【ツアー報告】出水・諌早・有明海 冬の九州縦断 2022年12月24日~26日
(写真:ソデグロヅル 撮影:ikotama様)
24日、九州地方は朝まで大雪警報が続いている。上空に非常に猛烈な寒気が入り降った雪が溶けない。昨日まで交通機関がかなり乱れていた。何とか集合場所の鹿児島空港に辿り着いたが、途中の桜島や周囲の霧島連山も白く冠雪していた。東京からの主力組も約45分のお遅れで到着し、全員が揃い九州縦断ツアー無事にスタートを切った。まずは水鳥が休息する場所に向かう。ここは東シナ海からの寒風が吹きつけ毎回非常に寒い。十数羽のクロツラヘラサギがずらりと並んでいる。程なくトモエガモとお客様の声、周囲の葦原に十羽ほどが静かに羽を休めている。タシギやバンもいる。反対の海上には数羽のカツオドリが悠然と飛んでいる。ここでの密かな目標がツリスガラだ。関東では近年殆ど見られなくなったようだ。まず声が聞こえてきた。居るのは間違いない。直ぐに風に揺れる葦原につかまりながら餌を啄んでいる数羽のツリスガラを発見。やや距離もありじっくりと見た感じにはなれなかったが、とにかく確認できた。今回、出水までの快適な山間道路が雪のため通行止めになり遠回りを余儀なくされたため、一旦海側に出て左手に東シナ海を眺めながら国道3号線を北上していく。沖合には甑島が霞んで見えている。空には雪雲が広がっていて暗い。夕方16:30に出水到着。いつもと違いツルがまだ広大な水田地帯に散らばっている。西干拓にある鶴センターへ向かう。今回出水の目玉であるソデグロヅルが東干拓にいるとのことで、先ずはそれを押さえようと急ぐ。いつもは直ぐに発見できるが、なかなか見つからず気持ちが焦る。ほどなく頸を下げたまま一心不乱に採餌しているソデグロヅルを見つける。その後、クロヅル幼鳥、カナダヅルも観察し第1日目を終了した。
25日、ホテルレストランの朝食は早い!6時開店、もう一組台湾からのチームもいて超満員。バタバタと食事を摂り出水に向かう。今朝は餌巻きとのタイミングが合い、小屋のブラインド前にナベヅル、マナヅルの大群が集まり、上空もけたたましい声をあげながら群舞している。毎回の事ながらこの光景には圧倒される。お目当てのソデグロヅルは一番奥で羽繕い中。カナダヅル、程なくクロヅルの幼鳥、成鳥も確認できた。暫くすると全員の目前をソデグロヅルがゆったりと優雅に飛翔し、最接近遭遇、西方へ飛び去った。この個体は朝に翔び立つと日中はどこか観察センター以外の田んぼで過ごすと後で聞いた。朝見ておいて良かった!ツルの群れ手前にはツクシガモ、タゲリ、ミヤマガラス、コクマルガラス、タヒバリ、岸壁にはオオタカ成鳥等がいて目を楽しませてくれた。その後カナダヅルを見てからミヤマガラスに混じる白黒コクマルガラスを観察。観察センターではホシムクドリの小群を見て出水の締め括りとした。この時点で本日乗船予定だった熊本ー島原航路便の船長がコロナに罹り欠航となったことが発覚。急遽、一便早めて乗船することになり熊本港に急いだ。熊本港へは予定通り到着、バスの中で昼食を取り乗船した。熊本港出航直後、遠目に右手干拓地のオオハクチョウなどを眺めているとお客様からカツオドリ!と一声があがる。見ると沖に向かって細長く延びる堤防上に数百羽(画像で数えると700羽以上)のカツオドリが羽を休めていた。ともすればどうせカワウの群れだろうと危うく見逃すところだった。結果的に今回カツオドリはここに集結していたようだ。沖合で観察出来た数はやや少なめだった。島原港へ到着後はバスは快調にとばし15:00過ぎには諫早中央干拓地に到着した。風は強くまだ冷たいが時々晴れ間が見える程度までになった。堤防上をゆっくりと歩きながら広大な葦原上を飛ぶハイイロチュウヒやコチョウゲンボウ等の猛禽類を見ていく。強風のため小鳥類をゆっくり眺める余裕は無い。今回は数羽のハイイロチュウヒ雌が頻繁に飛翔している。雄成鳥は見られなかったが、1羽だけ中央尾羽が灰色の雄幼鳥個体を観察できた。一方、チュウヒが全く見られないのが不思議だった。地元バーダーによると今シーズン、中央干拓東側の森山干拓との間の葦原に数万羽のトモエガモが居て、チュウヒはそちらに引っ張られているとのことだった。ここでタイムアップ。諫早干拓を後にしようとした時、山手側上空に墨を流したようにウンカの様な黒い大群が畝りながら移動していた。話に聞いていた数万羽のトモエガモだ。全員暫く唖然とする。ハイイロチュウヒ雌、トモエガモ大群、そして何故か狐と狸が印象に残った二日目となった。
26日、いよいよ九州縦断ツアーも最終日。今朝は07:00朝食、08:00出発と幾分余裕がある。天候も次第に回復し朝から晴天。シギ・チドリの一大生息地である干潟へ向かう。途中、ツリスガラを狙うも不発。先を急ぐ。今日の干潟は満潮時間、潮位ともに観察に適した条件。トイレ休憩後、園内周囲の林を通って干潟に出た。広大に広がる褐色の干潟上に白く無数の点となって鳥が散らばっている。干潟の柵に沿ってコンクリートの道を歩き始める。ハマシギ、ダイゼン、ダイシャクシギ、ズグロカモメ、ツクシガモ、クロツラヘラサギ等冬を代表する鳥達だ。アカアシシギも相当数が越冬している。他にもコアオアシシギ、トウネン、メダイチドリなど。潮が次第に満ちて来る。それに合わせ、こちらも移動していく。途中シギ・チドリを狙って2羽のハヤブサが襲ってくると一斉に干潟のシギ・チドリが飛び立ち群飛する。大群が方向を変える度、大きな羽音とともに白黒と変化する様は圧巻だ。その後、干潟上で休む2羽のソリハシセイタカシギを見つける。11:00を過ぎもう直ぐ満潮時刻だが柵の所まで潮が寄って来ない。今日はこの辺が最終段階のようだ。その後バスに戻り昼食。佐賀を代表する野鳥カササギが1羽やって来て今回の九州縦断ツアーを締め括ってくれた。
今回の冬の九州縦断ツアーは、事前に心配された猛烈な寒波も抜け次第に晴天に恵まれ、九州三大探鳥地を十分に味わっていただけたことと思います。トピックとしては出水のソデグログル、島原航路のカツオドリ、諫早のハイイロチュウヒ、そして東与賀のツクシガモ、ズグロカモメ、アボセットなど印象に残るツアーになったのではないかと思います。ご参加の皆さま、大変お疲れさまでした。そしてまたのご参加をお待ちしております。
波多野邦彦