【ツアー報告】タカ渡る白樺峠とライチョウが棲む畳平 2022年9月17日~19日

(写真:ハチクマ 撮影:大木邦夫様)

8月初旬で一旦、夏休み状態になっていた国内バードウォッチングツアーですが、いよいよ秋恒例のタカの渡りから再スタートとなります。秋にしか大規模なタカの渡りは観察できないことから日本各地でツアー企画していますが、いずれも観察可能な期間が短く、しかも天候の影響を大きく受けるためリスクがあるのがデメリットではありますが、タイミングが合えば信じられないような光景を見ることができます。今回訪れる白樺峠は個体差が激しいハチクマのさまざまな個体が見られることが最大の特長で、サシバのタカ柱が見られる可能性が高く、観察地が山間部の峠であることから、運が良ければイヌワシ、クマタカといった大型猛禽類に出会える可能性があることも魅力です。またわずかな距離にある乗鞍高原や畳平でも魅力的な野鳥が見られることから「タカ渡り」「乗鞍高原の渡り中の小鳥」「畳平の高山鳥」をセットにしました。また宿泊に関してはコロナの関係から需要が高まっているシングル部屋を利用できるよう松本駅前のホテルを利用しています。タカの渡りは天候に大きく左右されるため事前の天気予報のチェックが欠かせませんが、今回は台風12号、13号、14号が連続して発生してしまいました。12号、13号に関してはツアーに直接的な影響はなかったものの、台風14号がちょうど接近してくるタイミングに当たってしまいました。

17日、数日前に発生した台風14号はまだまだ沖縄本島よりもさらに南の海上にありましたが、進路予想では19日がかなり怪しい感じでした。ただ、この3日間の天気予報で晴れが出ているのが今日だけで、松本駅から乗鞍高原方向を見ると確かに青空が見えていたことから、この日は予定を変更して白樺峠に向かうことにしました。途中、どちらかというと曇りがちになってきてしまいましたが、ひとまず乗鞍高原まで進みました。路面を見るとかなり濡れていたことから直前まで雨が降っていたようですがすでに上がっていたことからさらに進み、スーパー林道をぐいぐいと登って白樺峠駐車場まで来ると意外なほどに車がたくさん来ていて驚きました。ここからは各自、必要なものをもっていただきタカ見の広場に続く山道を歩きました。到着後はトラベルイヤホンを各自セットしていただき、あとはお好きな場所で観察していただきました。曇り空ながらも一部に青空が見える中、早くも13:10にはサシバが飛び、旋回飛翔しながら接近して最後は我々の頭上を飛んでくれました。13:20には白樺林の後ろから飛んできたハチクマがカラマツに止まりましたが、あまりの人の数に驚いてすぐに飛び立ちました。一瞬でしたが顔が青白く見えたことからオスの成鳥でしょう。13:25には2羽のツミがどんどん接近して頭上を旋回して渡っていきました。この頃には小雨がぱらつきましたが問題なく観察を続けると、さきほど見られたハチクマの成鳥オスが目の前を横切るように飛び、続けて同じようなコースを今度はハチクマの幼鳥が横切りました。13:30には正面の谷から沸き上がったハチクマの成鳥オスが通過し、13:35には今度はハチクマの成鳥メスが飛びました。この日は天候が今一つだったからかどれも低く飛んでくれたことから特徴が良くわかりました。その後はやや霧が出てきましたが13:40には眼下のカラマツ林をハチクマが何羽か飛び、13:45には沸き上がってきたハチクマの成鳥オスが通過していきました。14:00には近くのカラマツにサメビタキがやってきて飛び回り、霧が晴れたからかツバメ、イワツバメが飛び回りはじめ、14:05には後方から飛んできた1羽のハリオアマツバメがしばらくの間、我々の間近をスイスイと飛び回り印象的でした。14:20には遠くの木に止まるハチクマ成鳥オスを見ることができ、この日は早くも渡りをあきらめたのかハチクマ幼鳥も別の木に止まっていて蝋膜の黄色が良くわかりました。さらにはハチクマ成鳥メスが止まっていたことから黄色い虹彩がわかり、最後はさらに遠くに止まったハチクマ成鳥オスの青白い顔を見ることもできました。15:00には周囲のカラマツに35羽ほどのエゾビタキがやってきてフライングキャッチを繰り返し、15:15にはノスリの見事な飛翔を見て16:10には観察を終了して16:30に白樺峠駐車場を出発してホテルに向かいました。

