【ツアー報告】フォトツアー シマエナガとタンチョウの塒 2023年1月27日~29日
(写真:タンチョウの塒 撮影:宅間保隆様)
ここ数年、圧倒的な需要増になった野鳥の撮影。これを主な目的としてシリーズ化しているのがフォトツアーです。通常のバードウォッチングツアーでは多くの探鳥地に出向き、数多くの野鳥たちに出会うことを主なコンセプトにしているケースが多いですが、野鳥を撮影するとなるとそれなりの時間を要し、また条件も選ばなくてはなりません。そのためフォトツアーでは目的とする種を絞り、厳選した探鳥地でなるべく時間をかける行程にしています。これはそこまで撮影に重点を置いていないが撮影もしたいし、それなりの時間、観察もしたいといった方にも良いため好評を得ています。今回は人気のシマエナガとタンチョウの撮影を主な目的とし、訪れる探鳥地が2か所で、しかもそれぞれの探鳥地が約1時間で移動できることから宿泊を連泊にし、2日目、3日目の行動を臨機応変にできるようにし、なるべく良い条件の日にタンチョウの塒での撮影が可能なようにしました。幸いにも出発前の天気予報は3日間共に良いとのことでした。
27日、この日の東京は雪の可能性があるとのことで天気予報は芳しくなく、今にも雨が落ちてきそうでした。ただご集合は順調に完了したことから、健康チェックシートの回収、資料の配布、この日の行動予定をお伝えしてから搭乗口に向かい、ほぼ予定通り羽田空港を出発して女満別空港に向いました。着陸直前には雪に覆われた北の大地が広がる様子を見ることができ、飛行機は無事に女満別空港に到着しました。見事に晴れわたった空を見ながらバスに移動し、この日は早速、今回お世話になる宿に向かいました。道は真っ白い雪に覆われていましたが天候は穏やかで、途中、美幌峠からは美しい屈斜路湖を眺めることができました。1時間ほどでこの日の宿泊地に到着し、その後は一旦お部屋に入っていただいて各自機材の準備をしていただいてから撮影を行いました。バスを降りた時点で主な目的のシマエナガの姿が見られ、事前にうかがっていた通り、この冬は比較的シマエナガは容易に撮影ができそうでした。この日は日没が16:30ということで、撮影は2時間ほどしかできませんでしたが、数多くのシジュウカラがやってきていて、ほかにもハシブトガラが頻繁にやってきていました。毎年、鳥の状況がやや変わるようで今回はシジュウカラが多い印象がありました。また雪景色に赤が映えるアカゲラ、そしてオオアカゲラもオス、メスが揃ってやってきてくれ、シロハラゴジュウカラも姿を見せてくれました。主役のシマエナガは登場頻度が極めて高く、10羽ほどの比較的大きな群れでやってきては賑やかに動き回り、さまざまなシーンを撮影することができました。穏やかな1日ながらもさすがに夕方にはかなり冷え込み、無風状態のわりには寒さを感じました。
28日、事前の天気予報ではこの日の条件が最もよかったため、ひとまずメイン撮影地の鶴居村に行く予定で準備していました。04:30出発を予定していたことから03:30に起床して温度計を見てみると外気温は-20℃ということでまずまずの条件。最低気温はだいたい日の出時間に出ることからさらに気温が下がることが予想され期待が高まりました。04:30に外に出ると天気も良く無風だったことから予定通り出発して鶴居村を目指しました。05:40に現地駐車場に到着すると意外なほど混雑はなく、なんなく1列目に陣取ることができました。混雑時には2列目だったり隙間から撮影するのですが、この日はまだまだ海外からのカメラマンが少なかったことが幸いしました。明るくなってくると早くも川周辺の木々に霧氷がつきはじめ、まるでデコレーションされているようでした。06:00過ぎに橋に立つとかなり奥ながらタンチョウの姿が見え始めました。ただ川霧が濃く立ち込めてくるとタンチョウの姿はシルエットになり、さらには06:40の日の出の頃には霧氷が朝日に照らし出されて橙色になりさらに幻想的な雰囲気になってきました。タンチョウたちは時間とともに活発に動き出し、声もかなり聞こえてきました。そしてタンチョウたちが塒から飛び立っていく姿を撮影してから移動することにしました。タンチョウのほかにもカワアイサが飛び、ヤマセミもやってきてくれ、帰り間際にはオジロワシが上空を通過して行きました。その後はここ数年、エゾフクロウが見られている場所に立ち寄りました。ツアーではエゾフクロウへの影響を考慮し、観察、撮影は10分程度とし、さっと済ませるようにしています。そしてこの日は幸いにも樹洞から顔を出している1羽を撮影することができました。撮影後は通常であればシマエナガ撮影に即、戻るところでしたが、この冬はシマエナガの出現状況が良く、翌日の半日あれば十分に撮影できるだろうとのことから、このまま鶴居村に残ってしばらくタンチョウの撮影をすることにしました。鶴居村サンクチュアリーに行くと50羽ほどのタンチョウが雪原に群れ、鳴き交わしや求愛ダンス、飛翔する様子をたっぷりと撮影してから宿に戻りました。戻った後もやや時間があったことから前日同様にシマエナガの撮影を行い、この日も頻繁にやってくるシマエナガの群れを撮影してこの日を終えました。
29日、この日は快晴ながらやや風が強い朝でした。鶴居村に行くことも可能でしたが最低気温や風の強さを考慮すると、昨日以上の好条件は期待できないだろうとのことから、この日はじっくりと時間をかけてシマエナガをはじめとした小鳥類の撮影をすることにしました。ちょうど日の出に合わせるように外に出て、この時間はここまでとはポジションを変え、太陽を正面にして逆光ぎみに立ち位置を決めて鳥たちの羽が透けるように撮影してみました。早朝からシジュウカラ、ハシブトガラ、シロハラゴジュウカラ、アカゲラ、オオアカゲラは頻繁にやってきてくれ、この日はコゲラも加わり、相変わらずシマエナガは大きな群れで何回もやってきては、地面に降りて餌を食べる個体もいました。またこの日は早朝からエゾリスもやってきて賑やかな雰囲気でした。やや風があったことから寒さが一段と厳しい1日でしたが、寒くなると室内に入ってコーヒーを飲みながら小鳥たちが見られるのも良い点で、この日は出発ギリギリの11:00まで撮影させていただき、11:30に荷物整理をしてから女満別空港に向かいました。
鶴居村の気温がかなり下がる時期に合わせて企画したフォトツアー。2日目の早朝は最低気温が-25℃まで下がり、また快晴無風という最高の条件に当たることができました。川霧が立ち、みるみる霧氷が付く中、朝日に照らしだされて橙色に輝くシーンは見事な光景でした。タンチョウたちも鳴き交わしや飛翔を見せてくれ、サンクチュアリーでは美しい飛翔や求愛ダンスも見せてくれました。もう一つのい主役であるシマエナガはこの冬は大当たりのようで頻繁に可愛らしい姿を見せてくれ、存分に撮影することができ、隠れた主役のエゾフクロウも撮影することができました。北海道は一年を通してさまざまな魅力的な鳥たちを観察、撮影するツアーを企画しております。また季節を変えてお出かけいただけましたら幸いです。この度はご参加いただきましてありがとうございました。
石田光史