【ツアー報告】晩秋の十勝平野 ハクガンの群れとナキウサギ 2022年10月28日~30日
(写真:ハクガン 撮影:竹村章様)
ここ数年でとうとう渡来数が1000羽を超えるまでに増えたハクガン。今回はハクガンたちの秋の渡りの中継地である十勝平野を訪れるとともに可愛らしいナキウサギとの出会い、さらには北海道らしい小鳥類との出会いも楽しみな晩秋の北海道をめぐるツアーです。なるべくムダな移動時間をなくしてコンパクトなツアーにするため往復共に帯広空港を利用し、宿泊も温泉宿を利用してゆっくりお休みいただけるとともに、連泊にすることによって2日目、3日目の行動予定をハクガン、ナキウサギの出現状況に応じて行動できるようにしました。これによりハクガン、ナキウサギとの出会いの確率をより高くできるようにし、さらには観察、撮影時間も確保しています。またガン類は警戒心が強いため、バス車内からの観察、撮影も考慮して参加人数を減らし、バス席をお一人様2席利用にして観察機材置き場も確保しました。渡りの中継地での観察であることから、ハクガンたちが渡ってくるタイミングを計ることが重要になるわけですが、今年は昨年とは異なり、ハクガンの渡来時期がやや遅かったことからツアー時期がちょうどよいタイミングに当たってくれました。また、何かと天気が不安定な時期ではありますが、今回は幸いにも3日間共に大きな天気の崩れはないとの予報が出てくれました。
28日、この日の東京の天気予報は秋晴れとのことでしたが、意外にも早朝の東京都内は曇り空でした。羽田空港に予定通りご集合していただいた後は検温データの回収、資料配布、連絡事項をお伝えしてから搭乗し、とかち帯広空港に向かいました。着陸直前に外を見るとこれぞ北海道といった感じの広大な田園風景に黄金色のカラマツの紅葉が見事に映えていました。ひとまず空港内で観察機材の準備をしていただいてからバスにて出発し、まだまだ到着したばかりだというのにすでに傾きつつある太陽にせかされるようにハクガンの群れを探しに向かいました。とはいえとにかく広大な十勝平野の中のいったいどの区画にハクガンの群れが降りているのかは誰にもわかりません。ありがたいことに直前に現地へ出向いてハクガンの群れを探している方から情報はいただいているものの、いつも同じ場所にいるわけでもないため、とにかく過去の観察データと自分のカンだけが頼りです。この日は時間があまりないことから毎回ガン類の群れがよく見られている区画の一番北側から南に向かって走ってみることにしました。途中、途中では隠れた主役であるタンチョウの姿が目立ちはじめ、遠くにはガン類と思われる群れの飛翔は見られたものの、ハクガンの群れは見当たらず。そのためさらに南に向かって走りながら探してみることにしました。するといよいよヒシクイの姿が点々と見られるようになり、とある場所ではかなりの数のオオハクチョウが見られました。そしてやや高い土手に上がった瞬間、1000羽は超えているであろうハクガンの群れが鮮やかな緑色の牧草地に降りているのが見えました。ひとまずゆっくりとバスで近づいて観察していると、群れはいくつかに分かれて飛び立ちはじめ、ひとまずその飛翔する姿を見ることができました。ただ飛んでいった場所がかなり遠くだったため、一旦この群れから離れて別の個体を探してみることにしました。少々走ると電柱に止まっているオジロワシがいたためバスを降りて観察することにしました。するとどこからともなく飛んできたハクガンの群れが我々の頭上を通過してくれたため、思わぬ良いシーンを間近に堪能する幸運に恵まれました。その後はたまたま間近に2羽のタンチョウがいたことからじっくり観察、撮影していると、地面に群れているマガンの群れを発見。よく見てみるとその中にたった1羽のハクガンの姿がありました。その後は夕日に照らされるように群れているかなりの数のヒシクイの群れを観察してから、再び先ほど見たハクガンの大群の様子を見に行ってみることにしました。するとたまたま道路脇の牧草地に移動してきていたことからバスを降りてじっくりと観察してみました。1000羽以上はいるであろうハクガンの群れは雪が積もったかのように真っ白く地上を染めていて、よく見てみるとその中に混じる2羽のアオハクガンの姿があり、どうやらうち1羽は幼鳥のようでした。さすがに周囲が薄暗くなってきた16:30に探鳥を終えてホテルに戻ることにしました。
29日、この日は日の出に合わせて06:00からホテル周辺で探鳥をしました。ただちょうど雨上がりといった感じで水たまりがあり、霧雨程度の雨が落ちてきていました。このツアーでは小鳥類を見る行程がほとんどないのですが、意外なことにこのホテル周辺が小鳥類観察にはとても良いのです。この日も早速、ツルウメモドキに集まるハシブトガラが賑やかに出迎えてくれ、その後はシロハラゴジュウカラ、ヤマガラ、アカゲラといった顔ぶれを楽しむことができました。林のほうまで歩くとエゾリスが現れて盛り上げてくれ、あまり見かけなくなってしまったミヤマカケスがツルウメモドキの実を食べていて、その後はシラカバに止まるなどして珍しくその姿をよく見せてくれました。小道を進むとこちらも北海道ではあまり見かけないミヤマホオジロが2羽で現れ、シラカバに止まってくれたためその姿を見ることができました。一旦、朝食に戻った後は再度出発し、この日はナキウサギ観察に向かいました。