたが、ここでも再びコマドリに出会い、少々撮影してから宿に戻りました。戻った後は宿前でお弁当をいただき荷物整理にとりかかりましたが、ここでとうとう雨が落ちてきてしまい、最後は傘を差しながらバスターミナルに向かいました。
まず今回は崩落事故の影響から乗鞍畳平にはいくことができず、急遽企画変更したにも関わらずご参加いただきましてありがとうございました。狙いをほぼコマドリだけに絞っての撮影ツアーでしたが、数カ所でコマドリを確認することができ、うち2カ所でじっくりコマドリの撮影ができたことは幸いでした。野鳥写真は被写体そのものの美しさも重要ですが、光線状態や背景の色合い、被写体までの距離感などさまざまな要素が重要です。今回はそのすべてが揃ってくれ良い撮影ができたように感じました。たくさん歩いていただきお疲れかとは思いますが、こうした経験がご自身の作品をより印象的なものにしてくれるはずです。コマドリに絞ったことからほかの鳥はあまりじっくり見ることはできませんでしたが、オオルリやキビタキ、コサメビタキ、サメビタキ、ミソサザイ、アカゲラ、オオアカゲラ、アオジ、オシドリなどを楽しむことができ、サンカヨウやツバメオモト、イワカガミ、ニリンソウといった花々も見事な上高地でした。この度はご参加いただきましてありがとうございました。
石田光史