18日、この日も天気予報は各社バラバラでなかなか読みが難しい中、とりあえず朝の松本駅前は薄曇りといった感じでした。最終日がどうなるかがわからない状況だったことから、この日は畳平に向かう予定でとりあえず朝食後に出発しました。バスが進むにつれて残念ながら雲は厚くなってきてとうとう雨が降り出してきてしまいました。ただ乗鞍高原まで来ると雨は降っておらず、麓から畳平を見るとガッツリと霧が出ていて視界不良だったことから予定通り畳平に向かうことにしました。ライチョウは晴天時に見ることが難しいことから幸いと思って進みましたが、なんと途中からはどんどん雲が晴れて青空が見えてきてしまいました。ただ、さすがに引き返すわけにもいかずひとまず畳平駐車場に到着しました。到着後は各自準備をしていただき、少々風が吹く中を歩きだしましたが、いきなりハチクマが風に流されるように飛んできて上空を通過していきました。この時期はホシガラスが貯食行動をしている時期で見やすいのですが、早速、複数のホシガラスが間近を飛び回りハイマツの球果を集めていました。登り始めると1羽のイワヒバリがガレ場を歩いて餌を探し、さらに登ると今度は2羽のイワヒバリが間近を歩きながら餌を探していました。風がやや吹いてはいたものの空は見る見る青空に変わってきていて残念ながらライチョウを見るにはあまり良いコンディションではなかったのですが、さらに進んだ遊歩道を脇の大きな岩の後ろからライチョウが顔を出しました。よく見ると付近にはもう1羽、さらにもう1羽が姿を現し、結果的には3羽のライチョウの小群に出会うことができ、その姿を間近に見ることができました。戻る途中には間近にカヤクグリを見ることができ、さらにはホシガラスが手が届くような距離にある枯れ木でせっせと球果を砕く様子をじっくり見ることができました。その後は天気が良かったことから再び白樺峠に向かいました。ただ、乗鞍高原まで戻ると天気はそれほど良くはなく白樺峠の駐車場に到着する直前からは激しい雨が降り出してきてしまいました。そのため一旦、昼食の時間として様子を見ましたが、天候の回復が見込めず時間も過ぎてしまったことから、この日の最後は乗鞍高原にて小鳥類を見ることにしました。乗鞍高原まで戻ると再び一部に青空が出る状況になり、まずは川でキセキレイ、そしてカワガラスを見てから歩きだしました。カラマツ林ではカケスが騒いでいて、林の中ではシジュウカラがヒナを連れて飛びまわっていました。スキー場の広場では珍しくアオバトがかなりの数見られ針葉樹に止まった姿を見ることができました。その後は別の場所も歩いてみましたが、コガラ、ヒガラ、エナガ、ヤマガラ、コゲラといったカラ類の混群が見られましたがヒタキ類には出会えず、最後は紅葉した高原の草に止まるモズを見てこの日の探鳥を終了しました。ただ台風はちょうど九州北部にあるとのことで予報よりもかなり進みが遅く、これが判断をより難しくしていました。

19日、台風の進行は予報よりもかなり遅く、この日の朝の段階でもまだまだ九州付近にあったためか、この日の長野県の天気予報はそれほど悪くはなくホテル前も薄曇りといった感じで蒸し暑く感じました。ただ、台風が接近していることは間違いないため全員が無事に帰宅できるよう、前日には対応を協議して皆様にお伝えし、この日は残られたお客様のみで出発し午前中のみの探鳥としましました。それほど時間がないことから乗鞍高原に直行して前日と同じルートを歩いてみました。川ではこの日もカワガラスが潜水して餌を探し、マガモが上流から飛んできました。その後はまたまたカケスの声を聞きながら歩くと枯れ木にアオゲラがやってきて「ピョー、ピョー」鳴いていたかと思うと、どこからともなくカケスが飛んできて小競り合いをしていました。さらに歩くとようやくヒタキ類の群れに当たり、まずはサメビタキとオオルリのオス、その後はエゾビタキ、オオルリが複数羽飛んできては針葉樹に止まって姿を見せてくれ、そこにビンズイもやってきて賑やかな状況になり、気が付くと付近にはかなりの数のカケスが飛び回り、コガラ、ヒガラ、エナガ、アカゲラなどもやってきて、まるで嵐がやってきたような賑やかな状況になりました。さらに歩くとここ数年、信州では夏鳥として繁殖しているジョウビタキがウドの実を食べていて、最後は屋根に止まってじっくりと姿を見せてくれました。時間も過ぎたことから最後は乗鞍高原にあるビジターセンターに立ち寄ってから各自荷物整理をしてから松本駅に向かいました。幸いにもこの日も雨に降られることなく終えることができました。

さて、今年の白樺峠ツアーは台風14号の接近があり、また進行するスピードがなかなか読めず難しい運行になってしまいました。結果的には台風の影響を感じることはありませんでしたが、皆様に無事に帰宅していただくことを最優先し、最終日は半日で終えさせていただきました。タカの渡りに関してはこれぞ渡りといったシーンを見ることができず残念でしたが、晴れたからといって大規模な渡りが見られるという保証もないため何度かチャレンジしていただければと思います。ただ畳平ではライチョウ、ホシガラス、イワヒバリ、カヤクグリが見られ、秋に見やすいホシガラスは期待通りにさまざまなシーンを見せてくれました。乗鞍高原では最終日に残られた方だけではありましたが、エゾビタキやサメビタキ、オオルリ、ビンズイが飛び回り、カケス、アオバト、アカゲラ、アオゲラ、カワガラス、ジョウビタキにも出会うことができました。来年こそはという思いをもって今回の白樺峠ツアーを終えました。またぜひご参加いただければと思います。この度はご参加いただきましてありがとうございました。

石田光史

アオバト 撮影:亀田政弘様

 

ホシガラス 撮影:坂東俊輝様

 

ライチョウ 撮影:坪井昌弘様

 

ホシガラス 撮影:亀田政弘様

 

イワヒバリ 撮影:坂東俊輝様

 

モズ 撮影:亀田政弘様

 

ハチクマ 撮影:大木邦夫様

 

イワヒバリ 撮影:亀田政弘様

 

エゾビタキ 撮影:坂東俊輝様

 

ハチクマ 撮影:亀田政弘様

 

カワガラス 撮影:坂東俊輝様

 

ハチクマ 撮影:亀田政弘様

 

ライチョウ 撮影:坂東俊輝様

 

ライチョウ 撮影:亀田政弘様

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