天気予報によれば雨は朝だけで次第に晴れてくるとのことだったので安心していましたが、なかなか雨はやんでくれず、途中、休憩に立ち寄った道の駅でも小雨が落ちてきていました。ただ天気予報を信じてさらに進むと雨はほとんど止んでいて到着したころにはもう雨は降らないだろうといった感じでした。ここで一旦トイレに寄っていただいてからナキウサギの観察ポイントに移動しました。到着するとすでにナキウサギが大きな岩の上でじっとしていて、いきなりその可愛らしい姿をじっくりと観察することができました。この個体は珍しくしばらく動くことなくじっとしていましたが、その後は空が見る見る青くなってくるのに合わせるかのように動き回り、盛んに苔を食べたり、葉っぱを咥えて巣穴に運ぶ様子を見せてくれ、独特の鋭い鳴き声も聞くことができました。ナキウサギを観察している間には、上空を通過していくツグミの群れが見られ、ハシブトガラやヒガラも頻繁に姿を見せてくれました。またシマエナガの群れが通過したり、キクイタダキが珍しく目の前の岩場に降りたり、針葉樹を登っていくキバシリが見られたりとナキウサギ意外にも成果を挙げることができ、やや時間オーバーしたものの午後には観察を終了して一旦昼食の時間としました。やや時間が押してしまいましたがナキウサギが十分に見られたことからその後は公園に向かいました。到着時には早くも陽が傾いてきていましたが、見事な紅葉が鮮やかな園内を歩いてみました。早速、アカゲラがやってきて枯れ木に止まってしばらく楽しませてくれ、ここでも愛想の良いエゾリスが走りまわっていました。時間がなかったことからその後は池まで行ってみると、マガモ、コガモ、カルガモに混じってカワアイサ、そしてここでは初めて見たオシドリの姿をじっくりと観察することができ、ここでもハシブトガラやヒガラの姿を見て日没に合わせるように観察を終了しました。
30日、この日も同様に日の出に合わせて06:00からホテル周辺を歩きました。天気予報は晴れマーク一色でしたが、早朝は濃霧が出ていてかなり寒く感じ、遠くからはタンチョウの声が聞こえてきていました。前日と同じルートを歩くと、同様にハシブトガラ、シジュウカラ、ヤマガラ、アカゲラといった顔ぶれが出迎えてくれ、カラ類が警戒声を発したため上空を見ると、ハイタカが通過して行きました。その後は林のほうまで歩きましたが、この日は天候が良いわりには鳥の気配は薄く、針葉樹で動き回るキクイタダキ、そしてこの日は追いかけっこをするように走り回る2頭のエゾリスの姿を見て探鳥を終え、その後は一旦朝食の時間とし、朝食後は再びハクガンの姿を求めて出発しました。ただこの日はまず十勝川に立ち寄り、ここでは川面に群れるカワアイサ、マガモ、キンクロハジロ、そして群れで飛翔するホオジロガモなどを見てから移動しました。この日も広大な干拓地の北側から南側に向けて移動し、まずは道の駅で休憩をとってから、一昨日ハクガンの群れを観察した場所の付近を探してみることにしました。この日は幸いにも道から近い場所にヒシクイの姿があり、よく見るとその中にシジュウカラガン、ハクガンの姿もあったことから一旦、バスを止めて車内から観察、撮影することにしました。ガンたちはこれといって警戒することなく地上採食をしていて、ほとんどがヒシクイでしたが幼鳥を11羽も連れたハクガンのつがいも間近に見ることができ、時間が経つにつれてどんどんシジュウカラガンが飛んできてくれたことからシジュウカラガンも見ることができました。その後はハクガンの大群を探してみましたが、この日は残念ながら道から近い場所には降りておらず、そのため小道を歩いて大群が見られる場所まで歩いてみることにしました。この日も緑が鮮やかな牧草地に降りていたため緑の中にいる真っ白い塊は鮮やかに見え、しばらく見ていると大群が一斉に飛び立ちました。大群はハクガンとシジュウカラガンに分かれて上空を右往左往し、よく見ると1羽のオジロワシが大群を追いかけていました。この圧倒されるような群れは、その動きはもちろん、ハクガンたちの声も迫力があり、思わず立ち尽くして眺めるしかありませんでした。ただ、この日は道から近い場所に大群が降りることはなく、最後はタンチョウを間近に観察してツアーを締めくくりました。
今回の秋の十勝平野は2日目の午前中に小雨があったものの、ほぼ秋晴れの中で終えることができました。この時期の十勝平野はパッチワークのような広大な田畑が見事な風景で、それを取り囲むように映えるカラマツの紅葉も見事でした。今年はタイミングが合ったようでおそらくは最大数のハクガンの大群に出会うことができ、初日にはアオハクガンに出会え、最終日には間近にハクガンの親子、そして大群で乱舞する様子も見ることができました。また当地では個体数が多いヒシクイやシジュウカラガン、そしてタンチョウ、オジロワシも見ることができました。またお天気が悪いとなかなか見られないナキウサギもちょうど天候が回復してくれたせいかたっぷりと見ることができました。ほかにも愛嬌あるエゾリスを各所で見ることができ、ハシブトガラ、シロハラゴジュウカラ、シマエナガ、ミヤマカケスといった北海道らしい小鳥類をはじめ、アカゲラ、キバシリ、キクイタダキ、ミヤマホオジロなども楽しませてくれました。北海道はとても魅力的な探鳥地のため、季節ごとにさまざまなツアーを企画しております。ぜひまた北海道にお出かけください。この度はご参加いただきましてありがとうございました。
石田光史