【ツアー報告】シャチとヒグマが棲む世界遺産・知床 トリプルクルーズ 2022年6月4日~6日
(写真:ヒグマ 撮影:系正義様)
平成17年7月に世界自然遺産に登録された知床。ここには魅力的な生き物たちが数多く生息しています。今回はカムイと称されるさまざまな生き物たちにスポットを当て、特にシャチとヒグマを観察するためのクルーズに計3回乗船する行程を軸に、タンチョウやシマフクロウ、オジロワシ、ギンザンマシコといった鳥類、エゾシカやキタキツネといった哺乳類も含めて知床に生息するさまざまな生き物たちを観察することを目的としました。ただ、観光船クルーズをツアーに組み込むことは当然のことながら海況の影響を大きく受けることになりリスキーです。今回はたまたま低気圧接近に伴い、知床には厄介な北風の予報が出る中での出発となってしまいました。
4日、数日前から初日の午後に乗船する予定の観光船のスタッフの方とやりとりをしていましたが、やはり土曜日は海況が悪いとのことで翌日の日曜日の午後便の空き状況も確認し、ひとまず変更も可能とのことで当日を迎えました。ただ早朝には早くも観光船のスタッフの方から連絡があり、土曜日は欠航とのことでした。ひとまず集合場所の羽田空港に向かい、予定通りご集合が完了したことから今日の観光船の欠航、そして変更した予定の内容をお伝えして搭乗口に向かいました。到着した中標津空港はどんよりとした曇り空から霧雨が降る状況。ひとまず観察機材の準備をしてからバスに乗っていただき、この日はすでに観光船の欠航が決まってしまっていることから、翌日の午後の予定と交換する形で進めました。ポイントを進むにつれ風が強まり、肌寒さが一気に増してきました。途中、エゾシカの群れが間近にいたことからバス車内から観察することができ、強風の中、2羽のオオジシギが飛んでいました。途中、バスを降りると干潟に群れているオナガガモ、ヒドリガモの姿があり、キョウジョシギの群れが飛んできて間近に降り立ちました。さらに進むとより強まった風にあおられるようにいくつものオジロワシが飛び、最後は干潟に群れているヨシガモの群れ、飛び回るヒドリガモの群れを見てから宿に向かいました。この日の夜はシマフクロウ観察のため到着後は準備を進め19:00頃からは夕食の時間としました。その後は早くもシマフクロウがやってきて対岸の枯れ木に止まり、わずかな時間で餌場にやってきてくれました。この日は暗闇から頻繁にシマフクロウの重低音の声が響き渡る時間が続き、同時に2羽が見られるなど、予想上にじっくりとシマフクロウが見られたことから早々にこの日の探鳥を終えました。
5日、この日は午前中にヒグマを観察するクルーズに乗船する予定でしたが朝食前に欠航の連絡がきたことから、ひとまず翌日の早朝便を臨時で出せないかという相談をしてから朝食をいただき、当日の欠航をお客様に連絡した上で、この日の午前中はタンチョウの親子を探すことにしました。外は雨上がりのようで地面は濡れていましたが、空には少々明るい部分があり青空も見え始めていました。到着すると草原内にタンチョウのつがいの姿があり、道からの距離が近かったことからまずはバス車内から観察をしてみました。しばらく観察しているとタンチョウの足元には小さな2羽のヒナの姿があり、そのヒナたちに餌を与える様子なども観察することができ、その後はお隣にある漁港に向かいました。ここでは砂浜に降りている複数のオジロワシが見られたほか、砂浜にはウミネコ、オオセグロカモメ、そして1羽のキョウジョシギが見られたほか、越夏個体なのかワシカモメの姿もありました。探鳥後は再び羅臼町まで戻り、昼食の時間をとった後は峠に移動しました。残念ながら霧雨と風といった状況だったためバスを降りてはみましたが観察とはいかず、そのまま知床五湖方面に向かいました。知床五湖の駐車場に向かう途中にはキタキツネの姿が見られ、到着後は霧雨が降り続く中ではありましたが高架木道を歩きました。残念ながら霧のため美しい知床連山を見ることはできませんでしたが、霧の中からはツツドリの声が響き、よく見るとエゾシカの姿もありました。湖畔までくるとアオジのさえずりが聞こえ、ノビタキのオスが動き回っていました。そして戻る途中ではオオジシギのディスプレイフライトが見られました。その後は来た道を戻って峠に向かい、駐車場ではアマツバメが飛び回っていましたが、霧が深くなかなか観察ができる状況ではありませんでした。そしてこの日の夕食後にはこのツアーで毎回大好評を得ている「羅臼昆布のヒレ刈り体験」を行い、実際に昆布漁をされている漁師さんから羅臼昆布の知識を得る講座を実施していただき、最後は全員で実際に昆布のヒレ刈りを体験して、それをそのままお土産として持ち帰っていただきました。
6日、この日は前日に欠航になったヒグマ観察クルーズが時間を短縮した形で出航可能とのことでひとまず早朝に宿を出発して現地に向かいました。到着後はライフジャケットの装着、服装の準備をしてから2隻運行で出航しました。波はややありましたが風はほとんどなく、ひとまず知床岬方向に陸地に沿うように航行していきました。出航して間もなくのところでいきなり斜面に2頭のヒグマの姿を発見。やや警戒している様子はあったものの船をゆっくりと陸地に寄せて観察しました。ちょうどこのころからは太陽が雲の隙間から顔を出してきたことから断崖絶壁に緑色の樹木が輝いて見え、そこに佇むヒグマの姿はまさに知床の大自然が凝縮されていました。その後もさらに知床岬方面に進み、単独で行動しているヒグマのほか、子熊2頭を連れている親子のヒグマの姿も見ることができました。するとちょうどこの辺りで午前中のシャチクルーズが欠航になったとの連絡がありました。そのためややゆっくりと進みながらさらにヒグマの姿を探すことにし、帰りもさらに単独行動のヒグマの姿を見ることができ2時間ほどのクルーズを無事に終えることができました。その後は一旦、羅臼町まで戻って昨日、霧がかかっていた峠が快晴のようなので行ってみることにしました。この日の峠は見事な青空が広がっていて探鳥日和といった感じでした。そのためギンザンマシコの出現を待ってはみましたが残念ながら気配はなく。変わって鳴いているカッコウ、飛び回っているアマツバメを見ることができ、時間が経ってしまったことから一旦、羅臼町まで戻って道の駅に立ち寄った後は原生花園に向かいました。それほど時間はなかったですが堤防に止まっているオジロワシの成鳥をじっくりと見ることができたほか、原生花園ではノビタキ、オオジュリンのつがいも見ることができ、ややあわただしくなってしまった最終日の探鳥を終えて中標津空港に向かいました。
久しぶりに訪れることができた初夏の知床羅臼。このツアーを企画するにあたって皆様に一番見ていただきたかったシャチの雄姿を見ていただけなかったことはとにかく残念でした。ただ、時間変更に変更を重ねながらもなんとか知床半島の大自然の中に生きるヒグマの姿を見ることができました。また夜には闇夜から響き渡るシマフクロウの声を堪能しながらその姿もじっくりと見ることができ、オジロワシやタンチョウの親子、またエゾシカやキタキツネといったさまざまな動物達との出会いもありました。知床羅臼は生き物好きにとってはとにかく素晴らしいところです。海生哺乳類の季節が終わると、あっという間に流氷の季節になります。またぜひ季節を変えて知床羅臼にお出かけください。この度はご参加いただきましてありがとうございました。またご一緒できましたら幸いです。
石田光史